最小限のセンサーだけを入れることで、なるべく小さいモジュールを実現する”BlueNinja” - Cerevo開発者インタビュー

DMM.make AKIBAのPCBA(Printed Circuit Board Assembly)基板実装ルームで量産された、IoT製品を作ることができるCerevoの超小型モジュールBlueNinja。

IoT製品に使える小型モジュールというと、ユカイ工学のKoshianやアルプスのIoT Smart Module 開発キットなどがあるが、BlueNinjaは何が特徴的なのか。

株式会社Cerevoの電気エンジニアの矢野元章さんと、組込みソフトウェアエンジニアの奥原史至さん、セールス・マーケティング・広報 甲斐祐樹さんにお話を伺った。

左:IoTNEWS代表 小泉耕二/右手前:電気エンジニアの矢野元章さん、右中央:組込みソフトウェアエンジニアの奥原史至さん、右奥:セールス・マーケティング・広報 甲斐祐樹さん
左:IoTNEWS代表 小泉耕二/右手前:電気エンジニアの矢野元章さん、右中央:組込みソフトウェアエンジニアの奥原史至さん、右奥:セールス・マーケティング・広報 甲斐祐樹さん

BlueNinjaは、ソフトウェア開発に集中できるために作った

-そもそもなぜBlueNinjaを作ろうと思われたのでしょうか。

矢野さん(以下、矢野) ハードウェアを設計する人の目線に立った時に、基板は色々な要素があります。大きく分けて電源、処理をするCPU、センサーという3つの要素があるのですが、これからはじめようという人が全てを一人で用意するのは非常に難しいと思っていました。

そういう背景があり、「ハードウェアの基本的なところは、別の出来合いのモノを買ってきて、ソフトウェアの方で差別化をしたい」という要望をお応えするためにBlueNinjaを作りました。

株式会社Cerevo 電気エンジニア 矢野元章さん
株式会社Cerevo 電気エンジニア 矢野元章さん

-BlueNinjaの機能は、9軸センサーと加速度センサーがついています。つけようと思えば様々なセンサーがつけられると思いますが、絞られた理由を教えてください

矢野 装置の中に入れるセンサーとしては、9軸センサー(加速度、角速度、地磁気)と気圧センサーの2つが限界といいますか、実用的に考えるとそのあたりだろうと考えました。

例えば温度や湿度のセンサーを入れると、装置の中の温度や湿度をはかってしまう。それではあまり意味がないので、外しました。現状、BlueNinjaの中に入っているのは、装置の中に入れていても使えるセンサー、これを選定しています。

-そういう根拠があったのですね。

矢野 いわゆるスマートフォンに入っているセンサーというのが、おおむね加速度や地磁気、場合によっては気圧センサーが入っていますが、実際はその程度ですので、ポータブルな製品を作るにあたって必要なパラメーターといったらその点ではないかということで、選んだのはこの2つのセンサーになっています。

 

-BlueNinjaの反響はどうですか。

奥原さん(以下、奥原) 24時間でファーストロットが完売というのは、良かったと思います。

甲斐さん(以下、甲斐) 発売時の週末のメーカーフェアに向けて潤沢に用意していたつもりなのですが、想像以上の反響で嬉しい誤算でした。

株式会社Cerevo 組込みソフトウェアエンジニア 奥原史至さん
株式会社Cerevo 組込みソフトウェアエンジニア 奥原史至さん

 

開発スピードをあげるブレイクアウトボード

-BlueNinjaを購入すると2つ部品がついています。それぞれ何の部品なのか教えていただけますか。

向かって左からBlueNinja(型名CDP-TZ01B)、ブレイクアウトボード
向かって左からBlueNinja(型名CDP-TZ01B)、ブレイクアウトボード

矢野 ひとつは、BlueNinja本体(正式な型名はCDP-TZ01B)、もうひとつは、ブレイクアウトボードと言われている部品です。BlueNinja本体そのままですと、コネクターが非常に小さいということもあって、開発が非常に難しいという課題がありました。BlueNinja本体にプログラムを書き込むためにも基板を起こさないといけないという欠点がありますので、書き込みができるブレイクアウトボードというものをお付けしています。

あとは、I/O(アイオー)ですね、他にもセンサーを繋ぎたいといった場合は、外に繋がるようなI/Oを準備して、しかも書き込み機能までついています。

奥原 BlueNinjaで作ったサンプルは、こういったものになります。

BlueNinja
左から、スピーカー(黒い装置)、BlueNinja、ブレイクアウトボード、ディスプレイ、電池

スマートフォンからBluetoothで接続してメッセージを送ると、ディスプレイの表示が変わるというシンプルなものですが、スマートフォンからBlueNinjaを通じて周りのものをコントロールするといったモノが、僕のようにソフトウェアを専門にしている人間、ハードウェアの基板を作ることができないという人でもプロトタイプとして簡単に作ることができます。

-ブレイクアウトボードがなかったら、どうなるのでしょうか?

矢野 ブレイクアウトボードがなかった場合は、自分で基板を1から設計して、書き込みの機能を外に用意しないといけないので、書き込む用の回路を買ってきて、繋ぐための基板を作らなければいけません。

甲斐 実際に動作するときは、ブレイクアウトボードは必ずしも使う必要はありませんが、プログラムを書き込むために使います。基本的には開発キットとして2つセットで使っていただいて、製品自体はBlueNinjaだけでお使いいただけます。温度などの他のセンサーを使いたいとなったら、ブレイクアウトボードを使っていただくか、別途基板を作成する必要になります。

-こちらは何でしょうか。

BlueNinja

これは、真空管を使ったスマートウォッチの試作品です。電池があまり持たないので10秒で消えるようになっています。

BlueNinja

-先ほど開発が比較的容易だという話があったのですが、開発言語は何をお使いですか?

奥原 現在開発言語としては、C言語を使っています。ベースは元々東芝で配布しているTZ1001というマイコンの開発キットをベースに、BlueNinjaのセンサーを使うためのドライバー類やユーティリティを一緒にしてという形で配布している状態です。

開発環境としてはGCCがあればよいので、そちらの環境の作り方も弊社のサイトに掲載しております。入口のハードルを低くすることで、より多くの方に手に取っていただいて、チャレンジするエントリーの部分で使っていただきたいなと思っています。

ソフトウェアに関しては、まだまだ試行錯誤でもっと使いやすくしていきたいですし、もう少し気楽に使えるものを徐々に用意したり、作例を用意したり、使っていただいた方からフィードバックをいただきたいなと思っています。ぜひみんなで盛り上げていきたいと考えています。

また、弊社で作ったものはなるべくできる限り公開して、オープンソースとしてGitHubにあげることも検討しています。

-楽しみにしています。こちらはミニ四駆ですね。

BlueNinja

奥原 これは、ミニ四駆の動きがスマートフォンで表示されるものになります。加速度センサー、ジャイロセンサーを検知し、今どういう方向に動いているかというのが、スマートフォン上のグラフでわかるようになっています。

IMG_9564

甲斐 BlueNinja自体はインターネットに繋がっていないので、データを取得して、ここからBluetoothを通じて、アプリ側に情報が届きます。さらに、取得したセンサー情報をクラウドに送信したい場合は、スマートフォンを経由して送ることも可能です。

 

BlueNinjaの今後

-BlueNinjaに簡単な通信機器を繋ぐ予定はないのでしょうか。

奥原 将来的にはあり得ます。BlueNinja自体はCerevo Maker series第2弾なのですが、第1弾としてはWi-Fiのモジュールを出していますので、そちらと組み合わせた作例は用意していきたいなと思っています。

-これから先、IoT的な発展性は何かありますか?

甲斐 製品を多く作るというよりは、BlueNinjaをもっと使いやすくしたり、様々なプログラムのサンプルを出していったり、ブログなどで使い方を掲載したり、ワークショップを開催したり、というところを強化していきたいと思っています。

株式会社Cerevo セールス・マーケティング・広報 甲斐祐樹さん
株式会社Cerevo セールス・マーケティング・広報 甲斐祐樹さん

-製品を作る際に、軽量にどう作るのかというのと、チップ側にどれくらいのプラグラムを載せて、インターネット側にどれくらいの処理をさせるかというのは課題になります。通信モジュールが繋がってくる世界が、すごく気になります。全部載せるとせっかく小さく作ったものが大きくなってしまいます。

奥原 IoT全体のシステムとして考えた場合、BlueNinjaの位置づけは末端のデバイスというよりは、ノードに当たる部分にあたり、ノードとしては非常に十分な性能があります。そして、情報を収集するゲートウェイでインターネットにあげてサーバー処理をします。役割がそれぞれあるので、BlueNinjaはノードに当たるもの、とイメージしていただければ無理がないかなと思います。

-今度の展望を教えてください。

矢野 BlueNinjaを使った製品も作っていきたいと思っています。

個人的には、このBlueNinjaとGPSとSDカードだけ載った基板を作って、加速度や気圧をSDカードに溜めていき、電池が入っている間はずっとログを取り続けるという、航空の模型関係を趣味にしている方に人気がある製品を作りたいと思っています。

こういう製品は欲しいという方が多くて、巷にも売っているのですが、高かったり売り切れてほとんど買えないということもあるので、BlueNinjaを応用して開発していこうかなと思っています。

奥原 ハードウェアはここまでできているので、やはりソフトウェアで価値をつけていただきたいと思っています。

よりカジュアルに試せるものから、本格的にやりこめるものまでソフトウェアでバックアップし、みなさんと一緒に知恵を集めたら面白いものができると思うので、ぜひフィードバックをいただきながら良いものを作っていきたいと思っています。

BlueNinja

-本日はありがとうございました。

 

BlueNinjaは初期ロットから売り切れるという人気ぶりだが、これだけあっても何かができるわけではない。小さいことを活かして、例えば模型の飛行機や小型ドローンに乗せて空の上から情報を収集する、すでにある子供のおもちゃをインテリジェントにする、など、工夫をすれば利用の可能性は広がるだろう。

技術情報もオープンにして、使いながらよくしてくというアプローチをとっているBlueNinja。興味をもったらFacebook等で最新情報を提供しているということなので、ぜひアクセスしてみてほしい。

【関連リンク】
BlueNinja
株式会社Cerevo

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