損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下、損保ジャパン日本興亜)は、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)のシステム構築による、音声認識AIを活用した「アドバイザー自動知識支援システム」を、既に導入済みの一部コールセンターに加え、2018年3月から全国のコールセンターに本格導入すると発表した。
また両社は、NTTグループのAI技術「corevo(コレボ)」を活用し、将来の音声自動通話対応を見据えた共同実験を開始する。
1.導入範囲の拡大
損保ジャパン日本興亜は、2016年2月1日から、自動車保険・火災保険・傷害保険などの一部のコールセンターにおいて「アドバイザー自動知識支援システム」(システム構築: NTT Com)を導入している。
このシステムは、顧客とコールセンターのアドバイザーとの通話内容をAIによる音声認識技術(音声マイニングシステム「ForeSight Voice Mining」)でテキスト化し、そのテキストデータに基づいて、アドバイザーが使用するパソコン上にリアルタイムで最適な回答候補を表示するものだ。
「アドバイザー自動知識支援システム」の導入後、AIの学習を深めた結果、音声認識精度が当初の80%台から95%に近づき、認識した質問に対する回答候補の表示精度も80%を超える成果が得られたという。
この状況をふまえ、両社は3月から「アドバイザー自動知識支援システム」を全国のコールセンターに本格導入するとした。
2.共同実験の概要
損保ジャパン日本興亜とNTT Comは、コールセンターのさらなる機能強化を図るため、NTTグループのAI技術「corevo」を活用して以下の共同実験を行う。
(1) 顧客の用件の自動抽出
現在のシステムでは、複数の発言のうちどの発言に関連したQ&Aを表示するか、アドバイザーが自分で選択する必要がある。同実験では、アドバイザーが選択しなくとも、会話の中でどの発言が重要なポイント(顧客の用件)であるかをAIが自動で把握し、その用件に関わる回答候補をアドバイザーに表示する。
同実験では、回答の正確さや迅速さの向上効果を検証する。また、重要なポイントが自動表示されることにより応対履歴の入力作業が効率化されるため、その効果についても検証する。
(2) 知識の自動獲得と文章の自動作成
一般に、コールセンター業務を支援するAIは、事前に用意されたQ&A形式のデータベースから適切な回答を探し出す。このため、Q&Aがカバーしきれていない質問への対応は困難だ。
同実験は、文書の構造(表も含む)をAIが自動的に認識する技術を用い、パンフレットや「ご契約のしおり」などの既存文書をAIが“読む”ことで、そこに書かれている内容を新たな知識として獲得し、回答文を自動作成するという革新的なものだ。
これにより、Q&Aに無い質問に対応することも可能になるという。また、人間がQ&Aを作成する際の業務負荷軽減も見込まれることから、その効果を検証する。
3.今後の方向性
両社は、「アドバイザー自動知識支援システム」の利用によるAIの学習および共同実験を通じて、電話をした顧客に対してAIが音声で回答する「AIによる自動通話対応=バーチャルアドバイザー」の実現を目指す。
超高齢社会の到来による労働人口の減少により、コールセンターの人材確保が難しい環境になることが予測されますが、バーチャルアドバイザーの実現により、簡単な問い合せについてはアドバイザーが対応することなくAIによる正確かつ迅速な回答が可能となる。
一方で、アドバイザーが回答することが好ましい問い合せについては、AIではなくアドバイザーが回答する「ヒト」と「機械」が融合したコールセンターを目指していくという。
【関連リンク】
・損保ジャパン日本興亜(Sompo Japan Nipponkoa)
・NTTコミュニケーションズ(NTT Communications)
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