加工用トマトの生産は、新興国を中心とした人口増加や経済成長に伴って今後も拡大が見込まれているが、持続可能なトマトの栽培には、生産者の減少や環境負荷低減への対応など様々な課題がある。
日本電気株式会社(以下、NEC)とカゴメ株式会社では、2015年から営農アドバイスの検証を開始して、2019年までにポルトガル、オーストラリア、アメリカなど様々な地域で実証に取り組んできた。2019年にポルトガルの圃場で行ったAI営農実証試験では、窒素肥料は一般平均量の約-20%の投入量で、ポルトガル全農家の平均収量の約1.3倍となる、ヘクタール当たり127トンの収穫量となり、熟練栽培者の栽培とほぼ同等の結果となった。
同サービスの事業化の目処がたったことから、今回、4月より、カゴメ社内に「スマートアグリ事業部」を新設し、主に欧州のトマト一次原料加工メーカーに向けて、AIを活用した営農支援事業を開始する。また、それに伴い両社は戦略的パートナーシップ契約を締結した。
同営農支援事業は、カゴメは主にトマト原料加工メーカーに対して、センサーや衛星写真によりトマトの生育状況や土壌の状態を手元のスマートデバイスで可視化するサービスと、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」を活用した営農アドバイスサービスを販売する。トマト一次加工品メーカーは両サービスを用いて、トマト生産者の営農支援実施を行うというビジネスモデルとなる。
同事業により、農家では、可視化サービスで広大な圃場の状況を「見える化」し、速やかに異常に気づくことができ、栽培リスクを低減できる。営農アドバイスサービスでは、熟練者のノウハウを習得したAIが水や肥料の最適な量と投入時期を指示するため、収穫量の安定化と栽培コストの低減が実現できる。また技術継承が容易となり、新規就農者を増やすことが出来る。
営農指導者にとっては、圃場が広大であっても、可視化サービスで異常が発生している箇所を的確に特定し、正確なデータに基づく指導ができる。営農アドバイスサービスにより、形式知化された営農支援ノウハウを利用することで、生産者への指導や営農指導者の育成に要する時間を減らすことができる。
また、トマト一次加工品メーカーにとっては、可視化サービスで自社圃場や契約農家の圃場でトマトの生育状況を網羅的に把握することができ、客観的なデータに基づいた全体最適な収穫調整により、生産性向上が図れる。営農アドバイスサービスでは、調達リスクの低減や投入資源の最小化を図ることで、安定的な調達と調達コストの低減を実現できる。
同事業は、将来的に日本市場での実用化も視野に入れており、2020年は国内のいくつかの産地で検証を実施する予定とした。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。