株式会社いずみホールディングス傘下の日本卸売市場株式会社は、北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)より「地域産学官AI/IoT実証モデル委託事業」を受託したはこだて未来大学などとともに、人工知能(AI)やIoTの活用により漁場・漁獲を予測するシステムの共同研究を開始すると発表した。
北海道において水産業は基幹産業の1つであり、2014年度の漁業・養殖業生産額は3,000億円、水産加工業出荷額は6,600億円規模に達している。しかし、漁獲量の減少や魚価の低迷など漁業経営環境は厳しくなってきており、漁業では網を揚げるまで漁獲がわからず、漁業者や流通事業者は、出漁、仕入れ・販売を計画的に行うことができず、経営の最適化が困難という課題があった。
はこだて未来大学は、北海道大学大学院情報科学研究科、室蘭工業大学、株式会社日立製作所と共同で、北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)より、「地域産学官AI/IoT実証モデル委託事業」を受託した。2017年6月から2018年3月まで、人工知能(AI)やIoTの活用により、漁場と漁獲を予測するシステムの共同研究を進め、同事業を通じて生産者である漁業者と流通事業者の経営の最適化を支援することにより、北海道における水産業の振興に貢献していく考えだ。
地域産学官AI/IoT実証モデル委託事業の取り組みでは、具体的に「漁場予測システム(※1)」と「漁獲予測システム(※2)」の研究を行うという。日本卸売市場は、いずみホールディングス傘下の水産卸業の持つノウハウをとりまとめ、はこだて未来大学などに対し研究をおこなう為に必要な情報や物流システムを提供し、水揚げされた商品などを販売する。そして、システムで用いられるデータのうち、「定置網に設置した魚群探知機の音響データ」を元にした「漁獲予測システム」に関しては、2018年3月に精度80%、実用化を目指すという。
「漁場予測システム」ならびに「漁獲予測システム」の実現により期待される効果は以下の通り。
- 漁業者の効率的な出漁計画立案、流通事業者の計画的な仕入れ・販売による利益率の向上
- 小型クロマグロなどの保護対象魚種の漁獲回避による資源保護
- 漁業者・流通事業者の経営の最適化
- 飲食店・量販店に対し、これまでより最大24時間早く出漁・仕入情報の提供が可能
※1 漁場予測システム
過去から現在に至る全国の水揚げデータをAIで分析することにより漁場を予測するシステム
※2 漁獲予測システム
IoTを活用し、定置網用の魚群探知機から得たデータをAIで分析、漁獲を予測するシステム
【関連リンク】
・いずみホールディングス
・日本卸売市場(NihonOroshiuriIchiba)
・ノーステック財団(NOASTEC)
・公立はこだて未来大学(FUTURE UNIVERSITY HAKODATE)
・北海道大学大学院情報科学研究科(Graduate School of Information Science and Technology Hokkaido University)
・室蘭工業大学(Muroran IT)
・日立(HITACHI)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。