【後編】コマツ四家氏・ウフル八子氏が語る、建設現場のオープンプラットフォーム「LANDLOG」はいかにして生まれたのか

コマツがビジネスモデルを変革できた理由

小泉: 四家さんに初めてお話をうかがった時に、「バリューチェーン」とは何かということについて、すごく考えさせられました。自社のビジネス領域にとどまらず、バリューチェーン全体にコミットしながら顧客の価値を最大化しようとする企業は、そんなに多くはないと思います。

四家: それについて、私は最近ようやく頭の整理がついてきました。よく電機メーカーさんなどが、「コマツさんはリカーリングビジネス(継続的に利益を生み出すビジネスモデル)が上手ですね」とおっしゃるんですね。

でもよく考えると、建機メーカーとは、そもそもそういうビジネスモデルなんです。建設機械の販売台数は、自動車の大体300分の1です。自動車が1億台売れれば、建設機械は30万台です。

ただ、金額的には14分の1なので、1台当たりの金額は高い。では、クルマと建機で、生涯どれだけ動くのか、距離を時間に換算してみると、建機はクルマの5倍くらい動きます。かつ、お客様にとってのライフサイクルコストは、クルマが新車価格の10%だとすると、建設機械は買った分と同じくらい。鉱山機械だと2倍です。

ですから、お客様の使用期間中にずっと関わりながら、そこでお客様は自社のコストを下げ、コマツは売上を上げるというバランスを保たなければ、コマツのビジネスは成り立たないんですよ。

コマツ四家氏・ウフル八子氏が語る、建設現場のオープンプラットフォーム「LANDLOG」はいかにして生まれたのか

「バリューチェーン」という言葉が出る前から、我々はお客様が新車を買う時に、中古になった機械を買い取り、さらにはその中古車を売り、またその中古車の部品を売ってというように、とにかくスクラップになるまで関わっていこうというのが、もともと建設機械業界のある意味「DNA」としてあるわけです。

ただ、コマツの建機を使っているお客様のコストの話はしているけども、お客さんはどれくらい現場で儲かっているのかについては、私たちはコミットできていなかった。そこで入ってきたのが、今の「スマートコンストラクション」なんです。

小泉: ビジネスモデルを変えるのは至難の業だと思います。長い歴史を持つ会社は特にそうです。バリューチェーン全体に責任を持つことが「正論」だとしても、それを本当にやろうとする企業は多くありません。

四家: それは多分、コマツも一緒です。ある時、社員からこういうことを言われました。「四家さん、ぼくらはスマートコンストラクションでお客様に何を提供するんですか?」と。

私は、「お客様の生産性と安全の向上だから、つまりはお客様の利益だね」と答えた。すると間髪入れずに返ってきたのが、「コマツがお客様の利益をつくることができるんですか?」という言葉でした。

私は言ったんです。「コマツは建機で何を売っているのか。それは生産性だ。建機はお客様の生産活動に使うものなんだから、これはお客様が儲かるために買ってもらっているのであって、飾るためのものではないはずだ」と。

小泉: なるほど…。

八子: 「ダントツ」がコマツさんの文化です。その「ダントツ」の目指す方向が、エンドユーザーさんの売上や利益につながる「ダントツ」のことなのか、それとも自社の利益のことなのか、その違いで議論はだいぶ分かれると思いますね。

エンドユーザーのハッピーやバリュー、もしくは生産性が上がることで、結果としてその差分としての利益を得ていく。必ずしも潤沢にというわけにはいかないでしょうが、土木建築業全体として、ある程度しっかりビジネスができるというレベルまでは持っていきましょうというところに、「スマートコンストラクション」はこだわっています。

コマツ四家氏・ウフル八子氏が語る、建設現場のオープンプラットフォーム「LANDLOG」はいかにして生まれたのか

そこの「ダントツ性」が、外の方々からすると、「そこまでやらなくてもいいのでは?」となるんです。

ビジネスモデルを変えるのは大変です。しかしコマツさんは、「KOMTRAX」がベースにあったから、やりやすかったというのはあると思います。要は、建機の稼働状態が把握できている前提で、その上にさまざまなアプリケーションをのせていくことができるわけですから。

ところが、他の会社さんでプラットフォームやデジタルツインを検討しようとすると、「うちはまだ何もやっていないから」、「データをまだ持ってないから」という話になります。そうすると、すさまじく遠いところからスタートするという、心理的なビハインドが大きいように思いますね。

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