本記事は、パナソニック株式会社のAIカメラサービスを提供する、Vieurekaチームに協力いただき記事作成した。
AIカメラとは、AIのアルゴリズムが搭載されたカメラのことだ。カメラを使って様々な映像を撮影し、撮影された映像を解析、そこに写っている物を認識したり、動きを捉えたりすることができる。
AIを利用する以上、物体を認識したい場合は、認識したい物体の特徴を学習する必要があったり、動作を認識したい場合は、認識したい動作自体を学習する必要がある。つまり、カメラにAIが搭載されているといっても、用途によってはAIそのものに学習を加える必要があるのだ。
最近発売されているAIカメラには、ある程度の認識機能があらかじめ搭載されていることも多い。その一方で、認識した結果を活用して何らかの処理をしなければ、価値が生まれないケースが多い。
「AIカメラ」というと、カメラの性能がよければよいと考えがちだが、実際は、「カメラの性能」だけでなく、「AI処理の性能や柔軟性」「AI処理後のデータ活用」についても考えることが重要だ。
目次
AIとカメラを利用する仕組み
AIカメラには、「カメラ自体にコンピューターが搭載されているもの」と、「カメラとコンピュータが別のもの」、「カメラで取得した映像をクラウドにアップロードして、クラウド上のAIで処理を行うもの」の3種類がある。
AIカメラ自体にコンピュータが搭載されているもの
AIカメラ自体にコンピューターが搭載されていると、ハードウエアを動かすためのファームウエアのアップデートや、AIモジュール、プログラムなどを最新化する際、一つのデバイスだけを対象とすれば良いので、管理が煩雑になりづらいというメリットがある。
一方で、カメラの性能だけを向上したい、コンピュータの性能だけを向上したいといった場合には対応が難しいことから、用途にみあった製品を購入することが重要だ。

カメラとコンピュータを別に準備するもの
カメラとコンピュータを別々に準備することで、豊富なカメラ・コンピュータのラインナップから用途に応じたものを選択することが可能となることがメリットだ。
その一方で、実際に現場に設置する際、2系統の電源を確保する必要があったり、特別なケーブルやネットワークを準備する必要があるため現場での導入を考えると工事が煩雑になる、というデメリットもある。厳密にはAIカメラとは言えないが、一般的にこの構成もAIカメラと呼ぶことが多い。
AI処理をクラウドで行う
AI処理をクラウドで行う場合、カメラで取得したデータを格納し、ストリーミング情報としてクラウドにアップロードするための機材が別途必要となる。
ネットワークに流れるデータ量は極力減らしたいし、個人情報に関するようなデータの場合は、不用意に漏洩する可能性を防止することができることから、多くの場合、何らかの判定は現場で行い、必要な情報だけをクラウドにアップロードする方式が取られる。
しかし、クラウドに大量のデータを保管し、それらのデータを比較分析するようなシーンでは、データをクラウドにアップロードせざるを得ない。
AIによる画像認識と、これまでの画像認識技術の違い
これまでの画像認識は、その判定ロジックを人が作っていた。しかし、AIによる画像認識ではAIが学習することによりそのロジックが生成されるという違いがある。
例えば、アナログメーターをカメラで撮影し、今どのメモリを針が指しているかを確認するという場合、従来の方法では、針の角度からその値を取得するという方法が主流であった。
しかし、この方法では、カメラとアナログメーターの位置関係が変わった場合には、角度が狂い使い物にならないということが起きてしまう。

一方、AIによる画像認識であれば、角度が多少ずれていても、推論により正しい数値を割り出すことも可能になる。
他にも、人の顔を認識する際、必ずしも目と目の感覚を数値で定義することはできないが、AIを使うとなんとなくの目の位置関係からそれが目であることを割り出すことが可能となる。
このように、ある意味あいまいともいえるような認識を行うことができるのもAIによる画像認識の特徴であるとも言えるのだ。
AIカメラでできること
AIカメラで実現されている中で、7つの技術を紹介する。
オブジェクト(物体)検出
オブジェクト(物体)検出とは、AIカメラを使って、様々な物体を認識する技術のことだ。
例えば、机の上にみかんとりんごが置かれている場合、カメラが捕らえた映像がみかんである場合に、それが「みかん」だと認識する機能だ。映像の中に特定の物が存在するかどうかを確認することに使うことができる。

オブジェクト(物体)検出を使う例
- 医療分野で撮影されたMRI画像をみて、その中にガンがあるかどうかを検出
- 建設現場においてヘルメットをかぶっているかどうかを確認
- 製造業において製造した製品の不良がないかを外部からみる外観検査
- 店舗の来店状況分析にAIカメラを使う
など、様々な場面でオブジェクト検出は使われている。
姿勢検出
姿勢検出とは、人材の関節などの特徴点から人間の姿勢を割り出す技術だ。工場において、熟練作業者と新人作業者の動きの違いを取得して、新人作業者の教育に活かすといったことに使うことができる。

姿勢検出を使う例
- スポーツ選手の動きを検出し、フォームの指導に活用
- カラダの歪みを検出し、ヘルスケアに活用
- 前述した製造業における技術継承や、作業効率の改善に活用
- 要介護者の転倒を認識するのに活用
など、様々な場面で姿勢検出が使われている。
顔検出
顔検出とは、カメラに映った人物の顔を認識し、登録されている人物とのマッチングを行うことで、それが誰であるかを認識したり、顔の一般的な特徴から年齢や性別を推論したりすることができる技術だ。

顔検出を使う例
- オフィスの入館に社員かどうかを識別し、写真であればドアを開け、そのデータを活用した勤怠管理を行う
- イベントに参加した顧客の年齢・性別を識別し、参加者統計情報に利用する
- 無人コンビニの入り口で人物を顔で特定し、その後店内を移動する際に、本人であることを認識しつづける
など、様々な場面で顔検出が使われている。
セグメンテーション
セグメンテーションとは、カメラに映った物体の領域を抽出する技術だ。例えば、道路を写した映像があった場合、街路樹の部分、道路の部分、車の部分、人の部分と、領域を塗り分けることができるが、このそれぞれを識別し区別することをセグメンテーションと呼ぶ。物体認識が画像単位であるのに対して、セグメンテーションは画素単位で行うため、より細かく物体を認識することができる。

セグメンテーションを使う例
- 自動運転を行うために、道路の部分と、自転車や人物をより分けることで、道路を横切る歩行者や自転車を区別して認識する
- 鉄製の物体において、錆びている部分と錆びていない部分を識別する
- ロボット掃除機が床に落ちている物体を細かく認識し、避けて走行する
など、さまざまな場面でセグメンテーションが使われている。
パターン認識
パターン認識とは、特徴を基に、認識したい物体を見つけるための技術だ。なんらかの特徴をあらかじめAIに定義しておくことで、認識したい物体がカメラの映像に入り込んだ時、認識することができる。

パターン認識を使う例
- 車のサイドミラーに映った映像をもとに、クルマを識別し、クルマの位置関係を計算、危険な場合に警告を行う
- ある人物の特徴をAIが学習、大勢の人から、ある人物を識別し特定する
など、様々な場面でパターン認識が使われている。
バーコード認識
バーコード認識とは、みなさんのスマートフォンでも搭載されているお馴染みの機能で、バーコードを撮影した際、その内容を読み取ることができる。AIカメラでやる場合、複数のバーコードを一括に読み取ることも可能だ。
バーコード認識を使う例
- 物流倉庫において、荷物に貼り付けられたバーコードがどんどん流れてくる際、カメラでバーコードを読み取り、検品作業を省力化する
文字認識
文字認識は、カメラに映った文字や文章の記載内容を読み取る技術だ。読み取るといっても、それが何語であるかがわからないと、記号の羅列としてしか認識することができないので、複数言語にも対応した文字認識技術が必要となるケースがある。
OCR技術との違い
これまでも文字認識を行うOCRという技術があったが、これは人がルールを決めて認識を行うもので、あくまでも人の決めた範囲内での認識結果がでるものだ。その一方で、AIを活用したOCRの場合AIの学習によってそのルールが導き出されるため、識字率が向上すると言われている。
文字認識を使う例
- 看板に書かれた文字を読み取り、文字を読み上げることで視覚障害者のサポートを行う
- 文書をカメラで写すと、すぐ活字に起こすことができる
AIカメラソリューションVieurekaの紹介
パナソニック株式会社が提供する「Vieureka」は、AIカメラ自体にコンピュータが搭載されている製品だ。
カメラ内の画像解析機能やファームウエア等を遠隔から入れ替えることができたり、解析結果をクラウドで活用したり、多くのVieurekaを導入した現場の場合、それぞれのカメラをクラウド上で管理することができるソリューションだ。
その昔、電卓があたりまえになったようにAIも当たり前になる時代がやってくる。今後は、AIが特別なものではなく、エクセルやパワーポイントを使うように、誰でも使いこなせるようになるだろう。
そういった状況を前にして、AIを使いこなすための教育ツールが必要だ。そこで、Vieurekaチームは、AIの使いこなすためのセミナーを行い、人材育成にも注力しているということだ。
現在、Vieurekaでは、アプリコンテストを開催していて、AI教育のための取り組みを進めている。
また、Vieurekaカメラを使って、実際の業務利用をイメージしたPoCや協業の依頼も受け付けているということなので、興味がある方はVieurekaチームに問い合わせフォームより連絡して欲しい。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。