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富士通研究所、AIを活用した業務指向の対話技術を開発

株式会社富士通研究所は、主に窓口対応業務に向け、簡単な設定をするだけで、AI技術により、ユーザーの要望を正しく理解し、必要な情報を自然に聞き出しながら自律的に対話する技術を開発した。

従来、コンピュータに対話させる場合はどのようなことを言われたらどのように対応するといった対話のためのシナリオを用意し、それにもとづいて業務システムを動かすことが一般的であった。今回、日本語固有の難しさである表現の多様性や曖昧性などの問題に対して、入力文の単語間の意味の関係を構造的に抽出する技術を新規に開発し、利用者の発話を高い精度で理解し、スムーズな対話を実現することが可能になったという。さらに、Linked Open Data(注) (以下、LOD)などの外部データベースから取得した情報を適宜織り交ぜながら、対話履歴から自然な対話を行うための回答の選択方法を自動的に学習する知識型対話生成技術を用いることで、自律的に対話する技術を開発した。

同技術により、情報サービスの提供者は、サービスに応じて想定される複雑な対話シナリオを事前に用意することなく、自然な対話的ユーザーインターフェースによって推奨する商品やサービスプランが提示可能なシステムを短期間で導入できるようになる。

なお同技術について、東京海上日動火災保険株式会社が、一部の顧客対応業務において技術検証を行い、自然な対話の中で正しい応対ができることを実証しているという。

また同技術は、富士通株式会社のAI技術「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)(以下、Zinrai)」を活用している。

同技術は、5月19日(木曜日)、20日(金曜日)に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催される「富士通フォーラム2016」に出展する。

 

開発の背景

現在、スマートフォン上でのコミュニケーション手段として、ユーザーがシステムと対話を行うためのメッセンジャーアプリケーションが身近になっている。また、最近では、これを応用し、メッセンジャーアプリケーション向けのAPIの公開も相次いでおり、様々なサービスへの対話システムの導入に期待が高まっている。一方で、このような対話システムを明確な遂行目的がある業務用途に活用するには、ある程度知識を持った専門家でないと、業務遂行に必要な情報をユーザーからスムーズに聞き出せる対話シナリオを作成できなかった。

 

課題

従来、コンピュータに対話させる場合、どのようなことを言われたらどのように対応するといった対話のためのシナリオを用意し、それに基づいて業務システムを動かすことが一般的だった。このようなシナリオには、想定されるユーザーの発話をあらかじめ登録しておく必要がある。そのため、ユーザーが意図しない発話をした場合に目的の対話に戻すシナリオも考え、これを業務やサービスごとに用意する必要があるため、対話システムの構築、導入までに時間が掛かるという課題があった。

 

開発された技術

今回開発された技術は、従来対話システムに必要とされてきた複雑なシナリオを用意することなく、対話システムが利用者との自律的な対話によって目的の情報を聞き出し、推奨する商品やサービスプランを提示するという業務を実現する、業務指向の対話技術を開発。

ユーザー発話の中から高精度に業務に必要な情報を抽出する発話理解技術

語順が自由で、表現のバリエーションが多様な日本語においては、前置詞などの手掛かりが使える英語などと比較して文意を正しく理解することが難しく、キーワードベースの処理では情報抽出精度が低下してしまう。

この問題に対し、富士通研究所で開発されている数百万規模の大規模辞書を搭載する機械翻訳エンジンの解析技術を活用し、そこから得られた単語間の意味の関係を構造的に分析し、必要な情報を正確かつ簡単に抽出する独自の発話理解技術を新規に開発。例えば旅行業務を想定した場合、「姉のいる東京に友達と行きます」という入力文に対し、意味を正しく解析できると、「姉」は同伴者ではなく、「友達」が同伴者であることを正しく理解できるという。

さらに、今回、国立大学法人東北大学大学院情報科学研究科の乾・岡崎研究室と共同で開発した、機械学習を使ってユーザーの発話の意図を判定する技術により、回答や質問、要求、意志、願望などの意図を正しく把握しながら目的の情報が得られるようスムーズに対話を継続させることができるようになった。例えば、「ハワイに行きたかった」は願望であり旅行の目的地を述べてはいないと判断し、「ハワイですか、いいですね。ちなみに今日はどちらへ。」と返すことで、目的地の情報を得られるように対話を継続する。

これらにより、旅行業務を想定した評価実験では、従来のキーワードによる手法と比較して、渡航先の認識率が67%から91%に上昇するなど抽出精度を大幅に向上させることができ、スムーズな流れの対話を実現できる。

知識型対話生成技術

商品の推薦やサービスプランの提示といった業務を遂行する場合、業務遂行に必要な情報を淡々と聞き出す対話シナリオになる傾向がある。これに対し、今回新たに開発された知識型対話生成技術では、LODなどの外部データベースを活用した1千万件規模の知識情報を適宜織り交ぜることが可能で、親しみのある自然な対話システムを簡単に構築できる。さらに、システムの発話に対するユーザーの反応をもとに、回答の選択方法を自動的に学習することにより複雑な対話シナリオの作り込みがなくてもスムーズで自然な対話ができるシステムを実現可能になった。

 

効果

同技術について、東京海上日動火災保険株式会社が、一部の顧客対応業務で技術検証を行い、自然な対話の中で正しい応対ができることを実証している。

同技術によりサービスごとにシナリオを用意する必要が無くなるため、様々なサービスに短期間で容易に対話のユーザーインターフェースを追加できるようになり、様々なサービスに使われていくことが期待できる。ユーザーにとっては、これらのサービスを使い慣れたメッセンジャーアプリケーションなどからアクセスできることになるためICTサービスがより身近で便利なものになることが期待できる。

 

今後

同技術の効果検証を進め、2016年度中に富士通株式会社が提供するソリューションへの実装を目指す。さらに、「Zinrai」の判断・支援のための新規AI技術の一つとして接客、販売、コールセンター、バーチャルアシスタントなど幅広いサービスへ適用範囲を拡大していくという。

 

(注)Linked Open Data(LOD):Linked Data形式で公開されているデータセット群。

 

【関連リンク】
富士通研究所(FUJITSU LABORATORIES)
東京海上日動(TOKIO MARINE NICHIDO)
富士通(FUJITSU)

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