近年、畜産農家では高齢化による人手不足などが課題となっており、人手をかけず家畜の健康・安全を管理する手法への需要が高まっている。また、子牛や子豚などの家畜の死亡率は出生数全体の約1割に及び、様々なストレスに起因する疾病が原因と考えられている。そのため獣医師の巡回診療に加え畜産農家自身により常時、家畜の健康管理ができる仕組みが求められている。
凸版印刷株式会社、ホシデン株式会社、日本全薬工業株式会社は3社共同で、飼育場所に作業者がいなくても、PCやスマートフォンなどから遠隔地で家畜の状態を常時管理できる「家畜健康管理サービス」の開発に向けて実証実験を開始する。
同実証実験は、株式会社トータルハードマネージメントサービス協力のもと、北海道野付郡の牧場であるトータルハードカーフサービスで、2019年5月下旬から子牛の飼育における同サービスの実証に向けての検討を開始し、本格的な実証実験が2019年夏から行われる。
同サービスは、凸版印刷が提供する位置情報とネットワークカメラの映像データによる労務管理と、生体センサー連携によるデータ取得で作業員の健康状態を把握できる「ID-Watchy Bio」を活用したものだ。
実証実験では、「ID-Watchy Bio」の機能である生体センサー「MEDiTAG」の装着器を家畜専用に改良し、実証対象の子牛の足や首へ装着することで家畜のストレスなどの生体情報(パルス※・転倒検知・ストレスレベル・歩数検知)の常時取得と可視化を検証し、飼育場所に設置した1台のネットワークカメラから、リアルタイムで映像と生体情報を連動させて、体調急変などの早期発見を目指す。
また日本全薬工業が動物用医薬品の研究開発などで培ったノウハウを活かして、家畜の活動状況と生体情報を連携させた取得データの分析を実施する。具体的には、トラクターの走行音で牛のストレスレベルが上昇するなど活動状況と生体情報が連携した健康状態を把握することで、飼育環境や状況に配慮した家畜の健康・安全管理の実現に貢献する。
今後、3社は同サービスの実用化に向けた技術検証を進め、豚などへの展開も検討し、畜産農家へ向けて日本全薬工業から2020年春の商品化を目指すとした。
※パルスは拍数/分を推定、算出する。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。