中国のファーウェイ(HUAWEI/華為技術)の年次イベント「HUAWEI CONNECT 2017」が、9月5日~9月7日に開催された(中国・上海)。そこでは、(1)同社のクラウド戦略と、(2)新世代のインテリジェントなクラウドハードウェアプラットフォーム「Atlas」のリリースについて発表が行われた。
1. ファーウェイのクラウド戦略
ファーウェイ プロダクト・ソリューショングループ プレジデントである汪涛氏(デビッド・ワン)は同社のクラウド戦略について次のように説明した(冒頭写真)。
「コネクションとクラウドの2つを牽引役とするデジタルプラットフォームを構築することが、ファーウェイの将来の製品戦略です。
ファーウェイはクラウドとネットワークの連携という強みを活かし、ソフトウェアおよびハードウェアの能力、データセンターの高速相互接続能力、クラウドサービスにおけるイノベーション能力を統合し、パートナーと連携して世界の5大クラウドの1つを構築することを目指します。
将来的には、接続が存在するあらゆる場所にクラウドが存在することになるでしょう。接続の目的は効率的なクラウドを提供することにあり、クラウドの価値は接続によって実現されます。
すべての企業は、ビジネスモデルのイノベーションや新たな成長をリードするために、より強力なコネクティビティ、よりインテリジェントな管理性、よりオープンなプラットフォームを備えたネットワークを求めています」
「コネクション+クラウド」。ファーウェイはこの2つの原動力でデジタル化を推進する。
現在、企業は業務の基幹系サービスだけでなく、ユーザー、機器、環境をつなげることができるネットワークを求めている。また、これは生産、物流、オペレーション、マーケティング、販売などのサービスプロセスを統合するものでなくてはならない。
そして、ネットワークはベストエフォート型のサービスではなく、品質保証型のサービス、効率性の高いデータ伝送、インテリジェントなO&M、セキュアなサービスを提供できるものでなければ、企業のデジタル変革を加速することはできない。
そこで、ファーウェイは、さまざまな有線/無線ネットワークの接続技術を提供し、あらゆるシナリオでの情報への容易なアクセスの実現、情報のサイロ化の解消、断片化された情報の統合、接続ユーザーのID、アプリケーションタイプ、動作環境の識別が可能なネットワークの構築を進めている。実際には、
- ビッグデータ分析を使用してユーザーの挙動や意図を分析することで、高品質なサービス伝送、エンドツーエンドでのアプリケーション体験の保証、インテリジェントなO&Mと障害箇所特定を可能にするネットワーク自動化
- ネットワークがサービスやアプリケーション要件に基づきインターフェースを使用して情報を開放することで、ユーザーがサービスの最適化やイノベーションに加えて効率性を向上させること
などを可能にするという。
2. 新世代のインテリジェントなクラウドハードウェアプラットフォーム「Atlas」
Atlasはパブリッククラウド、AI、HPCなどのシナリオに対応し、ヘテロジニアスリソースプーリングやインテリジェントオーケストレーションなどの主要技術のメリットを活用して、新たなレベルのハードウェアリソース利用とサービス需要へのより柔軟な対応を可能にする新世代のインテリジェントなクラウドハードウェアプラットフォームだ。
ファーウェイ ITサーバープロダクトライン プレジデントである邱隆氏(チウ・ロン)は、「Atlas」について次のように説明した。
「AI時代が近づいている中、従来型のハードウェアではAIやクラウド技術の開発要件を満たせなくなっています。
新世代のインテリジェントなクラウドハードウェアプラットフォームと位置付けられるファーウェイのAtlasは、ヘテロジニアスリソースプーリングとインテリジェントオーケストレーションの技術をいちはやく活用し、ハードウェアリソースの利用効率と性能をこれまでにない高いレベルに引き上げます。
Atlasはファーウェイのバウンドレスコンピューティング戦略の成果でもあります。ファーウェイは継続的なイノベーションを通じてコンピューティングをシンプルにするという考え方を基本理念としており、安定性、信頼性、性能の優れたサーバーを構築するというお客様の要求を常に念頭に置いています。
そして、お客様が課題により適切に対処し、AIとクラウドの時代で変革を成功できるよう支援しています」
AI研究とアプリケーションの進歩により、AIとクラウドコンピューティング技術はセーフシティやスマート製造への活用から自動運転までさまざまな領域に広がり続け、人々の日常生活に不可欠なものになりつつある。
こうしたなか、真のインテリジェンスに求められるのは、莫大な数のシステムが、完全につながった世界で発生する大量のデータをリアルタイムに処理できることだ。
例えば、10万台のカメラが設置された都市では、年間1,000億件のナンバープレートと1兆の顔認識の記録が生成されることになる。これほどの規模のデータの処理、照会、分析に必要な能力を従来のコンピューティングシステムで提供することは、きわめて難しい課題だ。
しかし、パブリッククラウド、AI、HPCシナリオ向けにファーウェイが発表したAtlasプラットフォームであれば、AI時代のデータ処理の課題に対処できるという。
同プラットフォームは、ファーウェイのFusionServer Gシリーズのヘテロジニアスサーバーをベースとしている。FusionServer Gシリーズは、ヘテロジニアスリソースプーリングとインテリジェントオーケストレーションなどの技術を活用して、GPU、HDD、SSDなどのリソースをプールし、特定のサービスモデルのニーズに最適な形で対応できるハードウェアリソースをオンデマンドにプロビジョニングする。
Atlasは、50%以上のリソース利用効率を実現し、従来のx86アーキテクチャよりパフォーマンスを10倍以上向上できることに加え、顧客のハードウェアのデバイスタイプを削減できる。
さらに、Atlasは異なるリソース構成率で論理サーバーのプロビジョニングが可能で、数秒以内でサーバーを展開できるため、サービスの展開サイクルを大幅に短縮すると同時に、顧客はサービスの変更により柔軟に対応できるのだという。
【関連リンク】
・ファーウェイ(Huawei/華為技術)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。