富士通株式会社は、デジタルビジネス・プラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(フジツウ デジタル ビジネス プラットフォーム メタアーク)」(※1)上で展開している、IoTで現場を見守る安全管理を支援するソリューションの強化を目的に、同社の「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を活用した、警備業務など継続的な作業における熱ストレスの推定を行う新しいアルゴリズムを株式会社富士通研究所と共同で開発し、7月下旬より提供を開始すると発表した。
また、同社川崎工場で働く警備員を対象に、同アルゴリズムを追加した安全管理を支援するソリューションを6月から9月の期間、同社にて実践を行う。
従来のアルゴリズムは、腕に装着したデバイスでセンシングした気温・湿度やパルスの上昇などから熱ストレスレベル(※2)を推定しており、主に製造業や建築業の現場で適用されていた。今回開発された新アルゴリズムでは、時間経過とともに蓄積する熱ストレスのレベルを推定することができるようになったため、夏場の屋外での警備業務など継続的な作業を行う現場により適しており、従来のアルゴリズムと併せて幅広い現場での安全管理に活用することができるという。
今回、蓄積した熱ストレスのレベルの推定を行うために相関関係が見えにくい多様なデータを扱うため、AI技術を活用し、専門家の知見を基に機械学習させることにより、熱ストレスが高い場合の特徴を抽出し、推定ロジックを開発、労働科学の専門家が行うような推定が可能となったという。
近年日本の職場での熱中症による死傷者数(※3)は、観測史上最も猛暑だった2010年以降も、毎年400~500人台で高止まりの状態にある。2016年の熱中症による職場での死傷者数は約450人(※4)に上り、引き続き企業では死傷者の削減に向けた取り組みが課題となっている。また、気温や湿度の高くなる夏場における工事現場や屋外イベントなどの警備・イベント運営に対する熱中症対策のニーズは、2020年に向けて増加することが予想され、早急な対策強化が求められている。
同社は、夏場などの過酷な環境下で働く作業者の安全見守りを強化するため、AI技術を活用した新しいアルゴリズムを開発した。
新アルゴリズムでは、従来の気温・湿度・パルスのデータに加えて、運動量などの新しいデータの追加、さらに時間ごとの推移データを基に熱ストレスのレベルを推定している。相関関係が見えにくい多様なデータを用いて推定を行うためには、機械学習の活用が適しており、今回、実測データと専門家が判定したデータを用いて機械学習させることにより、熱ストレスのレベルが高い場合の特徴を抽出し推定を行うロジックを開発。
これにより、蓄積した熱ストレスに対する労働科学の専門家が行うような推定が可能となり、炎天下における長時間の警備業務など、運動量の少ない現場における作業員一人ひとりの状態を見守ることができるという。
同社川崎工場への入門者や、工場内の工事現場を監視する警備員を対象に新アルゴリズムを追加した安全管理を支援するソリューションを適用するという。労働環境が過酷となる6月から9月にかけて実践を行うことで、有用な知見を蓄積し、今後の顧客現場での作業員の安全見守りに貢献する考えだ。
従来、警備などの現場では、従業員が熱ストレスを受けやすい環境にあるが、体調の変化には個人差があり、休憩などの一律な対策では対処が難しいのが実情。今回開発された新アルゴリズムにより、個人ごとの熱ストレスの蓄積を推定することが可能になるため、一人ひとりの状態にあわせた見守りを行うことができるという。
※1 MetaArc:クラウド、モバイル、アナリティクス、IoT、AIなどの最先端技術と、当社SEの知見・ノウハウを融合したデジタルビジネス・プラットフォーム。
※2 熱ストレスレベル:日本生気象学会の「WBGTと気温、湿度との関係」を基に、気温・湿度・パルスから算出し、熱ストレス状態を「安全」「熱ストレスレベル(低)」「熱ストレスレベル(中)」「熱ストレスレベル(高)」の四段階に分けて推定。
※3 死傷者数:死亡者数および4日以上休業した業務上疾病者の数。
※4 2016年の熱中症による職場での死傷者数は約450人:2017年6月厚生労働省資料「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
提供:富士通
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