株式会社Synamon(シナモン)は、VR空間構築ソリューションの開発・提供を行う会社だ。ハノーバーメッセ2018で高い技術力を発揮していた同社の詳細を知るべく、日本で追加取材を行った。後編の記事をお届けする。
Synamon(シナモン)Co-Founder/CEO 武樋 恒氏
株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二
3D CADとVR、設計思想の違い
小泉: 3D CADの会社がこの業界にこぞって参入してきています。3D CADはすでにデータがあるので、VRと相性がいいですよね。コンバーターみたいなものをかませればきっとできる、と彼らは考えていると思います。御社0から作っているのでしょうか。
武樋: CADモデルはそのままVRでは使えないことが多いです。VR制作に使う3Dモデルは基本的にはゲームなどに使う様なモデルになるので、設計の思想が違います。
われわれのシステム自体はUnityで作っており、その裏側は今だとFBXという形式です。このモデル形式にするためにCADデータから変換しなければいけないのですが、今回のハノーバーメッセでの展示は単純にCADから変換するといいものができなかったので、CADデータを元にしながらも、基本的に一から3Dモデルを作り、空間を作りました。
小泉: CADをコンバートすればいいというのは、実際は簡単ではないということですか。
武樋: そういう部分はあります。形はある程度はできますが、質感などはなかなか再現できません。
小泉: たしかに他社のVRを見た際、質感がおもちゃっぽいなと思いました。
武樋: コンバーターで変換すると、そこまでしかできません。CADから変換すると、ポリゴン(多角形)数が非常に多いので、ひとつのCADデータを表示するだけならいいのですが、空間を作ろうとすると動作がうまくいかないこともあります。
小泉: 空間にオブジェクトが多くなるとポリゴン数が増えるからガクガクする、というのは処理が追い付かないということですか?
武樋: そうです。
小泉: ゲームの場合はどうしているのでしょうか。
武樋: うまくごまかす場合や、処理しないように調整をしています。ゲーム用CGとCADは考え方が違います。CADはポリゴンの考え方ではなく、長さやどういうアールがかかっていくかという設計の思想です。3DCGの場合は、イラストやデザインを立体化させるなどというような芸術の思想なのです。
小泉: 立体だから同じというわけではないのですね。

武樋: そうなのです。だからクリエイターはみんな変換で困っているのですが、お客さまにはなかなかご理解いただけないところなのです。弊社の強みは、3Dのディレクターや3Dのエンジニア、モデルを作るメンバーがいるので、すべての機能開発を内製しているところです。だからここまでの質感を作ることができ、VRにまとめることができています。
小泉: もともとゲームを作っていたというのも強いのかもしれないですね。工場ひとつとっても、どういう世界観にするかというのを考えられるのでしょうから。
武樋: 『絵作り』というのですが、空間の絵をどう再現するかが大事です。ゲームでは暗いシーンをどう雰囲気を出すか、というのを3Dでしっかり再現しないと空間は作れません。その強みを生かしました。
小泉: Daydream ViewやOculus GO、Samsung GearなどさまざまなVRありますが、それぞれ出力形式が違うのでしょうか。
武樋: 3Dは3Dですが、動いているものがスマートフォンかPCかで違います。質感の表現がスマホではできないけどPCではできたり、その逆もあったり、その違いが大きくあります。昔でいうと、Mac用かWindows用かくらいの、いやそれ以上の違いがあります。
小泉: はじめの段階で、きちんと何をどういうシーンで誰に伝えたいかをハッキリさせないと、機材の選択もできないですね。
武樋: おっしゃるとおりです。さまざまな分岐点や要素が絡んでくるので、弊社はコンサルティングから入らせていただくこともあります。VRをさわったことがある人も少ないので、これができてこれができないとか、簡単だと思っていたら意外と難しいとか、想定していたものができなかったということが往々にしてあります。

Synamon社が提供する、VR空間で遠隔会議ができるビジネスツール 『NEUTRANS BIZ』
小泉: 『NEUTRANS BIZ』について教えてください。
武樋: 『NEUTRANS BIZ』は、東京と大阪間でなど遠隔からでも複数人が同時にオンライン上のVR空間に接続し、物体や空間のビジュアルデータを共有しながらコミュニケーションを行うことで、ブレインストーミングなどの創造的な対話をより活性化し、テレビ会議にはない臨場感の中で意思決定を可能にする次世代のコラボレーションツールです。こういうことができる仕組みは世の中にまだあまりないと思います。
武樋: NEUTRANS BIZは、直観的にすぐ操作できるのが強みで、はじめて触った人でもVR空間でペンを持って空中に3Dで絵を描くこともできます。文字も確認することができるので、大阪にライターがいる場合に、記事を出してお互い添削しあうことができます。
カメラを持って撮影すると、VR空間の中で写真や動画も撮ることができ、背景を宇宙やシティなどに変更することができます。
小泉: はじめて使いましたが、すごく使いやすいですね。
武樋: 弊社の強みがUI、UXの部分ですので、かなりこだわっています。若い方であればすぐに感覚を掴んでいただけると思いますが、決裁者は年配の方であることが多いので、そういった方でもある程度わかっていただけるように、VRっぽさを全面にするのではなくあえて現実っぽくしています。

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