NECは、処理性能と拡張性を強化し、HPC領域の科学技術計算に加え、AI・ビッグデータ解析、資源探査、画像解析、セキュリティなどの新しい領域にも活用可能な新プラットフォーム「SX-Aurora TSUBASA(エスエックス・オーロラ・ツバサ)」を、日本国内および海外向けに販売開始する。
同製品は、最先端LSIテクノロジーに加え、NEC独自の高密度実装技術や高効率冷却技術などで開発されたカード型の「ベクトルエンジン(以下、VE)」を搭載(冒頭写真)。VEをカード型とし、x86サーバーへの搭載を可能とした新アーキテクチャの採用により、ベクトル演算に加えx86で行うスカラ演算の両ニーズに対応したという。
さらに、VEの搭載数によりエッジ用からデータセンター用まで幅広いラインアップを揃え、計算能力ニーズに応じた選択を可能とした。
なお、従来機種「SX-ACE」と比較し、性能あたり(同一演算性能を実現するラック構成において)の消費電力を5分の1に、また設置面積を10分の1に低減した。
SX-Aurora TSUBASAのエッジ用、オンサイト用は2018年2月以降の販売となる見込みだ。最小構成価格(ハードウェアとソフトウェア環境)は170万円、搭載VE数は1~8個だ。
また、SX-Aurora TSUBASAのデータセンター用は、2018年7~9月になる予定で、最小構成価格(ハードウェアとソフトウェア環境)は1億2千万円、搭載VE数は64個だ。



背景
昨今、IoTの普及に伴い、世界規模で扱われるデータ量は2年毎に倍増しているという(IDCの調査をもとにしたNECの推測)。また、それら大量のデータはより高度なAI処理を要求するケースも増えていくことが見込まれるなど、大量データを高速かつ高度に処理することが求められている。
これらのニーズに対し、従来ではスーパーコンピュータに代表されるHPC(High Performance Computing)機器での処理が一般的だったが、システム規模も大きく利用価格も高額となるため、利用ユーザは一部の省庁・研究機関・大手企業などに限定されていた。
ただし、今後これらの処理ニーズは、企業における設計・開発、地方自治体での災害対策予測、また農業や漁業の収穫・漁獲予測、店舗販売の売り上げ予測など、幅広い業態業種に拡大することが見込まれている。
このような状況下、NECは高性能と導入しやすさの両立を目指してベクトル型新プラットフォーム「SX-Aurora TSUBASA」を新たに開発し、コア当たりのアプリケーション性能を世界最速レベルとすることと、ベクトルプロセッサをカード型化することで、幅広いお客様に利用できる高速・高性能なシステムを提供する。
特長
1.ベクトルプロセッサをカード型VEに搭載
今回新開発されたカード型VEに搭載されるベクトルプロセッサは、メモリ搭載構造を採用し、「SX-ACE」の単一コア性能をさらに約5倍高速化させ、単一コア性能307ギガフロップス(GFLOPS:1秒間に10億回の浮動小数点演算性能)、および単一コアメモリ帯域150ギガバイト/秒を実現した高性能コアを8コア採用し、2.45テラフロップスの演算性能と1.2テラバイト/秒のメモリ帯域を実現するという。
これにより、多数のプロセッサが必要と言われるスカラ型並列コンピュータと比較して、少ないプロセッサ数でも、複雑な科学技術計算において高い性能が得られ、並列プログラミングの負担も軽減されることになる。
2.オープン環境との融合でより使いやすく。利用範囲拡大へ
x86ホストサーバ(OS:Linux)とカード化されたVEが連動して動作する新しいアーキテクチャを採用し、スカラー(x86)向けアプリケーションはホストサーバ側で稼動させ、ベクトル性能が高いアプリケーションはVEで稼動させるなど、より多くのアプリケーションが利用可能なハイブリッド環境を提供する。
VEの性能を引き出すためのソフトウェア環境としては、従来のSXシリーズ同様にNEC独自のベクトルコンパイラ、分散並列化ソフト「NEC MPI(エムピーアイ)」、分散・並列ファイルシステム「NEC Scalable Technology FileSystem:ScaTeFS」(スケートエフエス)」、ジョブスケジューラ「NEC Network Queuing System V:NQSV(エヌキューエスブイ)」などのソフトウェアを提供し、高度なアプリケーション開発と安定したシステム運用を支援する。
3.タワー型から大規模システムまで柔軟なシステム構築が可能に
VEをカード化したことにより、エッジ用(VE数:1)、オンサイト用(VE数:2、4、8)、データセンター用(VE数:64)まで、幅広い筐体サイズへの対応が可能となり、計算能力ニーズに応じた選択を可能とした。
これにより、従来の大規模データ解析を行っているユーザに加え、AIやビッグデータ解析を行う企業や研究所の研究者・開発担当者なども、高性能ベクトルマシンを利用することができるという。
なお、1ラックあたりでは最大156テラフロップスのラック演算性能、および76.8テラバイト/秒のメモリ帯域を実現しています。ラックの接続数には制限がなく、お客様の利用環境に合わせた大規模なシステムを構築することが可能だ。
【関連リンク】
・日本電気(NEC)
・「SX-Aurora TSUBASA(エスエックス・オーロラ・ツバサ)」の主な仕様
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。