ビジネスにおけるシミュレーションの活用
説明会の後半では、ダッソー・システムズの石川氏より実際のビジネスの現場における「SIMULIA」活用例が紹介された。
新しい技術への対応
石川氏が紹介した活用例の1つは、新しい技術を適用した産業開発についてである。石川氏によれば「5Gやコネクテッドカーなど、新しい技術は経験ベースでの開発というのはなかなか出来ない。従来の方法で対処すれば開発の後期や製品をリリースするタイミングになって問題が生じ、開発の延期や性能の妥協、最悪の場合は保証の問題が起きる」など、機会損失の恐れがあるという。
その上で石川氏は「シミュレーションを使うことによって経験だけの開発だけではなく、課題を事前に検討することが非常に重要になる」と述べた。

その具体的な例として挙げられたのが、空飛ぶ電動タクシーである。石川氏は「空飛ぶタクシーは現在、様々なところで開発が進んでいる。一方、全く新しいデザインになり、空を飛ぶものなので簡単に試験運転が出来ない。近距離を飛ぶので電動化の話が進んでいるが、電動化になるとバッテリーの問題が生じ、都市部を飛ぶことを想定しているので騒音の影響がクリティカルになってくる」とまずは問題点を指摘する。
その上で「こういった問題にシミュレーションを使うと、街中に飛んだ状態でビルや地上に騒音の影響があるのか、ということを検討することができる」と、「SIMULIA」の活用を説明した。
続いて石川氏は5Gなどのコネクティビティの分野での活用について言及。5Gが普及することで想定される問題を「高速・大容量で多接続になると様々な問題が発生し、機材も複雑になってくる。その複雑な機器のなかにどうモノを組み込んでいくか、という構造的な問題が発生し、大電流ということで熱の発生も増える」とまとめる。
これについては「マルチアンテナなどをいかに小型化し、かつ効率的に冷却についても検討するには、シミュレーションを使って生み出すのが効果的になる」と語った。
さらに5Gからwi-fi、Bluetoothなど様々な通信技術で構成された家電製品の製造にも「SIMULIA」のシミュレーションが活用できることを石川氏は述べた。
石川氏によれば「コネクティビティを持った家電製品は複雑な形になっていて、構造的な問題が重要になってくるが、そこにソフトウェアの1つである「Tosca」を使って形状を最適化する」など、「SIMULIA」内のツールを使って課題解決が出来るという。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。