これまで企業は「地球温暖化対策の推進に関する法律」や「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」に対応するため、事業単位の温室効果ガスの排出量可視化に取り組んできた。今後、欧州エコデザイン規制(ESPR)や炭素国境調整メカニズム(CBAM)が順次導入されることで、企業は製品ごとの排出量を定量的に算定することも求められる。
現在多くの製造業では、サプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量算定において、データ収集や算定に多大な人手と時間を要している。今後は、全製品に対象が拡大となることが予想されており、現状のステークホルダーからの要求に基づく都度算定からの脱却、さらに事業単位の排出量のエビデンスとなる算定の仕組みを構築することが必要不可欠となる。
株式会社日立製作所(以下、日立)は、ストレージをはじめとしたITプロダクツ設計・製造拠点である神奈川事業所における、カーボンニュートラルに向けた製品のライフサイクルアセスメント(LCA)の取り組みやノウハウを「EcoAssist-Pro/LCA」として社内外に展開することを発表した。
EcoAssist-Pro/LCAは、BOMをベースに調達する素材・部品の重量、自社の加工・組立・検査工程の電力量、製品の消費電力などの関連システムと連携し、製品単位でのCO2の排出量を実態に沿って算定することを可能としたシステムである。これまで日立は「EcoAssistシリーズ」として「EcoAssist-Enterprise」を製造、流通・小売、電力などの業種に提供し、事業単位での脱炭素を支援してきた。今回、製品単位の脱炭素を支援すべく、EcoAssist-Pro/LCAをEcoAssistシリーズのラインアップに加え、新たに外販化する。
神奈川事業所では、新製品や既出荷製品に関わらず、約950の販売形名を対象に、設計部品表(BOM:Bill of Materials)をベースに原料の調達から製造工程における燃料・電力の使用、製品の使用・廃棄に至るCO2の排出量を、製品単位で精緻に自動算定・可視化する実証を2023年1月から行っている。
同実証では、BOMから部品の材料や重量情報を取得し、Scope3の上流におけるサプライヤー側からのCO2排出量を算出する。Scope1、2においては、製品ごとに異なる製造プロセスや使用設備に基づき、電力量、燃料使用量の実測値から排出量を算出する。これに加えて、Scope3の下流の製品使用時の消費電力をデータベースから取得し、製品廃棄時の排出量も加算することで、Scope1~3の製品レベル全体でのCO2排出量算出の自動化、ダッシュボードによる見える化、さらに各種分析ができることを確認した。
これを受けて、EcoAssist-Pro/LCAの拡販活動を開始するとともに、要件定義、企業環境での実証実験を順次進め、2024年3月の提供開始をめざす。
日立は今後、神奈川事業所での実証を引き続き推進するとともに、さまざまな企業間取引を支えるクラウドサービス「TWX-21」とのEDI連携によりサプライヤーからの1次情報を取得するなど、さらなる算定精度の向上によるソリューションの機能強化を図る。また、製造業におけるレジリエンス強化やGX推進に向け、日立グループのLumadaソリューションのみならず社外のシステムやサービスとのネットワークもあわせて強化し、グローバルでの企業間データ連係を推進していく。
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