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スマートホームの基礎とトレンド

そもそもスマートホームとは、1980年代にアメリカで提唱された概念である。日本では、1990年代にトロン電脳住宅が話題となりホームオートメーションブームが到来。2010年ごろには、アメリカのスマートグリッド(エネルギーに関する取り組み)の取組みが注目された。

ちょうどスマートフォンが世界的に広まったことをきっかけに、スマートフォンと接続するデバイスが登場し、世界的なIoTブームの到来とともに市場を広げることとなった。

その後、2014年、アメリカで音声応答エンジンAmazon Echoが発売されたり、サーモスタットやホームカメラソリューションなどを手がけるNestがGoogleに買収されたりと、家ナカの「ハブ」としての機能が登場。スマートフォンとの接続を前提としたり、ホームゲートウエイとの接続を前提としていたスマートホームのソリューションが、ハブを中心にして相互接続を行うようになった。

そして、2018年頃になると、空前のAIブームが起き、スマートホームのデバイスに関しても、AIを搭載した賢いデバイスがたくさん登場することとなった。スマートホームの進化は、家ナカにおさまらず、現在では外部サービスと連携したり、「スマートシティ」や「MaaS」など、他のデジタルトレンドとも連携して、新たなる価値を見出すフェーズに入ってきているといえる。

スマートホームの基礎とトレンド
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スマートホームの概念

スマートホーム

上の図は、スマートホームの概念を示したものだ。

発電所から送電された電気が家に来る。最近の住宅では、送電された電気だけでなく、ソーラー発電も活用して電力供給を得ている。

さらに、EV(電気自動車)が普及すると、EVの中にある電池に蓄積された電力を、地震などの緊急事態の際に、家の電力として利用するということが考えられる。

こうした、3つの方向から得られる電力と、家ナカ家電などが使う電力を総合的に可視化し、管理するものが「HEMS」となる。

HEMS(Home Energy Management System ホーム エネルギー マネジメント システム)

HEMSは、家電や、電気自動車(EV)、太陽光発電から得た電力を家ナカの電気設備とつないで、電気やガスの使用量をモニターなどで見える化したり、制御をしたりするものだ。

さらに、スマートメーターは、家庭内の電力使用量を電力会社に伝える役割を果たしている。

政府は2030年までにすべての住まいにHEMSを設置することを目指している。

HEMS
HEMSのイメージ。現在ではホームコントロール機能が搭載されているものも多い。

スマート家電

スマート家電は、AIエアコン、AI掃除ロボット、AI冷蔵庫、AIスピーカー、スマート電球、スマートプラグ、スマートロックなどさまざまなモノがある。

一般的な家電と異なるところは、インテリジェントであったり、インターネットやAIスピーカーなどと接続することで、他の家電と連携して動作をしたり、制御されたりするというところだ。

さまざまなスマート家電が登場してきたこともあり、住宅メーカーがスマートホームをはじめからイメージした設備を整えている場合も出てきている。

ロボット掃除機
ロボット掃除機
スマートスピーカー
スマートスピーカー

外部サービス事業者との連携

また、スマート家電や、家ナカに設置された温湿度など各種センサーやカメラが、家ナカの状態を監視し、ホームゲートウエイを通じてインターネット経由で、さまざまなサードパディのサービスやSaaSと接続することで、「見守り」や「ヘルスケア」「ホームセキュリティ」、「宅配」などのサービスと連携し出している。

つまり、単純なデバイスの進化というテクノロジーの側面だけでなく、さまざまなプレーヤーが生み出す、新しい「エコシステム」が登場しているとも言えるのだ。

スマートホームの価値進化

スマートホームの歴史を振り返ってみると、3つのステージが存在することがわかる。下の図で、黄色い部分はスマートデバイスに関する内容で、緑色の部分はエネルギーに関する内容だ。

スマートホームの価値進化

フェーズ1:可視化、遠隔操作

1段階目が、「可視化、遠隔操作」の段階だ。

この頃のスマートホームは、デバイス単体がスマートフォンに接続する程度のものが多かった。代表的なデバイスとしては、フィリップスの「Hue」という電灯がある。

Hueは、スマートフォンと接続し、その管理アプリからライトの色を変えたり、することができる。接続もBluetooth Low Energy(BLE)で接続するタイプであった。

スマートデバイスの草分け的存在 「Hue」

この頃、さまざまなデバイスがスマートフォンと接続することで、デバイスの状態を可視化したり、遠隔操作したりできるようになった。

メーカーからしても、デバイスのコントロールのためのアプリケーションをハードウエアやリモコンに搭載する必要がなくなるため、コスト削減効果も見込まれ、一気に「コネクテッド・デバイス」が登場した。

一方、エネルギーに関しては、電力供給状況や、利用状況をHEMSによって可視化できる程度で、それを見て自分で節電を行うといった程度の対応しかできない状況であった。

フェーズ2:IoTによるデバイス間連携

その後、デバイスは、Amazon Echoのようなスマートスピーカーや、ホームゲートウエイにネットワーク的に接続し、こういった「ハブ」の役割をするデバイスが、コネクテッド・デバイスを統合的にコントロールするという流れが生まれた。

しかし、単に最新のデジタル技術を使うだけでは、生活者にとってのメリットを訴求することが難しく、「なんでも音声応答」「なんでもAI」という流れは、短期間で終了し、必要な箇所で利用される流れとなった。

そして、機械学習ブームに端を発するAIブームが、デバイスのインテリジェント化を推し進めることとなった。

結果、IoTデバイスを活用した子どもや高齢者の見守りサービスや、スマートスピーカーによる音声でモノを購入できる買い物の一部自律化、電気自動車に蓄えられた電力を家庭用に有効活用するV2H(Vehicle to Home)など、単体のデバイスの制御から発展し、利用者の生活を助けるようなサービスが登場した。

エネルギーコントロールに関しても、生活行動をセンシングし、AIが居住状況を判断することで、温湿度を適切な状態に保つようなサービスも登場した。

さらに、こういったインテリジェントなデバイスが複数連携することで、更なる価値も生み出されることになる。

例えば、カメラやスマートロックで在宅状況を把握し、在宅時には空調を動かすといった複数のデバイスが連携したサービスの実現などがある。

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スマートホームは、こういった、個別のデバイスの進化だけでなく、デバイスが複合的に状況をセンシングすることで、「次に人が何を望むか」先読みし、新たな製品やサービス提供につなげるビジネスが広がっていくものになっていく。

スマートホームのプレーヤー

こういう機運を感じたからか、上図のように、さまざまなプレーヤーがスマートホーム関連市場に参入している。

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フェーズ3:社会問題の解決へ

Amazonは2013年、生活者がサイトで商品を購入する前に、買い物する商品を予測し、家まで届けようとする「予測発送」の特許をアメリカで取得した。その後、予測配送はまだ日本では実装されていないが、2021年、過去のデータを利用して、在宅の可能性が高い曜日や時間を自動で予測し、配達するというサービスをはじめた。

これにより、荷物を受け取れる確率が高くなるという生活者の利便性に加え、再配達を減らすことで物流業の負担軽減、CO2の削減にもつながるという。

ここまで自動化しようと思うと、当然過去データであったり、現在の家ナカ状況のセンシングといったことが必須となる。

データに関していうと、さまざまなデバイスが取得するデータを、クラウドにアップロードしてしまえば、クラウド間のデータ連携はもはや当たり前とも言えるレベルで実現可能だ。

そして、ロボティクスの進化によって、物流のラストワンマイル問題も解決されるとされているが、配送ロボットが家まできた時、いったいどうやって受け取るのか、といった問題が顕在化している。

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これは、人材不足という、社会問題の解決を実現する為にロボット配送による自動化をすすめようとしても、その一方で、家の方がロボット配送に最適化されていない状況であるということを伺わせる。そして、こういった片手落ちな状況というのは、そこここで見ることができるのだ。

スマートホームが家ナカに限らず、家の外にあるさまざまなサービスと連携することで、大きな価値が生まれることがイメージできる一方で、建物や道路、法律といった、物理的なものや社会インフラの整備が必要な要素が多く、社会問題を解決するスマートホームの登場には、しばらくの時間がかかりそうだとも言える。

しかし、その可能性は大きく、すでにさまざまな形で実験と実用化が始まっている。

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スマートホームの未来

現在、社会問題を解決したり、高度なテクノロジーによって我々の生活を快適にする取り組みが進んでいるわけだが、その一方で、競争軸が「デバイスの高度化」から、「ニーズの先読み」に移っている。

こういった局面では、同業他社や異業種間で、デバイス・サービスのリアルデータの「集約・共有・分析」が可能になる環境を整備することで、新たなサービス・製品につなげることが重要になる。

今後、スマートホームから収集可能なデータを集め、少子高齢化、働き方改革、リコール対策、家電リサイクルなど、社会課題を解決するソリューションが増えることが想定される。

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