我々にとって身近なコンビニ。
特集「コンビニとデジタル」では、コンビニにおけるデジタル化の現状や、本当に必要とされているデジタル技術とは何なのかなどについて、マーケティング・流通ジャーナリストの渡辺広明氏とIoTNEWS代表の小泉耕二が対談してきた。
今回は特集「コンビニとデジタル」の第二弾。(コンビニとデジタルの⑤〜⑧)
2022年11月28日に東京都大塚にオープンし、アバター接客や食品ロス削減など、サステナブルな施策に取り組んでいる「green Lawson(グリーンローソン)」に小泉が実際に足を運び、そこから見えてくる未来のコンビニについて、渡辺氏と対談した。
渡辺広明氏は、ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザーなどを務めた後、ポーラオルビル・TBCを経て2019年にやらまいかマーケティングを設立。現在は商品開発、営業、マーケティング、顧問、コンサルティング業務などで幅広く活動。フジテレビのニュース番組「FNN Live News α」でレギュラーコメンテーターも務める。
冷凍弁当でビジネスモデルを変革する
⼩泉: 次は、「green Lawson」に置かれている商品について注目していきたいと思います。
私が真っ先に気になったのは、お弁当が全部冷凍になっていたことです。

元々コンビニ弁当はレンジで温めるものでしたので、利用者としては冷凍であってもそこまで気にならないのですが、店舗側の狙いはなんなのでしょうか。
渡辺: お弁当を冷凍にすることで、フードロスの削減に寄与しています。
通常数日で廃棄する必要があるお弁当を冷凍にすることで、賞味期限が200日以上伸びます。加えて、廃棄になる手前のからあげクンを冷凍させ、施設に寄付するなど、食品を無駄にしない取り組みが行われています。
⼩泉: 本当に今の冷凍技術は⾼いため、ファミリーレストランなどでは以前から冷凍食品が活用されていました。
劣化の問題もあるので、出来立てを冷凍して運び、食べる直前にレンジで温めた方が美味しい可能性もありますよね。
渡辺: そうですね。冷凍技術が発展したことで、冷凍食品が美味しくなったからこそ、実現できたことだと思います。
また、今回の施策はローソンだからこそできたことだと考えています。
コンビニはもともと、協力工場と共に売り上げを伸ばしてきました。コンビニが出資を行っているわけではないものの、協力関係のもと、専用工場になっているケースも多いのです。
協力工場としても廃棄されて毎日納品できた方が儲かるため、お弁当を冷凍にするということは、ビジネスモデルを変える必要があるのです。
しかしローソンには元々厨房があり、できたてのお弁当をコンビニで作っていました。約1万5000点ある商品の中、1万点ほどを厨房で作っています。
協力関係にある工場も幅広かったため、冷凍専用のお弁当を新たに開発することができたのです。
⼩泉: こうした施策は他のコンビニにも是非実施してほしいと思います。工場との協力関係が出来上がっているのも理解はできますが、廃棄も多く、弁当工場も過酷な労働環境の上、人材不足なため、今と同じ量のお弁当を作る必要があるのかという疑問を感じます。
売り上げは下がったとしても利益を確保できればいいわけですから、付加価値をつけて値上げをすればよいと思います。
渡辺: コンビニ⼯場の場合は巨大であるため、コストとバランスを取れるかどうかは難しいところですが、おっしゃる通り、今の時代はビジネスの在り方を変えていかざるを得ない転換期だとも思います。
また、冷凍することでフードロスは削減できますが、冷凍させるプロセスや保存している間などに電気を使用するので、Co2を排出してしまうという課題もあります。
小泉: フードロスの問題と、脱炭素の問題のバランスをどこで取っていくかということですね。
渡辺: そうですね。セルフレジが浸透して、利用者の買い物体験の中に人手がかからなくなれば、その分スタッフは厨房での手作り弁当を作ることができます。そこで、冷凍弁当と常温弁当をうまく併用しながらバランスを取っていく必要があると思います。
⼩泉: お弁当を作る過程にもロボットを導入するなどすれば、さらに省人化・効率化しながら取り組めそうです。
渡辺: ここもロボット導入とコストが見合うかどうかですが、そうしたことも実験しながら最適な形が見えてくるのだと思います。
未来のコンビニでは個店別の品揃えが重要
⼩泉: 他にも、「green Lawson」では生鮮野菜が売られていて驚きました。

渡辺: これは全国的に売れるかどうかは分からないのですが、すでに東京都内のコンビニでは野菜を販売している店舗もあり、よく売れています。
スーパーのある地域のコンビニで販売しても売れないのですが、都内はスーパーがない地域が多いので、野菜難⺠が多いのです。私からすると、23区内は流通難⺠だらけだと感じます。
また、⾼齢化が進んでくると、小分けの野菜を販売して欲しいというニーズが生まれます。 野菜の仕入れは地場で値段が決まっているため、直接そのお店が仕入れている場合が多いです。
そのため、商品の品揃えを本部に任せきりにするのではなく、個店別にどう品揃えをしてくかということが、未来のコンビニでは重要なポイントです。
コンビニの利便性を「健康」にも役立てる
小泉: さらに、お弁当や野菜だけでなく、「green Lawson」では薬を受け取ることもできます。これは、「green Lawson」近隣のクオール薬局大塚1号店と2号店で処方された薬の受け取りができる、「処方箋ロッカー」です。

渡辺: オンライン診療と服薬指導が開始されてから、コンビニのカウンターで薬を渡す実験は、これまでも様々なコンビニで行われてきました。
しかし、私としては、薬の受け取りだけでなく、風邪薬のような総合感冒薬がコンビニで売ることができるようになれば良いと思っています。
オンラインでは薬剤師を介さなくても総合感冒薬が買えますが、コンビニでは買えません。しかし、大量購入による欠品が起こるといったことや、成分によっては過剰摂取が体に良くないものもあるため、販売制限をする意味でも薬剤師は必要だと考えています。
そこで、薬剤師に関してもアバターを活用して何店舗か掛け持ちをして対応をすることで、コストを下げながら薬の販売が行えるようになるのではないかと期待しています。
小泉: 実際に「green Lawson」では、これまで難しいとされていた酒やたばこの販売に関しては、運転免許証やマイナンバーカードを活用して年齢確認を行っていて、処方薬受け取りに関しては、薬局と連携することで実現させています。
総合感冒薬に関しても、実現できる仕組みを導入して販売することができれば、さらに便利ですよね。
渡辺: コンビニは、利用者の悩みをほぼ全部解決していると私は思っています。全国的に不足しているサービスは、薬だけなのです。
特に今後高齢化が加速し、高齢者は700m以上歩くことができないということを考えると、近くのコンビニで薬を購入できることはすごく大事なことです。
加えて、コンビニであれば24時間空いているので、時間を問わず健康に関する悩みを解決できることは価値があります。さらに、予防医療につながる商品も提供していけば、コンビニが健康に役立つことができるため、要注目なのです。
⼩泉: 今回は「green Lawson」に置かれている商品について注目してきましたが、冷凍弁当やからあげなどのおかず系の商品、野菜などの生鮮食品からお薬まで、コンビニがあれば事足りるなと感じます。
渡辺: そうした形を⽬指しています。2000年ごろまでは、コンビニは若者の店と⾔われていましたが、今ではシニアのニーズにも応える施策を打ち出しています。
つまり、世の中の変化に合わせて、コンビニの中⾝も品揃えも変わっているのです。
⼩泉: 確かに私が⼦供の頃のコンビニとはまるで違います。すごい進化を遂げていますね。(第8回に続く)
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。