知的財産戦略本部は1月27日(水)、AIによって生み出される創作物の取扱いなどについて討議をする次世代知財システム検討委員会(第4回)を実施した。
AIは、音楽や絵画など比較的パターン化しやすい創作物から順に、人間の具体的な指示なしにAIが創作物を生み出すことができる状態に至る可能性があり、すでにこの段階に達している分野がある。
事例としては、スペインのマラガ大学が、作曲をする人工知能「ラムス(lamus)」を開発。アルゴリズムによりわずか8分で楽曲を自ら作成し、MP3や楽譜などの形式で書き出すことが可能。さらに、実際に作曲された楽曲をオーケストラが演奏したり、それを収録したCDや音源の販売もされている。
テイラーブランド社(米)は、人工知能によりロゴを自動的にデザインするサービスを提供。ロゴの文字や色、営んでいるビジネスの種類等の情報を入れると利用者に合ったロゴをわずか数分で生成可能。
日本事例としては、公立はこだて未来大学が、同大学の松原仁教授が中心となり、2012年9月より、作家星新一氏のショートショート作品を解析し、人工知能に面白いショートショートを創作させることを目指すプロジェクトを開始。
そして今週の1月27日に、小松左京作品の全テキストデータを同大学に提供している。
参照:小松左京作品の全テキストデータを人工知能研究に提供しました。
小松左京が長年取り組んだが、未完のまま遺作となったSF物語「虚無回廊」を、人工知能が読み解くことができれば、「より作者の意志にそった物語を創造することも可能なのではないか」と、小松左京ライブラリはAIによる物語の完結を期待するコメントしている。
現在、人工知能が自律的に生成した生成物について、現行制度上、権利の対象とは考えられていない。(人工知能をヒトが道具として利用した創作は、創作者であるヒトに権利が発生する)
自然人による創作物と、AI創作物を、外見上見分けることは困難で、人間より遥かに高い生産性で創作物を生成することが可能とも言われる。
その結果、人工知能を利用できる者(開発者、所有者等)による情報独占や、個人であるクリエーターの委縮・締め出しの懸念があり、AI創作物の知財制度上の取り扱いについて検討することとなった。
仮に、AI創作物に現行の著作権と同等の保護を付与すると考えた場合に、どのような問題が生じうるか、逆に一切の保護が要らないと考えた場合に、どのような問題が生じうるかなどを、2016年3月24日に報告書に取りまとめる予定だという。
詳細:知的財産戦略本部 次世代知財システム検討委員会(第4回)
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