富士通株式会社は、ものづくりを支援する「ものづくり統合支援ソリューション」に、設計・生産現場でAI技術を活用するためのコンサルティングサービスを追加し、2016年10月より提供する。同サービスは、ものづくり現場にAIを取り入れるための機能を新たに体系化したものづくりAIフレームワーク(注1)を活用する。
ものづくりAIフレームワークは、同社のAI技術「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を実装し、学習データベースやAI処理エンジン、認証サーバなどから構成されるAI活用基盤だ。同基盤は、スマートなものづくりのためのプラットフォームとして社内のものづくり現場での実践を経て、今回提供される。
コンサルティングサービスでは、設計・生産現場における各種製品や様々な業務プロセスごとに学習データベースを構築し、継続的に学習することでAIの高精度化を可能とするものづくりAIフレームワークを使用し、顧客のニーズや製品特性にあわせて、収集するデータの選別や、予測精度向上のためのデータチューニングなどを行いながら、顧客のものづくり現場へのAIの導入を支援する。
これにより、たとえば、プリント基板の設計期間の短縮や生産ラインの作業効率化が可能になり、継続して学習していく仕組みを提供することで、ものづくり革新に寄与していくという。
AIを活用するためには、過去の資産や現場から収集したビッグデータからノウハウや経験を抽出し、学習データベースに集約、モデル化することが必要になる。しかし、ものづくりの現場では、各種製品や、仕様検討、設計、検証、製造といった工程ごとの業務プロセスが存在し、それらのシーンごとに要求される高度な予測や判断処理を実現する標準的なモデルが存在しないため、その都度適合したモデルを構築することが課題だった。
今回、学習モデルを製品や業務プロセスごとに使い分けることができるものづくりAIフレームワークを開発し、コンサルティングサービスと合わせて提供する。
目次
ものづくりAIフレームワークの特長
利用シーンに応じた学習データベースを構築
ものづくり現場での、各種製品や、仕様検討、設計、検証、製造などの様々な業務プロセスごとに、それぞれ高い精度で予測や判断処理を行えるように、利用シーンに応じた異なる学習データベースを個々に構築。
世代管理機能により予測精度向上を実現
学習データベースは製品の設計・生産の周期ごとに世代管理され、使えば使うほど継続した学習によって予測精度が向上する。そのため、開発中の新製品にもAIを適用することができ、安定した運用が可能だ。
強固なセキュリティ機能を搭載
ユーザー認証、通信の暗号化により大切な学習データベースを保護する。
既存システムへの容易な組み込みが可能
標準的なWebAPI群を備え、顧客の既存システムとの連携を容易にする。これにより、たとえば顧客のCAD基盤や製造ライン装置などのデータ生成や予測にAIを活用することができる。
ものづくりAI活用例
電気系設計におけるプリント基板の設計支援(基板層数の見積もり)(注2)
AI活用により、新製品の部品数や基板サイズなどの特徴を入力するだけで、学習データベースから必要なプリント基板の層数を予測する。これにより、プリント基板の設計工程を約20%短縮できる。
構造系設計における3Dモデルの類似部品検索(注3)
3Dモデルの類似部品検索では、例えば、ネジの3Dモデル検索において、従来の類似度算出の手法では検索精度が68%であったのに対し、AIを活用することで96%まで向上させた。AIを活用した高速かつ高精度な類似部品検索は、過去の似た形状の部品を使っている設計データの流用や、障害時の原因となった部品の他製品への利用状況の検索など、様々なシーンで活用できる。
生産ラインにおける画像認識プログラムの自動生成(注4)
生産ラインのカメラによる画像認識で部品の位置や姿勢を検出するプログラムにおいて、正解データを学習し、高い認識精度を実現するプログラムを自動で生成することができる。社内事例では、画像認識専門エンジニアがプログラムを開発した場合と比較し、プログラムの開発期間を10分の1に短縮し、画像の認識精度を97%まで向上させた。
ものづくり現場でのAI導入のコンサルティングサービス
昨今、ものづくり現場にもAIの活用を検討する顧客増えてきたが、前例がないため、導入が困難な状況だ。同社のコンサルティングサービスにより、課題抽出、POC(概念実証)、データ選別、データチューニングによる継続的なAI強化などを行い、顧客のものづくり革新を実現していくという。
販売価格、および提供時期
サービス名:ものづくり現場でAIを活用するためのコンサルティングサービス
販売価格(税別):個別見積
提供時期:2016年10月より
注1 ものづくりAIフレームワーク:富士通アドバンストテクノロジ株式会社が開発。
注2 プリント基板の設計支援(基板層数の見積もり):株式会社富士通研究所が開発。
注3 3Dモデルの類似部品検索:Fujitsu Laboratories of Europe Limitedが開発。
注4 画像認識プログラムの自動生成:富士通研究所が開発。
【関連リンク】
・富士通(FUJITSU)
・富士通アドバンストテクノロジ(FUJITSU Advanced Technologies)
・富士通研究所(FUJITSU LABORATORIES)
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