Amazon.comのサービス利用者としては、商品のリコメンデーションだけでなく、Amazon Echoなど様々な領域でAIを活用したサービスを知らない間に利用している。
Amazonの中でもAWS(Amazon Web Service)は、クラウドサービスプラットフォームで、利用者はいわゆる通販サイトの利用ではなく、クラウド上にあるリソースを利用してWebサービスなどを作ることができる。
このAWS内には、Amazon.comで培われたAIサービスが多く提供されている。Amazonがもっているテクノロジーを多くの人に使えるようにできないか?というのがアマゾンのAIサービスへのアプローチで。これを開発するために数千名のエンジニアもいるという。
AWSの機械学習サービスは、4つのレイヤーから構成されている。
目次
1)AI SERVICE
第一レイヤーは、学習済みのモデルが配置されていて、利用者はそのモデルをすぐ使えるというレイヤーだ。
Polly
Pollyは、文章をリアルな音声に変換するサービスだ。24言語に対して47リアルな声優の音声を提供していて、平均的なメールを読み上げるのに要する費用はおよそ2円程度ということだ。
「スピーチマーク」機能という、映像体験と会話を同期するメタデータを設定することも可能ということだ。
事例:FM和歌山
FM和歌山の事例では、完全に自動化されたニュースの読み上げをキャスターなしに行っているということだ。
Recognition
Recognitionは、画像分析機能をアプリケーションに簡単に追加することができるサービスだ。ディープラーニングを活用した画像認識サービス、物体認識、顔人認識、表情認識など様々な機能がある。
利用方法としては、不動産検索というケースの場合、業者が撮った物件情報を自動的に判別し、風呂場の情報なのか、リビングの情報なのか、ということを自動で割り当てることが可能だ。
他にも、店舗内の顧客印象分析のケースでは、顔分析を活用して、感情やポーズ、瞳があいているかなどがわかるので、商品を見て顧客がわらっていたのか、などもわかる。
また、同一人物かどうかを比較することもできるので、従業員の認証サービスなどに利用可能で、不適切な画像を判別したり、有名人認識の機能などもある。
AWSの既存の機能を組み合わせたり、アプリケーションを拡張するコトで簡単に付加価値をつけることができるのが特長だと述べた。
「はいチーズ!」活用事例 千株式会社 ものづくり部 マネージャー 熊谷大地氏
「はいチーズ!」は、スマートフォンやインターネットで幼稚園などで行われる運動会などの行事の写真を買うことができるサービスだ。
大規模な園では、園児が200名以上いるという。1万枚以上もの写真から我が子の写真を探す必要があるが、それはとても手間がかかる。そこで、画像認識を活用して該当園児の写真を探すサービスとしてAmazon Rekognitionを活用したという事例だ。
すでに、はいチーズ!では、インフラとしてAWSを活用しているので、S3上にある写真とRekognitionの相性はよく、1ヶ月程度での導入が実現できたということだ。
Lex
Lexは、Alexaベースで、声やテキストを使用した会話型インタフェースだ。
言い回しのバリエーションが登録できたり、「SLOT」という、登録されているやり取りの中で「何をきかなければならないか?」を登録しておくことで、BOTが聞くべきコトを、どんどん聞くコトができるのだ。
例えば、ホテルの予約であれば、「ホテルを予約をしたい」と言うと、「どこの都市に行きたいですか?」「何月何日に行きたいですか?」という、SLOTに登録されている内容を聞いてくるのだ。
Facebook Pageのデモ
Facebook Pageを使って、旅行予約をするサービスが簡単に作れる、というデモが行われた。インタラクションを簡単に実現できるというのがLexの応用事例だ。
ただし、このサービスは、日本語にはまだ対応できていないので、今後実現したいと述べた。
2)AI PLATFORMSレイヤー
AI SERVICEが学習済みモデルが提供されていたのに対して、2層目のレイヤーとなる、AI PLAFORMSは学習のフェーズからやる必要がある場合に利用するものだ。
Amazon Machine Learning
一般的な機械学習をやりたいというとき、2クラス分析や他クラス分析、回帰分析などで利用可能だ。
Amazon Elastic MapReduce(EMR)
Hadoopの中でも、Mahout, Spark , Zeppelin, Flinkといったライブラリには、機械学習のライブラリがあらかじめ組み込まれている状態で提供されている。
3)AI FRAMEWORKSレイヤー
3階層目のAI FRAMEWORKSのレイヤーではディープラーニングのフレームワークが提供されている。
AWSでは、MXNET, TENSOR-FLOW, など他社製のオープンソースのAIフレームワークをも簡単に使えるよう、提供していくという考え方だということだ。
様々なディープラーニングのフレームワークがプリインストールされており、ケースに応じて切り替えながら使うことができるという。
ただ、現状Amazonとしては、スケーラビリティに優れている、MXNetを全面にサポートしているということだ。いかに大量のデータを高速に学習することがポイントとなるため、そこを実現できているMXNETをAmazonサービスでも実際に使っているということだ。
4)AI INFRASTRUCTUREレイヤー
近年のAIプラットフォームは、GPUアクセラレータをつかって並列処理を行うことで高速化ができるということが技術革新のポイントだ。そこで、最下層となる、AI INFRASTRUCTUREのレイヤーでは、GPUが使えるインフラとしてNVIDIA製のチップをつかった、「P2」と呼ばれるインスタンスを提供しているということだ。
F1インスタンス
F1インスタンスは、FPGAをサポートするインスタンスだ。
インテルSkylake(C5インスタンス)
この中にも、AVX512と呼ばれる、Caffe2を最適に使うことができるインスタンスも提供されいている
AWS Greengrass
AIというとクラウドでの処理をイメージする方も多いと思うが、学習済みのモデルであればエッジ側が非力なコンピュータであっても動作させることはできる。
そこで、「Greengrass」は、サーバサイドのロジックをデバイスサイドでも動かすことができるサービスだ。特にスマートファクトリーなどのエッジ側で高速処理をしたいというユースケースで使えるという。
デモは、RaspberryPi上にMXNetでの学習済みモデルを載せていて、推論のみをするというデモだ。カメラがついていて、ライオンの写真をみて、デバイッス側で推論をするというものだ。
これくらいの処理能力でも推論ができることが重要だと述べた。(榎並氏)
NTTデータAIタクシーの事例
多変量自己解析とディープラーニングを用いて、30分後の利用者数を予測するというモデルを作ったというコトだ。
これによって、タクシー運転手になりたてのドライバーでも客を拾うコトができるという。
日本経済聞社のAI記者の事例
東京証券取引所からくる適時開示情報サービスから、決算短信の記事が自動的につくることができる。
これまで20%程度の企業しかフォローすることができなかったが、これですべての適時開示情報をフォローするコトができるのだ。
最後に、他にも、グローバルでは多くの事例が出てきていて、今後AIや機械学習を使った取り組みを進めていきたいと述べた。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。