依然として新型コロナウイルスの影響を受け続けており、新たな生活様式が定着しつつある。なかでも、家で過ごす時間が大きく増加していることにより、変化した消費者の行動を捉えることがビジネスの大きな課題になっている。一方、POSデータなどの販売データと比較すると、家庭内における商品購入後の使用実態を捉えるデータはかなり少なく、消費の履歴を記録するには手作業となるなど非効率的な手法に限られていた。
このような状況の中、経済産業省委託事業「令和2年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用した付加価値創出検討事業)」(委託事業者:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)において、電子タグ(RFID)を活用した家庭内の消費実態のデータ化と新たな付加価値提供に関する実証実験が行われた。
株式会社インテージと今村商事株式会社、株式会社サトー、帝人株式会社は、この実証実験を通して得られた知見をもとに、家庭内における実消費データをIoT機器により取得しリサーチやマーケティングへの活用を目的に、必要な技術の商用化を目指す「イエナカデータプロジェクト」について協業を開始した。同プロジェクトの特長は以下の通り。
- 普段通りのリアルな家庭内消費実態が把握可能に
- 消費行動をトリガーとしたリアルタイムコミュニケーションが可能に
- 複数のセンシングデータをもとに、行動の推定を行うことが可能に
- 不必要な個人情報収集を避けて、プライバシーセーフに
電子タグなどのIoTデバイスを用いて、普段の生活の動作を大きく変えることなくデータの取得が可能になる。一般的な家庭内調査の手法と比較して、各種IoT機器を連携させることで消費行動のデータ化における頻度や精度が向上するという。普段の行動に限りなく近いデータが取得可能になり、記録忘れなどの間違いもなく、一貫したデータを蓄積することができる。
リアルタイムに取得されたデータを活用して、LINEなどを通じて、消費者と双方向のコミュニケーションが可能になる。エッジ処理とクラウドを組合せることで低遅延でデータ化が可能になり、消費行動に合わせてタイムリーにコミュニケーションがとれるため、例えば、ある商品が使われたら次に別の商品の使用を促すなど、実消費を増やす施策を支援する。
また、カメラを設置して行う動画処理と比べてもコストダウンとプライバシーに配慮したデータの取得方法を実現した。
例えばオーラルケアであれば、歯ブラシと歯磨き、コップなど一連の使用データから行動の推定を行う。毎日の歯磨きを習慣化させる、または歯磨きにかけられた時間を計測し、ゲーミフィケーションやポイントプログラムを導入するなど、実消費行動を可視化して、新たな付加価値を提供する。
モノの情報を中心に組み立てることで、不必要な個人情報の収集を避け、安心してデータを活用できる環境を構築する。実証実験参加者のアンケートからは、実験前後に比較においてプライバシーに対する懸念が減少する結果となった。
プロジェクトの立上げ後は、参加各社のクライアント企業を中心に広くヒアリングを実施して、イエナカデータのさらなる活用方法や商用化に向けたデータの量と質の向上、また、販促や広告など既存のエコシステムとの統合について、ビジネスパートナーを募る。
また、電子タグリーダーやシステムの運用、データの分析などのオペレーションコストを削減し、さらなるコストダウンを進める。また、重量センサーなど他のIoT機器との連携も広げていくことで、さまざまなシナリオについて最適なセンシング機器の利用を可能にし、コスト削減と質の向上を両立させていくとしている。
同プロジェクトにおける各社の役割は以下の通り。
- 今村商事:イエナカデータのクラウドサービス(PaaS)の提供
- インテージ:リサーチの設計と実施、分析など
- サトー:リーダー不要のBluetoothタグの提供
- 帝人:シート型リーダーRecopickを含む低価格なリーダーの検討
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