ラスベガスで開催されているCES2019レポートの第三弾はベライゾンのキーノートだ。
5Gのカウントダウンが始まって以来、恒例化したCESにおけるVerizonのキーノート。
今年は5Gが、先行してサービスインしているベライゾンにとってから初となるキーノートとなり、5Gの「実際」について注目が集まるものとなった。
Verizon CEOのHans Vestberg氏が登場し冒頭で伝えたのは「5Gは全てを変えていく」というメッセージだった。
蒸気や電気の発明があり、コンピューターやインターネットの登場でこれまでの様々な大きな変化が起きてきた。それと同じように5Gは世の中を大きく変え、第4次産業革命を起こすという。
5Gによって見えないことが見えるようになり、遠隔でなんでもできるようになる。結果として人それぞれに対して、適切なことが適時に実現できるようになる。これを第4次産業革命都市、Verizonは「Humanability」と表現した。
その5Gには8つの特徴がある。
1つ目が「Peak Data Rate」が10GB/sになるということだ。非常に高速な通信が実現される。
2つ目はこの速度と相関もある1㎢あたりの「Mobile Data Volume」が10Tb/sになるというものだ。このデータキャパシティの拡大はとても大きな進化である。
3つ目が「Mobility」で高速移動への対応である。500km/hで移動しながら安定的な通信が可能になる。
4つ目は「Connected Devices」で、1㎢あたりに100万のデバイスが収容できるようになる。高速移動も大量接続も4Gまでの大きな課題であった。
5つ目が「Energy Efficiency」で、電力の効率化。
6つ目は「Service Deployment」だ。電力の効率化もサービスの平均制作時間も、2010年の10%にでき、大幅な効率化が見込めるという。
そして7つ目が「Riliability」でデータ欠損率が限りなく小さくなり、99.999%のデータの信頼性を担保する。
最後に8つ目は「E2E Ratency」でEnd to Endで5ms以内の遅延でデータが届くというものだ。
これらの8つの特徴を持った5Gが普及することでビジネスも社会も大きく変わる。既にいくつかの企業と取り組みを始めていて、ニューヨークタイムズはジャーナリズムのイノベーションを研究するJURNALISM 5G LABを設立した。ここではVRなどのリッチな没入型のメディアで必要な時に必要なものを配信することを既に始めている。
続いてウォルトディズニーとの取り組みが紹介された。映画の製作は様々なテクノロジーによってこれまでも進化を繰り返してきた。最近ではモーションコントロールカメラで映像が大幅に進化し、新しいエンターテイメントが生まれた。
5Gでは撮影や製作側への影響もあるが、映像配信の仕方や、映像を楽しむスタイルすら変わってくることが考えられる。その変化の波に乗るためにも、ウォルトディズニーのStudio LabはVerizonと連携した5G活用の取り組みを始めているという。
また、SKYWARD社PresidentのMariah Scott氏は、5Gによるドローンビジネスの未来を「5Gとドローンが繋がることで社会が変わる」と断言した。
現在はマニュアル操作のドローンで高所の作業などを支援しているが、5G対応で、作業の安全性は大幅に向上し、効率性も信頼性も高まるという。
ハリケーンで破損した電線の復旧作業にドローンを活用しているのだが、危険な作業が多い。5G対応によって、遠隔操作のドローンが人の代わりに作業をすることや、作業現場の安全性をドローンが事前に確認することで、危険な場所に人が行くケースが無くなるということだ。
また、外科手術用のARサービスを開発するMedivisのCo-founderでもあり、医師のChristopher Morley氏は、5Gによって効率的かつ最適な治療の提供が可能になると説明した。
現在の医療現場ではデータがフル活用できておらず、昔ながらの人の目に頼る治療が多いという。
5G時代は活用可能なデータをAI等で解析し、適切な治療をテクノロジーとともに提供していくことが重要になる。これまで対応が難しかった難病も5GとARでリモート外科手術で解決できるようになるということだ。
最後に現在5Gを利用しているユーザーが実際にHUSTONから5Gネットワークで生中継に参加した。
既に半年ほど5Gを固定回線(FWA(Fixed Wireless Access))として利用していて、以前に比べとても快適とのことだ。
自宅がオフィスであり、映像コンテンツも頻繁に視聴するため、高速回線のメリットを実感しているという。
その場で実際のスループットを測定すると、690Mbpsとなり、いつもより少し遅い結果となったが、日本における一般家庭では理論値が100Mbps~200Mbpsの環境が大半であることを考えると、想像以上の高速サービスが既に実現されたいたといえる。
今後、コンシューマー向けにも5G対応スマホが2機種登場するということもあり、今年は5Gの「リアル」がどんどん顕在化していくといえる。
■CES2019レポート
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。