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2016年に著しい成長を見せたコネクテッドカーだが、その発展を最も妨げると思われたのは標準化への対応不足だ。ほとんどの企業が標準化の必要性に賛成しながら、標準化の方法を統一してこなかったからだ。各メーカーが、それぞれ独自の技術を標準として採用してほしいので、今まで妥協を達成するのは難しかったという。
技術課題以外でも、IoT全体は抱えているセキュリティと個人情報保護の問題はコネクテッドカーにも重要だが、それ自体を決定する権威は政府機関にしかない。ここで欧州委員会(Eurocommission)はコネクテッドカーが欧州経済にとって大きな利益をもたらす可能性を認め、ビジネスチャンスを見逃せないように動き出した。
コネクテッドカーの展開を加速するため, 欧州委員会は2016年11月末に自律型・コネクテッド・共同するモビリティへの節目である「A European strategy on Cooperative Intelligent Transport Systems (C-ITS), a milestone initiative towards cooperative, connected and automated mobility」(共同インテリジェント交通システムにおける欧州戦略)を発表した。
現在の車両はすでにコネクテッドデバイスだが、クルマ対クルマ、さらにクルマ対道路インフラの通信が必要となってくるため、同戦略は2019年までにこの通信技術の実現を目指している。また、同技術は未来の自律走行車の交通システムに全面的な統合と安全のため、不可欠であるといえる。
道路利用者と交通管理者がデータ共有ができるようになると、走行中活動調整が可能になり、運転手が交通状況に早く順応し、正しい決断ができる。同技術の拡大で道路安全、交通の効率性や運転快適さの向上が期待されている。
2014年、欧州委員会はコネクテッドカーの運転にもっと影響を与える目的でC-ITSプラットホームという専門家グル―プを設立した。同プラットホームはEU内で相互運用可能なC-ITS技術を目指し、共有ビジョン構築を促し、国家当局、C-ITS関係者やEU委員会を繋ぐ協力フレームワークである。EXはC-ITSプラットホームが2016年1月に出した最終報告に基づき、C-ITS戦略を開発した。
*C-ITS:共同インテリジェント交通システム
欧州委員会は2019年にC-ITSサービス展開を目指し、その期日まで乗り越えなければいけない課題とその対策を同戦略に解説している。
同戦略の主な要素は下記の通りである:
1.EU市場の断片化を避けること
技術が急速に進化し続け、相当額が投資されている中、当技術に関するEUレベルの枠組が存在しない場合、全EUの相互運用性が不可能になる恐れがあると欧州委員会は判断した。
そこで、EU市場の断片化を避け、様々なイニシアティブのシナージーを生み出すため、同戦略がC-ITS技術の調整展開を提案している。サイバーセキュリティやデータ保護、あるいは相互運用性という課題へも取り組んでいおり、様々なレベルでの課題対応を 推奨提案している。
統合交通システムがそのコンポーネントの相互運用性に頼るということは、システムがインフラ、データ、サービス、アプリケーションやネットワークレベルで相互に作動することが重要だ。
標準化活動だけで相互運用性を達するのは難しいので、全EU仕様を定義し、プレーヤー全員が受け入れる必要があると欧州委員会 が決めた。そのため、C-ITSイニシアティブ展開に関する通信プロフィールの公開、またはそのプロフィールの相互運用性テスト開発が義務化されたということだ。
2.共通優先点の明確化とサポート
C-ITSサービスが社会やエンドユーザーに最大利益をもたらすため、幅広くて素早い展開が必要だと判断され、そのため、欧州委員会は優先展開技術リスト(いわゆるDay 1 C-ITS サービス)を採用した。
Day 1サービス展開に投資された資金は、将来に三倍の利益をもたらすと想定されているため、できるだけ数多くサービスを展開すると、さらに全体の有益性がネットワーク効果で上がる(初期の受け入れぺースが遅かったら、有益性も下がる)と考えられている。
ちなみに、Day 1サービスは大きく二つに分けられる:
1)危険位置のお知らせ(道路工事、天気状況、緊急車両接近など)と2)サイネージ適用(車内サイネージ、車内速度制限など)。
第二ステージで展開される技術は Day 1.5 C-ITS サービスと呼ばれ、一般的に成熟度が高い技術だと思われるが、2019年の大規模展開までに最終的な仕様や規準はまだ開発し終わらない技術だ。
Day 1.5 C-ITS サービスは次のサービスを含めている:給油ステーションや代替燃料充電ステーション案内、路上駐車管理、交通情報とスマートルート選択などが含まれる。
欧州委員会が提案している具体的な対策:EUメンバー国や公的機関ならびに自動車メーカー、道路管理組織やITS産業がC-ITSを展開し、せめてDay 1 C-ITSサービスを完備しなければいけない。欧州委員会はメンバー国や産業プレーヤ―を支援する方針だ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。