課題があるからこそ、「この国の将来は明るい」
小泉: お話を伺っていると、テクノロジーに関する知見が、省庁の方にも必要になる時代がきていると感じます。
小林: 総務省で業務をするようになって思ったことですが、実は、役所にはテクノロジーに詳しい人は多いのです。とくに総務省はそうです。
大事なことは、彼らが仕事をやりやすい環境をつくっていくことだと思っています。そのためには、意思決定のスピードを今よりもずっと速くしていく必要があり、これにはやはり政治の努力が必要です。
一方で、最新のテクノロジーを学べる時間がないという問題もあります。そこで、総務省では「働き方改革」のチームを立ち上げて、新しいことを学んだり、他の省庁とプロジェクトを進めたりする、「余白の時間」をつくる取り組みを始めます。
政治家になってみて本当に思うことですが、私は、この国の将来は明るいなと思っています。
小泉: それはなぜですか。
小林: こんなにテクノロジーが使われていなくて、解決すべき課題がたくさんあって、役所には優秀な人材がたくさんいるのに、その能力は十分に発揮されていない。
それをすべて開放していくことができるならば、この国の将来は明るいなと思っているのです。つまり、「のびしろ」があるということです。そこをやり切れるかどうかは、まさに私たち、政治家の力量にかかっています。

小泉: 「のびしろ」という観点では、IoTの場合、どんなに技術があっても、それを実証するフィールドがないという問題があります。
その理由は、IoTとITの違いにあります。ITは、いわば突如出てきたマーケットです。一方、IoTはもともとある産業がIT化されることによってできるマーケットです。
産業は、リアルな現場の世界ですから、人が怪我をしてしまったり、最悪の場合には亡くなってしまったりすることもあります。そうした現場でIoTを実証するというのは、とても難しいことです。
IoTで世の中が大きく変わると言われていながら、うまくいかないことが多いのは、大きく変化することであるがゆえにテストができないという問題があるからなのです。
ですから、そうした実証の場があれば、テクノロジーはもっと活かせると思います。
小林: そうですよね。総務省としては、さきほどの5Gの事例のように、実証実験の場は提供しています。ただ、何かこちらでコンテンツを用意するというよりは、「こういう社会課題があるので、解決できる人たちに参加してほしい」という打ち出しをして、複数の企業などでチャレンジをするという場づくりをサポートしています。
そういう場づくりの機会を、今後はもっと増やしていきたいと思っています。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。