AIの画像認識と聞くと、難しいと感じる人が多いかもしれない。
実際にAIに興味があったり、自社に画像認識を導入したいと考えていたりしても、どうしたら画像認識を活用し成果を出せるようになるのか、画像認識について段階的に理解が深めるためにはどうしたら良いかということは、なかなか広まっていない。
「Vieurekaカメラ スターターキット」は、こうした問題を解決し、画像認識AIの開発フェーズの敷居を下げるために発売された。
本稿では、VieurekaPFを推進する、パナソニック株式会社イノベーション推進部門テクノロジー本部事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト総括担当 宮崎秋弘氏と、エッジコンピューティングPFプロジェクト主務 茶木健志郎氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)
開発環境を予め用意することで、画像認識で価値を生むことに集中してもらう

通常、画像認識を試そうと考えると、デバイスをどれにするか、ネットワークはどうするか、アプリケーションは何を使うか、などといった様々な検討事項があり、その1つ1つが画像認識をこれから始める人にとっては敷居が高い。
本来は、データを集めて、加工・分析して、何かしらの成果を出すということをやりたいはずなのに、環境を設定するのに苦戦してしまって、データを集める前に諦めてしまう人もいるだろう。
「Vieurekaカメラ スターターキット」では、デバイスであるカメラを始め、開発環境やサンプルアプリケーションなどを一括で提供している。購入し、同キットが手元に届いてから1時間もあれば、サンプルアプリケーションを使用して、カメラで撮影した映像がどのように認識されているのかを確認することができる。茶木氏は、敷居の低さが同キットの特徴だと述べた。
「Vieurekaカメラ スターターキット」には、VieurekaカメラのVRK-C301、専用アダプタ、LANケーブル、SDK(10種類のサンプルアプリ同梱)が同梱されている。
知識を付けていけば、環境をはじめから構築するということができるようになるが、重要なのはその画像認識を使用して価値を生む部分である。環境構築の部分と価値を生む部分を分業して、環境構築の部分は同キットが用意しているものを使用してほしいと宮崎氏は述べた。
サンプルアプリケーションの実力を知り、アプリケーションの検討を開始する

同キットには、10種類のサンプルアプリケーションが同梱されている。このサンプルアプリケーションは、全てオープンソースのものであるという。
実際に使ってみるとわかるのだが、すごく精度が高いというわけではない。宮崎氏は、この精度はオープンソースの限界であるとした。AIに対する期待感はまだまだ高いものがあるが、実際には、オープンソースで提供されているアルゴリズムをそのまま利用するだけでは、業務に導入できるレベルのものではないことがある。
画像認識AIを開発している各社は、実際の業務に導入できるよう、認識精度を高めようとしている。各社、精度の高さを競い合っている段階だ。画像認識AIを使ってみたいと考えるとき、現状は精度が高いアプリケーションを選択して使用する方法が一般的だ。
同キットを使用して、画像認識AIのアプリケーションについて勉強することで、どうすれば精度が高いアプリケーションを作ることができるのか、サンプルアプリケーションのソースコードをチューニングしながら習得することができる。
同キットでは、現在提供されている以外のサンプルアプリケーションも用意されていて、順次アップデートしていくつもりだという。更に、本格的な導入をする場合は、VieurekaPFのパートナー企業が開発した商用のアプリケーションも使用できるようになる。
それぞれの分野ごとにアプリケーションのライブラリを用意することで、利用者が用途に応じて最適なものを選択し検討できるようにしていきたいとしている。
現在力を入れているのは、ディープラーニングの環境も提供するための検討だという。ディープラーニングの環境が使えることで、クラウドで学習し作成した推論モデルをVieurekaカメラの中に入れて、カメラで撮影した画像を基に再学習を行い、推論モデルをどんどん賢くしていくということができるようになる。
Vieurekaカメラでデータを集め、クラウドで学習し、推論モデルを作成する
AIを始めようとしたときに、データがなくて学習できないという問題にぶつかることがある。どうやってデータを取ったら良いのか、どんなデータを学習したら良いのかということを考え、実際にデータを揃えることは意外と難しい。画像認識をしようとすると、映像データでは、画質や明るさ、画角などといった検討項目が増えるため、難易度が上がってしまう。
同キットは、VieurekaカメラのVRK-C301が同梱されているので、カメラを設置することですぐにデータを集めることができる。欲しいデータの画角や明るさにあわせた場所にカメラを設置することができるため、検討者が欲しいデータを集めることができる。
データを集めることができたら、そのデータを基に、クラウドで学習し推論モデルを作成するということがリモートでできるようになる。クラウドとカメラを繋ぐのは、クラウド環境を整えれば比較的簡単にできるという。
サンプルアプリケーションの中に、既に所定のIPアドレスにデータを送るサンプルプログラムがあるので、用意したクラウド環境のアドレスにソースコードを改変するだけでデータをクラウドに送られるようになる。企業によっては、既にクラウドやデータベースを持っている場合があるだろう。その場合も、その情報を入力すれば、既存のデータセンターにデータを送ることができるようになる。
ここまでできれば、開発段階で1台のカメラを使用して検討する場合、大体の目的は達成されるだろう。検討の結果、PoCをやってみる、実運用してみるということになったときには、VieurekaPFが提供しているSaaSであるVieureka Managerを使用することで、複数台のカメラの一括管理が可能になる。開発フェーズだけでなく、運用フェーズでも敷居を下げることを意識している。(宮崎氏)
ツールさえあれば、画像認識AIは簡単にできる

同キットを購入することで、
- 開発環境の検討
- ゼロからのアプリケーションの開発
- ゼロからのクラウドやデータベースとの接続の設定
などといった画像認識にまつわる難しさを解決できる。
Raspberry Piを使って画像認識AIを実際に検討するという事もできるが、その場合は、カメラを購入し環境をセットアップして、OpenCVなどのAIフレームワークをインストールする必要がある。
環境を自分で構築し、ある程度AIのモデルが精度良く作れたとしても、Raspberry Piのままだと実運用時に設置できないし、ファームウェアのアップデートなど、運用時の対応についても自力で対応しなければならない。
Vieurekaカメラ スターターキットであれば、こうしたことは全部初めから準備されている。最近のAIカメラの競走軸が、「AIモデルの認識精度」であることを考えると、AIカメラのビジネス利用を考える人には、この仕組みはかなりありがたいはずだ。
IoTや画像認識がちょっと気になっていて試してみたいという人に是非試してもらいたいと茶木氏は述べた。
宮崎氏は、AIはもっと簡単に「試せる」・「学べる」・「開発できる」ことを伝えたい、そのための1歩となるように同キットを開発したと述べ、「AI人材がいない、AIを外注するとコストが高くなる」と悩んでいる企業の方にも適したツールだと考えているとした。
Vieurekaカメラ スターターキットは、
から購入することができる。
また、Vieurekaカメラ スターターキットを大学や研究機関などが無償で利用できるモニタープログラムも期間限定で実施する予定だという。モニタープログラムの詳細はこちらのページを是非確認してほしい。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。