ラスベガスで開催されているCES2019。モビリティに関わる展示について、レポート⑧と⑨で既に一部の企業の例を紹介した(※)。本稿では、ボッシュのブースの内容について紹介する。
ボッシュは「電動化」「自動化」「ネットワーク化」の3つのキーワードを軸にIoTの活用を進めている。事業領域はモビリティのみならず、スマートファクトリーやスマート農業、スマートホームなど多角的に推進。CES2019のブースでは、モビリティとスマートホームの2分野において、幅広い製品やサービスを展示していた。
モビリティに関しては、レポート⑧において、シェアリングを前提とした、ボックス型の電気自動車(EV)プラットフォームの展示をいくつか紹介したが、ボッシュにおいても今回のCES2019において初めて、コンセプトシャトル「Shuttle Mobility(シャトル モビリティ)」を披露した(トップ画像)。
この車両には「電動化」「自動化」「ネットワーク化」のためのソリューションが搭載。予約、シェアリング、ネットワーク化プラットフォーム、駐車、充電サービスといったあらゆるモビリティサービスを包括的に提供するとした。
ボッシュはコンセプトにとどまらず、そうしたモビリティサービスに必要な要素技術やサービスを充実させている。クルマのカギを持たず、スマートフォンだけでロックを解除できる「Perfectly keyless」がその一つである。

「Perfectly keyless」では、クルマのカギはクラウドのデジタル空間にある。ユーザーは専用のアプリを使って、その「デジタルキー」を自分のスマートフォンに保存。ドライバーが対象のクルマに近づくと、車両内にあるデバイスがBluetooth通信でユーザーのスマートフォンを認識し、ロックを自動解除する。つまり、ユーザーはただクルマに近づくだけで、ドアのロックを解除することができるのだ。
ブース担当員によると、この技術は指紋認証と同じくらい安全なしくみであると考えているという。なお、クルマの中にはボッシュが開発した独自のデバイスが必要だが、ユーザーのスマートフォンにおいては種類を選ばない。

また、面白いポイントは、クルマのドアだけではなく、トランクのカギも別に発行できる。もし、ユーザーが配達業者にクルマのトランクに荷物を届けてほしければ、その配達業者にトランクを開けるだけのカギを送ることができるのだ。

また、ボッシュは電気自動車(EV)の充電サービス「Convenience Charging」を出展。EVは走行できるレンジがガソリン車と比べて短いため、充電できるスポットがどこにあるかが重要だ。
「Convenience Charging」はEVの充電にかかる費用やチャージ時間を見積もったり、充電量に応じて、充電スポットを経由する最適な走行ルートを提示したりするサービスだ。その際、ユーザーの好みを事前に登録しておけば、充電スポットまでにあるレストランやレジャー施設などの提案も可能。また、その充電スポットが空いているのかを確認したり、事前に予約したりすることもできる。
必要な充電量は、乗車しているヒトの数や荷物にも影響するため、そうしたデータも事前にアプリに登録することが可能。その他にもIoTをフル活用し、天候データなどあらゆるデータをもとに最適な走行ルートを導き出す。
「Convenience Charging」は欧州では既に展開済みで、UIはクルマのOEMによって変えているという。
スマートホームの展示内容については、別の記事で解説する。
■CES2019レポート
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。