2019年9月20日、ダッソー・システムズは熱流体や電磁界などの現象をコンピューター上でシミュレーションするソリューション「SIMULIA」についての最新動向について記者向け説明会を開いた。会見ではダッソー・システムズ・SIMULIA事業部長の石川和仁氏(トップ画像)が登壇し、「SIMULIA」の基本方針と、ビジネスにおけるシミュレーション活用例に関する説明を行った。
「SIMULIA」の基本方針
ダッソー・システムズの石川氏は、まずは基本的なSIMULIAの方針について述べた。
あらゆる物理現象をデジタルで再現する
石川市によれば「SIMULIA」の基本方針は「世界のあらゆる物理現象をコンピューター上で再現し、設計開発に役立てるとともに生活に貢献していく」ことだという。
「今までの「SIMULIA」の機能では機械構造的なシミュレーションが多かったが、新しいビジネスを開拓していくには新たな技術が必要になる」と石川氏は説明した上で、ソフトウェア買収を続けてきたことで「SIMULIA」が適用できる分野が増えてきたことを述べた。
その1つの例として挙がったのは、航空業界でのシミュレーションである。機体構造のシミュレーション、飛行中に物体が当たった時のシミュレーション、ランディングギアに関しての機構的なシミュレーション、空力抵抗のシミュレーション、機体が発する騒音のシミュレーション、タッチパネルから発する電磁波のシミュレーション、雷が飛行機に当たった時の機体への影響など、航空機1機の製造でも多くの現象をシミュレーションできることを石川氏は紹介した。
3つのキーファクター
続いて石川氏は「SIMULIA」の技術を適用する上で、以下のような三つの大きなキーファクターがあることを述べた。
(1)最先端のシミュレーションツール
(2)「3DEXPERIENCEプラットフォーム」による協調設計
(3)「Inustry Process Experience」の提供
(1)の最先端のシミュレーションツールについて、石川氏は「実際の適用分野に対して実用的に使えるか、というのが非常に重要」と述べた上で、特に重要視する3つの要素を提示する。
1つは高速であること。「例えば熱流体に「PowerFLOW」「XFlow」というソフトウェアでは先ほど航空機におけるシミュレーションのような複雑な計算・大規模な計算を高速に実行することができる」というように、「SIMULIA」の計算スピードが非常に早く、実際の問題に対応できることを石川氏は強調した。
2つ目は高精度。「例えば「Simpack」のソフトウェアは高周波のノイズの計算に定評がある」と石川氏は「SIMULIA」が精度の高さを評価されていることを述べた。
3つ目はロバスト性、つまり安定して計算結果が得られるという事。石川氏は「熱流体の解析には格子ボルツマン法の最先端のソフトウェアを使っており、大規模な計算、例えば航空機1機の熱気流計算を、しかも非定常状態で行うことができる」と例を挙げつつ、「SIMULIA」が最新のソフトウェアを導入することで、計算の収束性が良いことを解説した。
(2)のプラットフォームでの協調設計については「ダッソー・システムズ全体として従来のファイルベースではなく、プラットフォームで一元管理することによって設計に必要な時間を短縮し、設計者・解析者など、様々な人たちの間でのコラボレーションを実現していく」ことを石川氏は語った。
(3)の「Industry Process Experience」とは「実際の顧客が持つ課題、例えば自動車業界であれば電動化、コネクテッド、空力抵抗、という複数の課題について、ツールを組み合わせソリューションの提供を行っていることを指す」と石川氏は説明した。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。