東海道新幹線では、全車両の外観や機能の検査を概ね2日以内の頻度で実施している。特に外観の検査は、全長400mの車両の屋根上と床下を徒歩で目視や計測器具を用いて行っているため、多くの労力が必要となっている。

そこで東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)は、車両基地や駅に入るタイミングで、車両の外観を自動で検査するシステムを開発した。
このシステムは、「外観検査装置」と「パンタグラフすり板検査装置」から構成されている。システム導入後には、人手による外観検査業務を削減でき、車両の外観を従来より高頻度で検査することが可能だ。
「外観検査装置」は、車両基地の検査庫入口に車両全体を取り巻くようにカメラやセンサを配置し、約10km/hで入庫する車体や床下機器等の外観を自動で撮影することで、異常の有無を検知する。なお、ボルトのわずかな緩みを精度良く検知する技術など、同装置の解析プログラムは同社が独自に開発した。

「パンタグラフすり板検査装置」は、駅の線路の真上に検査装置を設置し、駅に入る車両のパンタグラフすり板の形状を自動で計測する。70km/hで走行する新幹線車両のすり板を、自動で高精度に検査できる技術を開発し、駅への設置が可能となった。

これにより、発着する全ての車両のすり板(※)の状態や厚さ等を、少ない台数で高頻度に把握することができる。
※すり板:パンタグラフの一部で、走行中に架線と摺れる部品。摩耗するため、すり板の厚さが適正か検査が必要。
今後は、2024年度に「外観検査装置」を大井車両基地へ設置し、「パンタグラフすり板検査装置」は品川駅へ設置される。その後、営業車両での検証を進め、最適な仕様を検討していくとのことだ。また、設置工事の期間を経て、本格的な運用開始は2029年度頃を目指すとしている。
なお、「外観検査装置」は株式会社NTTデータ東海と日本車輌製造の協力のもと開発され、「パンタグラフすり板検査装置」は日立製作所株式会社の協力のもと開発された。
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