近年、生産施設などにおいて自動化や省人化を推進するための産業用ロボットの需要が拡大している。しかし、ロボットを自律動作させるためには、作業内容を記録・学習する「ティーチング作業」に時間と費用がかかるため、普及が進みづらい状況にあった。特に、液体秤量は困難とされていた。
株式会社エクサウィザーズと大成建設株式会社は共同で、大成建設が開発した力触覚伝達型遠隔操作システムとエクサウィザーズが開発したマルチモーダルAIを組み合わせ、自律的な液体秤量作業に関するロボットアームの動作検証実験を行った。
マルチモーダルAIとは、人間の操作と同様の動作を行うために必要な複数のデータ要素をニューラルネットワークを用いて連動させ、これらの要素を一体化し、動作データとして認識させ、自らの判断による動作を可能とするAIである。
同検証実験では、ロボットアームが人間の操作と同様の動きを自律的に再現できることを検証するため、物体把持などの「力加減」を正確に伝える力触覚伝達提示デバイスを備えた人協働ロボット(操作側)とロボットアーム(遠隔側)を用い、広口瓶から一定量の液体をビーカーに注ぎ、液切りして瓶を元に戻すという一連の秤量作業について、以下のような手順で実施された。
- 上記作業におけるロボットアームの動作に関する各種データを、AIが学習するための元データとして連続的に記録・蓄積する「遠隔ダイレクトティーチング」を実施。
- データ形式の異なる動作に関する上記元データを「マルチモーダルAI」により一括学習し、一連の作業に関する学習モデルを構築。
- 学習モデルを用いて、ロボットアームが状況を判断して、自律的に液体秤量作業を行えるかを検証。
この液体秤量作業では、100パターン程度の連続取得したロボットアーム動作の各種データをAIが一括学習し、作業時の動作を制御する学習モデルに基づき、ロボットアームの自律動作が可能であることが確認された。これにより、ロボットアームによる一連の作業工程の自動化にかかる時間と費用の削減につながる。
今後、両社は、生産施設ほか様々な生産現場での同遠隔システムとマルチモーダルAIを活用したロボット自動化技術の実現に向け、関連技術開発と社会実装への取り組みを進める。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。