2024年の能登半島地震にて、珠洲市は多くの建物倒壊や道路の寸断など広域にわたる甚大な被害を受けた。
被災者の生活再建が一刻も早く求められる中、立ち入ることの困難な地区での住家被害認定調査の実施、調査人員の確保、山間部や海岸部における効率的な調査方法の確立が課題だった。
石川県は2023年に、NTTビジネスソリューションズ株式会社と共同で、東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)が提供する「被災者生活再建支援システム」を県下全ての自治体に導入している。
このシステムは、調査計画策定から住家被害認定調査、罹災証明書交付、被災者台帳までの生活再建に関わる一連の業務フローを提供している。
また、共同開発事業者であるESRIジャパンが提供する「建物被害認定調査モバイルシステム」を用いて、モバイル端末での効率的な住家被害認定調査手法も提供している。
こうした中、NTT東日本グループとESRIジャパン株式会社、そしてNTT西日本グループは、今回被害に見舞われた石川県珠洲市で、内閣府、石川県、珠洲市対口支援自治体の熊本市・浜松市と連携し、住家被害認定調査において、ドローンや360度カメラを用いた調査を実施した。そして、得られた画像を基に、遠隔地から被害判定を支援する取り組みを行った。
具体的には、被害に見舞われた珠洲市の山間部や海岸部を遠隔判定調査エリアとし、大谷地区方面で1月下旬から2月上旬の2回に分けてドローンによる対象住家の空撮を実施した。
株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー(以下、NTT-ME)と株式会社NTT e-Drone Technology(以下、NTTイードローン)は、現地派遣計画や飛行プランを策定し、作業に際してはドローン映像のリアルタイム配信により、珠洲市はじめ関係各所に空撮成果物の確認を提供した。
面的な撮影は、NTT-ME、NTTイードローン、株式会社NTTフィールドテクノ、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(以下、JIW)により、珠洲市の要望に応じた住家エリアの飛行を実施しつつ、ドローン飛行が非効率なエリアでは、NTT東日本にて360度カメラでの撮影を行った。

撮影データを基に、ESRIジャパンが提供するGIS技術により、撮影画像の加工・クラウド配信を行った。
判定については、被災者生活再建支援システムユーザである熊本市の応援職員が遠隔地(熊本市役所)から実施した。また、NTT-MEが遠隔地(NTT-ME オンサイトオペレーションセンタ)から判定を支援している。

従来からのオルソ写真を用いた全壊のみの限定的な判定ではなく、位置情報付きの斜め写真や360度写真により全壊以外の全判定区分を網羅的に遠隔地から判定を支援する新しい試みとなった。
この遠隔判定の実施にあたり、内閣府、石川県と連携し、調査フローや判定手法の検討を進めた。それらの調査画像・判定結果を被災者生活再建支援システムに取り込み、罹災証明書を発行している。

今回の取り組みにより、人の立ち入りが困難な地域や、現地調査員の確保が困難な場合でも、遠隔地から判定を支援できることや、応援職員は現地に行かずに自庁で遠隔判定できることが明らかになった。
また、画像撮影や被害認定の支援を事業者にアウトソースすることで、迅速で公正公平な住家被害認定調査、罹災証明書発行が可能となった。
今後は、今回の取り組みで得られた知見を活かし、発災時におけるより円滑な住家被害認定調査手法・応援体制の確立により、迅速で公平公正な罹災証明書発行を実施していけるよう検討を進めるとしている。また、水害、風害等の地震以外の災害でも、活用できるよう取り組む計画だ。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。