2019年9月18日~19日に上海にてダッソー・システムズのイベント「Manufacturing in the Age of Experience」が開催された。
本稿では、CCIDコンサルティングのアナリストであるワンユンホウ氏(トップ画像)による講演「The Development of China’s Industrial Software Market」について紹介する。
産業用のインターネットというコンセプト
ワン氏は、「新しいデジタル経済の時代が始まってきている」と述べた上で、ソフトウェアがツールとして役割を果たし、多くの産業で使われているとした。
その中で、産業用のインターネットというものが、新しいコンセプトとして、デジタル経済の中で現れてきている。
産業用のインターネットには、4つのレイヤーがあり、その中に産業用ソフトウェアが含まれる。産業用ソフトウェアも、4つのレイヤーに分かれている。
- CADやPLMといった、R&Dとしてのデザインソフトウェア。
- ERPやBIといった、情報マネジメントシステム。
- EMSやSCADAといった、生産のプロセスに焦点を当てた、生産コントロールのシステム。
- PLCやPDAといった、組み込み型のシステム。
という4つのレイヤーによって、産業用ソフトウェアを語ることができるとした。
産業用ソフトウェアのマーケットと中国の立ち位置
産業用ソフトウェアのマーケットでは、北アメリカやヨーロッパといったグローバルのシェアが大きく占めている中、アジアもシェアを伸ばしている。なかでも中国の成長率はトップである。
この成長の背景には、過去20年で製造業としての地位を高めており、製造業界をリードしているという状況がある。CRRCやFAW といった中国企業の影響もあるのだという。
また、中国政府がインテリジェントな製造に取り組んでいるため、企業に対して支援を行い、特定の目標を定めている。こういった政策の影響もあり、大きな市場へと発展していると述べた。
中国国内のマーケット
中国国内のマーケットのセグメントとしては、組み込み型のソフトウェアが半分以上を占め、中国の企業がハードウェアにフォーカスをあてていることが言える。
まだR&Dのソフトウェアは10%以下のシェアであるが、その背後にある価値が重要であると分析した。R&Dが製品にとって重要なものであるからだ。
R&Dのソフトウェアにおける勢力図を見ると、ダッソー・システムズやシーメンス、オートデスクといった海外企業が中国国内でのマーケットをリードしている。
中国国内の製品は、軍や航空宇宙といった分野で発展は早いが、外資の競合に追いつくのは遠く厳しい状況と語った。
中国の製造業の分析
産業用ソフトウェアのマーケットは中国の製造業に依拠するものだ。そこで、中国の製造業における分析を行ったという。
強みとしては、様々なカテゴリの産業を広く行っていること、サプライチェーンの高い効率性に加え、新しいテクノロジーを、ヨーロッパや北アメリカよりも早く使用できることを挙げた。
弱みとしては、労働力や原材料のコスト増加や、生産過剰、デジタル化のプロセスの基礎が弱いことがある。
機会としては、ITとOTの連携や、サステナビリティに関するエネルギーや水、空気の清浄化といった様々な新しい産業があるとした。
脅威は、貿易摩擦による不安定な市場や、アメリカやヨーロッパでのマーケットなどを挙げた。
中国マーケットの成長への期待
本イベントで紹介されたような、インテリジェントな工場やコラボレーションシステムなど、産業のデジタル化はまだまだ日常化されていないとした上で、中国のマーケットは早い成長を期待されると語った。
理由はいくつかある。
ひとつは、CEOやCIOといった意思決定者が、デジタルの変革が成功のための唯一の道だと考えて始めていることだ。これはITへの投資の時に重要なポイントになる。
さらに、中国政府が産業用ソフトウェアの適用を奨励しており、インテリジェントな製造を中国全体で進めようとしていることもある。
IoTやAI、クラウドといった新しいテクノロジーが新しいビジネスモデルをもたらし、産業用ソフトウェアの発展に重要になると述べた。
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大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。