CES2022のレポート第四弾はクアルコムだ。今年も、CEOのクリスチャーノ・アモン氏が登壇し、PC、xR、クルマの分野で使われる同社のSnapdragonの果たす役割と、協業関係などについて発表した。
現在、何10億というスマートデバイスがある状況に対して、クアルコムはコネクテッドテクノロジーを提供している。
クラウドにデータを送るにはインテリジェントなエッジが必要になる。クラウドは35%の成長をしていて、2025年までに64%のデータが従来のデータセンター以外で作られるようになるのだという。
これまで以上にエッジコンピューティングが必要とされる中、クルマやモバイルゲーム、セキュリティカメラといった様々なデバイスで低消費電力で高速高度な処理が実現できるチップが求められている。
そんな中、リスティアーノ・アモン氏は、以下の3つの項目についての可能性と事例について話した。
- Snapdragon Compute Platform搭載Windows on ARM PC
- xRデバイスとメタバースへの対応
- クルマのためのコネクテッド・プラットフォーム
Snapdragon Compute Platform搭載Windows on ARM PC
以前はarmベースのコンピュータがPCに搭載されることに対する懐疑論もあったが、現在では人工知能、カメラ、オンデマンドコンピューティング、セキュリティ対応、5G通信と、PCに要求されるテーマはどんどん変化していて、どこにいても高速にデータアクセスができることが特に重要なご時世となっている。
また、持ち歩くことが前提となるPCでは省電力性も重要だ。
そんな中、クアルコムは、ArmベースのPC向けコンピュータプラットフォームを提供し、Acerやhp、マイクロソフト、 ASUS、LenovoといったグローバルPCメーカーとエコシステムを構築している。
メタバースへの対応として、マイクロソフトとの協業を発表
Snapdragon Spaces XRは、電力効率が高く軽量なARグラスに搭載するものだ。次世代の軽量なメガネで使われ、ウェアラブルでの拡張現実を実現する。
すでにホロレンズにはクアルコムのチップが搭載されているが、さらに、マイクロソフトによって開発されたコラボレーションおよびコミュニケーションプラットフォームとなる「Microsoft Mesh」にSnapdragon Spaces XR Developer Platformなどのソフトウェアを統合する計画があるという発表があった。
クルマのためのコネクテッド・プラットフォーム
CASEと呼ばれるキーワードからもわかるように、コネクテッドという要素やEVという要素は昨今のクルマ業界においては非常に重要な要素となっている。
そんな中、クアルコムは、「Snapdragonデジタル・シャーシ」と呼ばれるプラットフォームがクルマ業界を変革してくというのだ。このデジタル・シャーシは、さまざまな部品からなるクラウドプラットフォーム群のことで、クアルコムがクルマ向けに提供する様々なプラットフォームの総称とも言える。
具体的には、5Gへの接続性はもとより、車両のセンサー群や照明、空調、などのゾーンアーキテクチャ、コックピットのディスプレイやマルチメディア環境、高度運転技術との融合、クラウドサービスといった機能群がある。
運転者支援・自動運転向けSnapdragon Ride Platform
GMのキーノートでも登場した、次世代ハンズフリー運転者支援システム「Ultra Cruise」に採用されたということでもニュースになっていた、プラットフォームだ。
トランクルームに大型のPCを搭載するのではなく、ノートパソコン2台分程度の大きさでカメラやレーダー、LiDARなどの処理に16コアCPUを搭載した高性能なAIを提供する。
エントリーレベルから高級車に至るまで、プラットフォームは必要だが、このプラットフォームを採用することで「リアルタイムにパーソナライズされた運転体験」が可能になるということだ。
また、Snapdragon ride platformにビジョンシステムが加わったと発表した。これは、自動運転用のオープン・モジュラー・スケーラブル・プラットフォームで、エンドキャップフロントカメラ、前後周囲がわかる視覚ソリューションとなっている。
グラフィック処理やAI処理、通信、などができる4nm SoCで提供され、次世代の視覚認識技術が搭載されたわけだ。
2024年までに実際に搭載されたクルマが登場する予定だと言う。
車内体験を変革し新しいサービスを可能にするSnapdragon Cockpit Platform
今回のCESでは、ボルボは、傘下のEVブランドであるポールスターから登場する新型SUV「Polestar 3」に、QualcommのSnapdragon Cockpitプラットフォームと、Wi-FiやBluetoothをサポートする一連のワイヤレス技術が採用されることを明らかにした。
これにより、処理速度は従来の2倍、グラフィック性能は10倍に向上するのだという。
また、ホンダやルノーともデジタルコックピットに関する協業を行うという発表があった。
他にも、アルプスアルパインのデジタルコックピットでは、eミラーや天井ディスプレイ、スピーカーの制御など、多岐にわたってクアルコムのチップが活躍しているのだと言う。新しいデジタルコックピットの可能性を示した例と言えるだろう。
例えば、ドライバーをカメラで監視する際、先進運転支援システムで制御されるクルマは他のセンサーから取得される情報と合わせてAIが複合的な判断をすることになる。そして、クルマはドライバーが危険を認識できるようにさまざまなテクノロジーで注意喚起をする必要がある。
こういったことを実現するために、クアルコムは、クルマのデジタル化に対してチップだけを提供するだけでなく、さまざまな他の機能とのやりとりが可能となるプラットフォームを提供するのだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。