近年、建設業界では恒常的な人手不足が大きな問題とされており、労働環境を向上することで多くの人材を集めることが課題となっている。
一方で、建設業界では労働災害発生数が多く、全産業における建設業の死亡災害は全体の34%を占めている。死亡・死傷災害の原因を見ると「墜落・転落」が最多となっている。
こうした事故に関しては、厚生労働省は保護具の使用徹底による墜落転落の防止を図っている。しかし国土交通省の調査によると、墜落事故における保護具の使用状況は「安全帯を装着したが未使用」が66.7%となっていることが分かっている。
日本電気株式会社(以下、NEC)と建設・IT関連企業で構成するワーキンググループでは、5Gを活用した建設現場の安全性向上への取り組みの第一弾として、高所作業時の墜落防止に必須である安全帯の使用を促進するシステムを共同で開発し実証実験を行った。
実証実験で用いたシステムでは、高所作業場所にサインビーコン、作業員のヘルメットに振動ビーコンを設置し、作業者が所定の高所作業場所に入ると振動によるアラートで安全帯の使用を促す仕組みになっている。また、安全帯のフックにはセンサーを取り付け、フックを掛けることでアラートが停止する。
フックの使用状況や作業員の位置情報は無線ネットワークによって常時サーバに送られるため、現場責任者は管理画面で安全帯の使用状況をリアルタイムに確認でき、蓄積されたデータを用いて作業場全体の安全帯使用状況を分析することができる。
同実証実験は、2020年3月にNECネッツエスアイ株式会社の研修施設内の鉄塔を用いて行われ、アラートによる作業員への安全帯使用の通知や、無線ネットワークを通じた使用状況の確認やデータ化などを実施した。
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大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。