シーメンス株式会社では、9月6日にグローバル戦略や日本における取り組みなどを紹介する記者説明会を開催した。シーメンス株式会社の代表取締役社長兼CEO藤田氏が同社のグローバルの最新事業コンセプトと日本におけるデジタル戦略を語った。
同社は現時点でVision2020戦略の目標をほぼ達成しており、Vision2020+戦略を取り入れた。デジタル時代は適用力を求めているため、会社に変革が必要であると覚悟。さらに、業績がよくて、株価が最高記録した時の強力なポジションにある時こそが自己変革に最適な時期だと判断したためだ。
シーメンス社は過去の15年間で事業の半分を入れ換えており、デジタル関連事業の強化にも早い段階から取り組んできた。同社のデジタル事業の過去3年で80%の成長率を見せて、世界中の売り上げは6800億円に達成した。そのおかげで、シーメンスは産業用ソフトウェアを提供している最大企業の一つになった。クラウドベースIoTプラットホームMindSphereは世界最大級の産業用IoTプラットホームだと藤田氏は語った。
同社はグローバルメガトレンドを参考にし、将来の戦略を作成している。そのメインメガトレンドというと、人口動態(世界中の高齢化)、都市化(2050年に66%の世界人口が都市部に集中)、グローバル化(国際貿易は4倍に増加する) や気候変動とそれに伴うエネルギー変革だ。もちろん、圧倒的なスピードで進んでいるデジタル化も重視されているトレンドの一つである。
藤田氏はデジタルソリューション導入をいくつかの事例を紹介した。欧州自動車メーカーはエネルギー消費を継続的にモニタリングや省エネの適用によって2万トンほどのCO2を削減し、コストを15%削減できたという。
ガスタービン用のAI利用は、NOxやコスト削減し、メンテナンス間隔を30%延長できたという。
シーメンスのアンベルグ市にある工場で、工場規模やスタッフ人数を変えずにフールデジタル化によってリアルタイムで製造管理し、99.99%の品質を保ちながら生産性は製造開始時より13倍も上がった。さらに、デジタル化が幅広いバリエーションを可能にした。同工場で、1200の異なる製品を製造するため350回の使用変更が可能になっている。
また、シーメンスのMindSphere プラットホームは2020年にドバイで行われる万博EXPO2020の公式パートナーになった。すなわち、スマートインフラストラクチャーを使い、EXPO2020会場データをすべてMindSphere 上で管理するという。パビリオンの電力消費や入場者数などをリアルタイムで管理し、柔軟な対応を目指している。
新しいVision2020+戦略でシーメンスは組織再編に取り組み、戦略会社と社内カンパニーを設立する予定だ。社外における戦略的な会社は再生可能なエネルギー分野のGamesa社、ヘルスケア分野のシーメンスHealthineers、や設立予定のシーメンスAlstom社(現在EUの規制当局から承認待ち)だ。また、いずれ事業部制だったガス&パワー、スマートインフラストラクチャーやデジタルインダストリーは社内カンパニーに変わる。シーメンスの主なソフトウェア事業(MindSphereを含み) はデジタルインダストリ―社内カンパニーに属するようになるということだ。
さらに、シーメンスは日本でデジタル化推進やインフラ整備に力を入れる予定だ。またデジタル化に対応するには、シーメンスは社内働き方改革を進めている。30万人以上ある従業員にシーメンス社はオーナシップカルチャーの定着を促している。すなわち、自分の判断や意志で自分の行動をする考え方。
シーメンスはMindSphere の導入を拡大しているほか、キヤノンとの映像ソリューション領域活用に協業した。また、IoT導入は大企業にしかできないと思われがちだが、小中企業こそが判断・決定スピードが速く、初期投資は高くないため、導入しやいと藤田氏が訴えた。
金沢にある中型企業「アイデン」はシーメンスの製品を使い、IoTショールームを開設した。また、国内の大手電力会社はスマートメーターから集めている大量データをシーメンスのEnergy IPプラットホームで管理しているという。
MindSphereの普及には、パートナー戦略に頼る予定だ。クラウドベースOS であるMindSphereには様々な業種で導入されるため、祖の分野に特化したアプリケーションが必要だ。しかし、各企業にとってテイラーメイドアプリケーション開発は不可能であるため、パートナーシップの提携が重要である。
そして、プラットホームのオープンアーキテクチャーやエッジ技術との統合機能は大事になってくると藤田氏が述べた。
先週GEデジタル部門売却のうわさはかなり業界に波紋を投げかけて、「デジタル化は一切進むのか?収益できるのか?」という質問に対して、藤田氏はシーメンスとGEのIoTへのアプローチの違いを説明した。
GEのIoT 分野への急速・高額投資と打って変わって、シーメンス社は一歩づつ、着実にIoTビジネスを拡大してきたという。そのため、投資利益に関する期待は異なっていただろう。また、GEのポートフォリオに産業部門はなかったが、現在産業・製造業用のIoTは主戦場である。シーメンス社は製造業分野でデジタル化を確実に進めて、利益を伸ばすことができた、と述べた
参考:
シーメンス
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。