インタビュー後編は、同社が開発した協働型双腕ロボット「YuMi(ユーミィ)」について、引き続き、広報・渉外 戦略製品コミュニケーション マネージャーである村山 雅成 氏、ロボティクス&モーション事業本部 ロボティクス事業部 カスタマーサービス部 部長の酒田 豊 氏、に話を伺った。(聞き手:株式会社アールジーン IoTNEWS代表 小泉耕二)
・インタビュー前編: 第4次産業革命でキーとなるのはコントロールルーム ーABBインタビュー(前編)
-YuMi(ユーミィ)と、「ABB YuMi Cup 2017 協働ロボット活用アイデアコンテスト」について教えてください。
酒田: YuMiを少し触ってみてください。指などを挟みこまないようになっています。
-柔らかいですね。さすが協働ロボットですね。
村山: そうですね。基本的には人に危害を与えないように、モータの出力自体も抑えられています。ただ、そうした中でも、スピードとスムーズさ、精度というのを出しているというのが、ハードウェアとしての特徴です。
―センサーはついているのでしょうか。
酒田: センサーというか、モータのトルクを絶えず管理していて、トルクが急にかかった時にだけ止まるようになっています。
村山: 本質的な安全設計を施しており、安全柵は不要です。また、コントローラも内蔵したうえで重量が38キロと、非常に軽量です。100ボルトの電源で駆動し、非常にフレキシブルな運用ができるパッケージになっています。
さらに、YuMiには当たり前に手がついているのですが、こういうふうにハンドがあらかじめデフォルトでついているロボットは、これまで産業ロボットではありませんでした。
オリックス・レンテック株式会社で、RoboRenというロボットのレンタルサービスをしていますが、YuMiはロボットレンタルビジネスの先駆けとなりました。レンタルというビジネスモデルにも非常にフィットしていますね。
この爪を加工したりして色々な用途使えます。今は外していますが、ここにエアーのラインが両側から取れるようになっているので、吸引してモノを掴むこともできます。
日本市場に投入してから1年半ほどになり、既に色々なアイデアが実現されてきています。
例えば、外観検査の装置メーカーのデクシス社がやっている「外観けんた君」というアプリケーションがあります。YuMiにカメラを組み合わせ、YuMiがモノを取って、カメラでピンホールを検査させて、問題なければ蓋を閉めて、ダメならはじくというようなものです。
これまで人が過酷な環境の中、長時間作業していました。機械に置き換えるといっても、熟練が必要な部分があり、代替手段がなかったのですが、YuMiとその装置の組み合わせがフィットした事例です。
当初は、電子部品の組み立て用途で開発したロボットでしたから、我々にはそういった先入観があり、そこからなかなか飛び出せませんでした。 このようなお客様のアイデアに触れて、新しいアイデアが形になる経験から、やはり色々な人と触れる機会があることは大事だと考えました。そこでYuMi Cupというアイデアコンテストなども実施し、例えば学生さんなどにとっては産業用のロボットに触れる機会の創出なども行なっています。

酒田: 産業ロボットは、法令があり教育を受けなくてはいけないので、簡単に触れられないものです。YuMiだと問題がありませんので、簡単に触れられます。
-例えば、立ち食いそば屋などでも、ロボットが調理するようになるのでしょうか。調理場が小さい中で、お店の方とYuMiが動いているようなイメージです。
酒田: リンガーハットのGYOZA LABOという店舗では、YuMiを設置し、生餃子を箱詰めして販売するということをやっています。今後も、こうした色々な使い方が集まってくるといいなと思います。
-プログラミングについてはいかがでしょうか。
酒田: 専用のRAPIDという、ABBのプログラミング言語があります。一番簡単なプログラミング方法は、タブレットを使用したダイレクトティーチングというやり方と、ティーチペンダントを使用した方法です。
-タブレットで教示をさせていくわけですね。
酒田: そうですね。だた最終的にはRobotStudioで作っていくのが効率的かと思います。また、RobotStudioにもCADのデータを全部取り込めますし、さらに、社外のCAD系ソフトウェアでもアドインでロボットを動かすようなこともできます。
-YuMiは個人が買える金額なのでしょうか。
酒田: あくまでも産業用ですから、個人が気軽に買える価格ではありませんが、人件費と比較すると、良い投資対象です。
携帯電話を組み立てることができるということも想定している設計で、繰り返し精度は0.02ミリ。 この精度を維持するのは人間には不可能です。YuMiは、正確さと持久力が特長なのです。電気さえあれば、24時間、文句も言わず、壊れずに正確に動作します。
-YuMiを使って色々なことができそうですね。
酒田: 実際にやってみると、色々な切り口があるのかなと感じています。他にも、AIなど、今伸びつつある様々な分野の方々とも、積極的につながっていけたらと思っています。
-ありがとうございました。
【関連リンク】
・インタビュー前編: 第4次産業革命でキーとなるのはコントロールルーム ーABBインタビュー(前編)
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