その背景として、島田氏は、オーストリア出身の経済学者ジョセフ・シュンペーター氏(1883-1950)の「イノベーションの源泉の一つは、既存の知と別の既存の知との、新しい組み合わせである」という言葉を引用した。
イノベーションには、「知の探索」と「知の深化」の2種類があると言われている。日本は従来「知の深化」を得意としてきたが、それは時間がかかるというデメリットがある。
そのため、昨今のように市場の変化が速い時代には、対応を変えていかなければならない。つまり、「日本企業はすべて自社でやろうとするのではなく、既存の知の組み合わせでイノベーションをはかっていく必要がある」と島田氏は指摘した。
とはいえ、企業はどうすればよいだろうか。そこで、シーメンスはそれぞれの企業が汎用技術の組み合わせでイノベーションを実現するための”基盤”を提供するとして、その戦略を「デジタルエンタープライズ」と銘打ち、プラットフォーム事業を進めている。
具体的には、製品の設計・開発に関わるPLM(Product Life cycle Management)のシステムと生産現場に関わるMOM(Manufacturing Operations Management)の統合を可能にするプラットフォームを提供している。
「今までと何が違うのかと思われるかもしれない。しかし、それぞれ文化の異なるPLMとMOMの統合は、これまでの固定概念を壊さないとできないことだ。このようにインダストリー4.0では、ヒトの従来のイマジネーションを壊していくことが重要となる」(島田氏)

シーメンスはまた、IoT向けのデジタル基盤「MindSphere」を「産業のOS(オペレーション・システム)」と銘打ち、展開している。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。