教育分野で対話型生成AIの利活用は、学習者が自律的かつ個別の学習ニーズに最適化された環境で学習ができることで、学習者の自立性を促し、より効果的で充実した学びを実現できる可能性がある。また、教育を提供する教職員の支援ツールとしての利用効果の期待もある。一方で、AIの信頼性や誤用などのリスクも懸念されている。
学校法人同志社 同志社大学では、「ICTの進展を見据え多様な教育活動に対応できる学びの空間や環境を整備する」というビジョン2025中期行動計画にもとづき、これまで双方向リアルタイム授業・オンデマンド授業を効果的に活用している。2024年度からは新たな学年暦・新たな学びを開始し、教室での授業とオンデマンド授業の組合せを基本とすることで、学生に多様な学びの方法を提供することから、更なるICT環境とサポート体制の整備として、生成AIの利活用を検討している。
また「数理・データサイエンス・AI教育」に関して、全学部の学生を対象とした全学共通教養教育科目として2022年度から「同志社データサイエンス・AI教育プログラム(以下、DDASH)」を開始し、生成AI等の革新的情報化技術を正しく理解し、利活用できる人物の育成に取り組んでいる。
このほど西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)、同志社大学、株式会社NTT EDXは、生成AIを利活用した教育・学習支援に関する共同実証の事業を連携して実施し、学生や教職員らを対象とした新たな「教えと学び」の仕組みづくりに取り組むと発表した。
同事業では、DDASHの授業科目において、教育・学習向けの生成AI利用環境を整え、新たな教えと学びの仕組みの構築に向けて取り組む。
生成AIは、AIモデルをセキュアな環境で利用できる「Azure OpenAI Service」を採用し、電子教科書は、NTT EDXの電子教科書配信サービス「EDX UniText」にて提供する。生成AIと電子教科書の親和性は高く、効果的で利便性の高い学習環境を提供するとともに、学習状況を可視化することも可能だという。加えて、電子教科書を生成AIの学習源として利用することで、生成AIが返す回答の正確性を検証し、AIを活用する学習環境の信頼性を高める。
これらの組み合わせによる教育・学習向けの生成AI環境では、学生や教職員が入力したデータを同志社大学のセキュアな情報環境内で、安心して利用できる仕組みとしている。また、同事業を通して、高等教育機関における学生個別の学習ニーズに最適化された学習環境を提供できる仕組みづくりに共同で取り組む。
同事業において、NTT西日本は電子教科書を活用した「教育・学習向け生成AI」の実証環境構築・提供・利活用支援、同志社大学は「教育・学習向け生成AI」の実証環境を利活用する授業の実施と検証、NTT EDXは電子教科書配信サービスの提供、実証授業における電子教科書の活用支援を行う。
同志社大学は今後、同取り組みにおいて学生の学習効果、教員の教育支援の有効性を検証し、DDASH以外の授業科目への展開、特に生成AIが効果的に機能する授業等での利活用の検討を進める予定としている。
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