今年も台湾でコンピュータ産業の見本市である、COMPUTEXが開催された。レポートの第一弾はNVIDIAからだ。
まず、毎度のことだがNVIDAはブース展示をしていないのにも関わらず、会場はNVIDIAのロゴが溢れていた。
ご存知の通り、NVIDIAは、もともと画像処理エンジンのボードを作っていたのだが、ベクトル演算がAIに使えるということで、AI用のGPUを作る流れが生まれた。その後、AIが世界中で話題となり、クラウドサービスが広がる中、サーバの中のGPUに採用されることが多くなった。
そして、最近ではOpenAIなど、世界を代表する生成AI企業のサービスを下支えしている。
そんなNVIDIAだが、今回、CEOのジェンセン・フアン氏が台湾で、基調講演を行った。
COMPUTEX自体の基調講演はAMDだったので、こればプライベートに行われたものではあるのだが、かなりの注目を集めたのか、本日(6/6)時点で、NVIDIAの時価総額はついにアップルを抜き去った。
では、どんな発表がされたのだろう。
新しいGPUアーキテクチャのロードマップ
まず、NVIDAは、今年3月にサンフランシスコで自社イベントを開催していて、そこで新しいGPUのアーキテクチャである「Blackwell」を発表している。
これは、2022年3月に発表した一つ前の世代のものより5倍の性能がある。
さらにAIに特化していることもあり、LLMの学習で4倍、推論で30倍の性能が発揮される。
TSMCのチップを使っていて、2080億個のトランジスタを集積したGPUとして大いに話題になった。

そこから間もない今回、2025年にBlackwell Ultraと呼ばれるアーキテクチャを投入予定とした。
さらには、2026年にはARMの次世代GPUとなるVeraにあわせてRubinを、2027年にはRubin Ultraを投入すると発表したのだ。
GeForce RTXで、PCがAI PCに
また、PCに搭載するGPUであるGeForce RTXについては、Tensor CoreとNVIDIAが呼んでいる、NPU(人間の神経系を模倣したようなプロセッサ)のようなものが内蔵されている。これを利用することで、PCで高度なAIの学習と推論を行うことができるようになるのだ。
ソフトウエアベンダーは、Tensor Coreに対応したプログラムを書くことで、PCのAI処理を飛躍させることができるのだ。
Windowsの場合、Copilotのランタイムから、Tensor Coreが利用できるようなAPIを提供する。
会場では、さまざまなメーカーのブースに、NVIDAのソリューションが展示されており、例えば下の写真は画像生成をするStable Diffusionを使った場合、Apple M2 Ultraの10倍の性能があるという展示をしていた。

さらに、NVIDIA ChatRTXというソフトウエアでは、テキストや音声を使った自然言語の指示でPC内のファイルや映像などを探してくれる。
もちろん、セキュアにだ。

会場はNVIDA祭り
今回のCOMPUTEXはNVIDIA祭りだったとも言える。
サーバについていうと、GPUだけ性能がよくても、AI用のサーバは作れない。
水冷装置やファン、電源など、サーバにはたくさんの装置が必要になる。
PCに関してもそうだ。
MicrosoftのCopilot+が今後PCに搭載されてくる流れにあり、ネットに接続しなくてもインテリジェントな処理ができるPCが話題となるだろう。
この辺は個別のメーカーの記事で書いていく予定だが、PCについても多くの装置メーカーとの協業は欠かせない。

今回、ジェンセン・ファン氏が会場に訪れ、パートナー関係にある企業ブースに足を運び、各社のキーノートに顔を見せることからも、AIのハードウエア市場をNVIDIAが牽引し、パートナー企業と共に成功しようとする意気込みを感じた。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。