社内に「2つの時計」をもつことの意味
ウフル 八子知礼氏(以下、八子): 我々がコマツさんのアドバイザーとして参画させていただいている中で、小さなプロジェクトが8つほど動いていました。そのうちの3つは、現場と議論したけどうまく進まないというものでした。やはり進むものは進む、進まないものは進まないんです。
四家さんもスタッフの方も、2、3か月でうまくいかないなら次に行きます。とにかくPDCAのサイクルが速いのです。あとは、一度捨てたものにはもうこだわらない。

四家さんのスタンスは、「とにかくアイディアがあったらやってみようよ」ということです。そこが明らかに大企業のアプローチとは違います。
面白いのは、部下の方々が同時並行的に抱えきれないほどたくさんのプロジェクト進めている中で、いつも顔を見合わせて、「四家さんから新しいプロジェクトが落ちてきたらどうしようかな…」という顔をしているんですよね(笑)。
四家: みんな抱えきれないほどのプロジェクトがあるんですけど、そこに新たに落ちてくると、それぞれがプライオリティを考えて、落とすものは落としていきますからね。ダメなビジネス案は自然と淘汰されていくんです(笑)。
八子: そうなんです。コマツさんは優先順位をつけてとてもうまくやりくりされます。柔軟であるということが、大企業であるにもかかわらず担保されている。そこがすごいところです。
四家: ただ、これはぜひコメントしておかないといけないのですが、コマツという会社全体がこのようなスタイルになったら、ぼくはダメだと思います。重要なのは、二つのスタンダードがあることなんです。
小泉: さきほどおっしゃっていた「時計が二つ」ということですね。
四家: そうなんです。
小泉: 逆に少数精鋭のウフルさんですが、そんなコマツさんをどう見ていますか?
八子: やはり、約3年前に初めてお話をうかがった時から、「現場の課題を解決する」という考え方が、全くぶれてないんですよね。コマツさんのビジネスと関係がなくても、「それを解決しないと、現場の安全と生産性がよくならない」といってやるんです。
いわゆる、社会的な「大義」です。普通の企業であれば、プラットフォーム化を検討する際に、「うちの会社の大義って何だっけ?」という話に戻ってしまうんですよ。
「それをやらないと現場が困る」ということであれば、コマツさんは躊躇しません。「Edge Box」(ドローンで撮影した建設現場のデータを高速で計算し、3Dの地形データを作成するハードウェア)についてお聞きした時はびっくりしました。
「NVIDIAさんのコンピュータを使って画像認識をやる。PoC(概念実証)で色々つくっている」と四家さんがおっしゃるんです。「Edge Box」はサーバーですよ? それが半年も経つとできあがっているんですから。PoCじゃなかったのかと…。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。