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「まちづくりデベロッパー」が目指す「私鉄3.0」のビジネスモデル ―東急電鉄執行役員 東浦亮典氏インタビュー

東急電鉄が目指す人間中心のまち「WISE CITY」

東浦: たとえば、川崎市は南北に長い市域を持っていて、南部の工業地帯や市の中心部と、北部の住宅地では同じ行政単位と思えないほど、交流がありません。一方で、鉄道は東西に走っており、東京へと続いています。東京寄りに住んでいる人たちの中には、川崎市の中心部にはめったに行かず、どちらかというと東京の方になじみのある方が多いのです。

こうした構造では、行政が何か住民に快適なサービスを提供しようとしても、住民にとってのハッピーと少しずれてしまいます。

小泉: なるほど。たとえば、田園都市線の二子玉川からあざみ野のあたりは、頻繁に行き来する人が多いと思いますが、それは行政区分とは関係ありませんね。二子玉川は世田谷区ですから。

東浦: そうです。ですから、自治体と東急のような公共サービスの事業者がデータ連携をして、生活者のニーズに合ったサービスを提供していくことが重要だと考えています。

小泉: たとえば、自治体のデータがオープン化されると、生活者にとってどんなハッピーなことがあるでしょうか。

東浦: 一つ例をあげるとすると、保育園ですね。たとえば、川崎市にお住まいで、会社は東京にあるというお母さんがいらっしゃるとします。市内の保育施設に子供を預けて東京の会社に行くより、会社の近くの保育園に預けた方が安心ですよね。

小泉: なるほど、おっしゃるとおりだと思います。

東浦: 大事なことは、人が中心のまちづくりだと思っています。東急電鉄では、その思いをこめた、「WISE CITY(賢者のまちづくり)」というコンセプトを提唱しています。

WISEのWには、Wellness(健康)、Walkable(歩いて暮らせる)、Workable(郊外でも働ける)といった意味が込められています。また、ISEはそれぞれ「Intelligence & ICT」、「Smart, Sustainable & Safety」、「Ecology, Energy & Economy」の3つの頭文字をとっています。

最近では「スマートシティ」や「スーパーシティ」という言葉があり、あちこちで自治体や企業が取り組みを進めていますが、「誰のためなの?」と思うことがあります。

小泉: どうしても、技術ありきの議論になりがちですよね。

東浦: 「スマートシティ」というと、どうしても近未来的な、鉄腕アトムが登場するような世界を思い浮かべる方が多いようです。想像力が豊かであることは素晴らしいことですが、私はあまりそうした世界は期待していません。むしろ、人間はそんなに大きくは変われないと思います。テクノロジーがどんなに進化しても、人間の生物学的な部分は大きく変わらないからです。

私は、緑があって水がきれいで、空気がおいしいようなまちに住みたいと思っています。以前にエストニアの首都のタリンに行ったときはとても衝撃を受けました。IT立国と言われるくらいですから、高層ビルが立ち並ぶような街を想像していたのです。ところが、実際はきわめて中世的なヨーロッパの街並みでした。そこには1週間滞在して、毎朝ジョギングして、東西南北を走り回りました。どこまで行っても牧歌的でした。

でも、その裏側には、高度なIT技術が張り巡らされている。そのギャップに痺れました。「これだ!」と思いましたね。

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