慶應義塾大学医学部坂口光洋記念講座(システム医学)の洪繁准教授、放射線科学(診断)の橋本正弘助教らの研究グループと富士通株式会社は、慶應義塾大学メディカルAIセンターにおいて、2018年1月から3つの研究テーマを掲げた臨床データのAI活用に向けた共同研究を開始し、研究テーマの1つである診療支援のためのAI技術を開発した。
同共同研究では、慶應義塾大学病院の診療記録、検体検査、画像検査、画像検査報告書などのさまざまな臨床データに対して、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を適用し、より良い医療の実現に向けた研究を行っている。
今回、放射線科医が読影(※1)した画像検査報告書に、自然言語処理と機械学習が可能なAI技術を適用し、入院などの要否を分類する学習済モデルを新たに開発。
入院や手術、他科への診療依頼などを助言する同研究の応用により、画像検査報告書などの内容からAIが緊急性を分析し、治療を優先すべき検査結果を主治医に通知する診療支援が可能だ。
慶應義塾大学医学部と富士通は、2020年までの共同研究において、同成果の精度をさらに高めるとともに、臨床データを時系列で解析することで、薬剤の副作用を回避する最適な服薬法を提案するシステムなどについても研究を進める。
適用・開発した技術の概要は以下の通りだ・
- 自然言語処理技術(適用):
放射線科医が読影した画像検査報告書のテキストデータを以下の技術の適用により解析し、機械学習に用いることのできる形式に変換する。- 医療分野特有の表記ゆれに対応:形態素解析(※2)エンジン、データクレンジング手法を適用。
- 症状の有無を文章の係り受け関係から判断し、そこから説明変数としてキーワードなどを抽出:富士通のAI技術および富士通と奈良先端科学技術大学院大学ソーシャル・コンピューティング研究室の共同研究により得られた技術を適用。
- 診療支援の学習済モデル(開発):
1.の技術で前処理した医師の所見と、それに対する入院依頼などに関する医師の対応について機械学習を適用し、新規の症例(入力データ)に対しどのような医師の対応が必要か分類する学習済モデルを開発。
今回開発された診療支援のためのAI技術は、画像検査報告書という実際の診療データの解析で、その有用性が確認された。今後は、さらに機械学習の精度を高め、医療現場での実用化に向けて検証を行うとともに、学習済モデルのAPI化を進めることで電子カルテシステムとの連携を図るという。
※1 読影:主治医から出された依頼(症状説明、病歴・家族歴など)をもとに、適正な検査(CT、MRI、超音波検査、一般撮影など)を判断し、その検査画像から画像診断を行い、今後の検査や治療方針の助言を行うこと。
※2 形態素解析:自然言語のテキストデータを、意味を持つ最小単位で分割すること。
提供:富士通
【関連リンク】
・メディカルAIセンター(K-MAIC)
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。