クイズや、チェス、碁、将棋など、様々な頭脳ゲームでヒトを破り続けるAI。
画像認識や音声認識などのコグニティブの世界でも、様々な実用化のシーンが登場し、人ではできないことを着々と可能にしている。
そんなAIが、センター試験の英語筆記試験に挑戦したところ、200点満点中、185点を獲得したというのだ。
センター試験といえば選択式の試験なので、185点といっても、むしろ満点ではないのか?と思う方も多いはずだ。
センター試験ならではの難しさ
実はセンター試験だけでなく、学術テストにはいわゆる「ひっかけ問題」があったり「独特の回答形式」がある。今回の取り組みのすごいところは、こういったヒトでも間違えるようなことにも対応できていることだ。
具体的にどうすごいのかを解説する。
不要文除去問題への対策
これは、4つの文書があって、一つだけ関係ない文書が入っているので、それを見つけるというものだ。
例えば、
よい靴を選ぶポイントを挙げていく。
- 靴底は、歩くとき衝撃を吸収してくれる
- 靴の上部は、通気性があったほうが良い
- このブランドの革靴は流行のデザインで有名だ
- 靴選びにはサイズだけでなく、幅も見よう
よい靴は足の悩みを解決してくれる。
※実際は英語の例文
という例文があったら、迷わず3つ目を除去するだろう。
これをAIに学習させるのは簡単ではない。なぜなら、学習する文書としてはこの手の文書がほとんど存在しないからだ。
そこで、このAIを開発したNTTは、通常の文書をつかって、疑似的に不振全な流れの文書を作り、大量の不要文除去問題を作ることでこれを学習して正解を獲得したのだ。
[参考] NTT、AIが2019年センター試験英語筆記科目で185点を獲得段落タイトル付与問題への対応
これは、各文書の内容をつかみ、タイトルを選択肢から選ぶ問題だ。問題となる文書の内容を大雑把に把握し、文書の構造を理解することが重要になる。
これだけ聞くと簡単そうに感じるかもしれないが、試験問題では構造が複雑なものが出題される。
そこで、各段落とタイトルの選択肢の類似性を計算して回答へと導くのだ。
この努力は報われるのか?
一見するとセンター試験で高得点を取るAIを開発したところで、応用性もなく実用性に乏しいと感じるかもしれない。
しかし、我々の日常生活においては例えば「チラシの解釈」や「グラフの読解」、「会話の流れの理解」などはまだ十分に解釈ができているとは言えない。
つまり、こういった研究は、応用され、様々な場面での意味理解を実現するために使われていくのだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。