オークマ株式会社と日本電気株式会社(以下、NEC)はAI(ディープラーニング)を活用し工作機械が自律的にドリル加工の診断を行う技術「OSP-AI加工診断」を共同開発した。
「OSP-AI加工診断」は、OSP(※)に内蔵したAI技術により、ドリル加工の異常検知と工具摩耗の可視化をリアルタイムに行い、ドリル工具と工作物の損傷防止や工具費の大幅削減を実現するという。
オークマは、CNC装置を内製化する強みを活かし、工作機械の制御情報からリアルタイムに加工状態を得ることを可能にした。OSP上で実現するAIについて、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つである「RAPID機械学習技術」を用いて共同で開発した。
- ドリル加工の突発異常の検出
突発的に発生するドリル加工の異常を検出し、ドリル破損の前に加工を停止する。さらに、工作物からドリルを離す退避動作を併せて行い、工作物と工具のダメージを最小限とした(図1)。瞬間的な現象であるドリルの加工異常を制御装置の内部情報から瞬時に検知するために、高速な内部情報のデジタル処理技術の開発と、高速に高精度な診断を可能とするAI技術を開発した。 - ドリル加工の摩耗状態の可視化
OSP-AIにおいて、加工状態を分析することで、ドリル摩耗状態の可視化を実現。この可視化グラフをもとにドリルの交換タイミングを最適化し、工具費用の大幅削減を図ることができる。1.4倍の工具寿命の延長が可能となる場合もあるという(図2)。
- 汎用化したAIにより、様々なドリル加工条件への対応
自社工場をはじめとして、これまでに培った加工ノウハウと、様々な加工条件で取得したデータを適切に組み合わせた学習結果をOSP-AIに搭載。従来機能で必要であった主軸速度毎、送り軸速度毎の個別設定が不要で、簡単にAIを活用できる。
「OSP-AI加工診断」により以下の効果が得られる。
- 不具合工作物の削減
ドリルが突然破損すると、折れたドリルを工作物から取り外すことができなくなることがある。この場合、工作物の損失となって生産コストの増加につながる。同技術のドリル加工の異常検知で、突然のドリルの破損を防止し、生産コストの低減を実現する。 - 工具費の削減
ドリルの交換は、実際の寿命に対し安全を見越して行うため、寿命の6~7割で交換している実情がある。同技術によりドリルの摩耗状態を可視化することで、個々の寿命に近い工具の状態に応じて交換することができ、工具費用の削減を実現できる。 - AIによる容易な診断
「OSP-AI加工診断」では、様々な加工条件を学習させたAIとすることで、煩わしい準備・手順を不要とした。従来、加工状態を診断する機能は、予め作業者が正常時の加工を行い、異常と判断するしきい値を設定する準備が必要だった。
※ OSP(Okuma Sampling Path Control):オークマが開発した自社製の工作機械のNC装置。オークマは工作機械とNC装置の両方を製造する機電一体メーカー。
【関連リンク】
・オークマ(OKUMA)
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