IDC Japan株式会社は、国内でIoT事業を推進するベンダー/企業の「データエコシステム」に対する取り組み状況の調査結果を発表した。
「データエコシステム」とは、企業がIoTプラットフォームを通じて収集するIoTデータや、基幹系システムなどに蓄積しているデータなど、企業内部におけるさまざまな1stパーティデータを、外部の2ndパーティ/3rdパーティデータと掛け合わせ、あらたなビジネスモデル/収益モデルを創出すべく形成するステークホルダーの集合体だと、IDCでは定義している。
同調査結果によると、全世界のIoT機器の普及台数は2018年には228億台で、2025年に416億台に達する。また、IoT機器が年間に生成するIoTデータの総量も2018年は13.6兆ギガバイトであったが、2025年に、79.4兆ギガバイトに達するとIDCでは予測している(トップ画像参照)。
こうした高い成長が見込まれる市場に対し、さまざまなベンダーがIoTプラットフォームを基軸としてソリューションの提供を開始している。昨今では、IoTで共通的に使われる汎用機能の多くはあらゆるIoTプラットフォーム上に標準的に実装されつつあり、「IoTプラットフォームの機能」のみでソリューションの差別化を行うことは難しくなってきている。
したがって、ベンダーの多くは新たな差別化要素を模索すべく、「用途/シナリオ特化型IoTソリューション」と「共創を支える人材/組織変革」の2つの領域における取り組みを強化している。
しかし、そうした新たな差別化戦略により、企業のIoTの活用が広がっても、そこで活用されるデータが企業の特定部門にサイロ化されていては、大きなビジネス価値を生み出すのは困難と言える。IoTの生み出す価値を最大化する上では、企業内部のデータに対して企業外部のデータを可能な限り組み合わせて活用すべく「データエコシステム」を形成することが必須だとIDCではみている。
データエコシステムを構成する要素の中で、企業が外部データの活用を推進するためのソリューション/活動として「データ取引基盤」「データ流通推進活動」「Data as a Service」の3つが広がりつつある。
こうしたソリューションや活動が拡大する中、短期/中期的には、IoTデータをオンライン/オフラインマーケティングのデータと共に取引/流通することで、企業がCX(Customer Experience)を飛躍的に向上させる事例が急速に増加し、データエコシステム市場の成長を牽引すると見込まれる。
またIDCでは、企業のIoTを活用したビジネス競争がレッドオーシャン化する一方、外部データを活用して新市場を創造するデータエコシステムでは、ブルーオーシャンが広がっているとみている。ビジネス競争の土俵がブルーオーシャンにシフトしつつあることを各企業が認識し、マインドセットを切り替えることが、データエコシステム市場のさらなる成長に向け必須になると見込まれている。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストである鳥巣 悠太氏は「ベンダーは用途/シナリオ特化型IoTソリューションの提供や、企業との共創活動を、データエコシステム形成を前提として進めるべき」と語った。
続けて、「ベンダーはIoTに取り組む企業の経営層のビジョンやマインドセットを見極め、啓蒙活動やコンサルティングを通じ、データエコシステムの世界に引き上げる努力を進めるべきである」と述べた。
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