NEC、ウェアラブルで従業員の長期ストレスを早期発見する技術を開発

NECは、ウェアラブルセンサを用いて取得した生体情報(※1)から、従業員の長期ストレス(※2)を段階別に高精度に推定する技術を開発した。これにより、高いストレスリスクの早期発見を可能にするという。

これまで、長期ストレスを把握する方法として最も一般的なアンケート(※3)は、数か月ごとの定期的な状態把握には有用だが、回答者に負担がかかるなど、頻繁な実施は困難だった。

また、ウェアラブルセンサから取得する生体情報を用いて、高ストレス者と低ストレス者を二段階で分別する技術では、高ストレスの兆候を検知することはできなかった。

同技術は、心理学の知見(※4)から新たに見出した生体情報の特徴を用いて、段階別に長期ストレスの推定が可能。これにより、高ストレスの兆候を含めて把握することで、「高ストレスになることを未然に防ぐ」ことを実現するという。

同技術は、例えば、従業員本人による日常的なストレス管理や高い負荷が予測される組織へのストレス軽減施策などに期待される。

背景

従業員の心身の健康を維持、向上させることで企業の生産性を高めることは、企業経営の上で大きなテーマとなっている。

労働安全衛生法の改正により、ストレスチェックの実施が義務化されているほか、最近では、経営課題の1つである「働き方改革」の一環として、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業も増加している。

従業員が抱える心身の不調の主要因の一つとして、長期的なストレスの蓄積が挙げられる。組織や従業員の健康管理上、長期ストレスの程度を雇用者や従業員本人が常日頃から把握し、対処していくことは重要だが、客観的に捉えることは容易ではない。

従来から最も一般的な手法であるアンケートは、長期ストレスの程度を細かく導き出すことができる反面、回答者に負担がかかるなど、頻繁には実施できないことから、ストレスが高くなった人の発見が遅れるという課題がある。

近年開発されたリストバンド型ウェアラブルセンサによるアプローチでは、取得した生体情報を用いて、ストレスが高い人と低い人の2段階に分別する技術は開発されているものの、ストレスが増加している過程など、細かなストレス状態の推定は困難だった。そのため、高ストレスになる兆候を検知することはできていなかったという。

今回、NECは複雑な関連性を持つ生体情報から、機械学習により、長期ストレスに関するストレス値の細かい差異を表現できる適切な”生体情報特徴量”の抽出手法を開発。同手法により、長期ストレスを常時推定・把握できるため、高ストレス状態になることを未然に防ぐことが可能になると期待される。

新技術の特長

リストバンド型ウェアラブルセンサで取得した生体情報から、長期ストレスを精度よく推定するために、今回「一時的に大きなストレスを受けると、その後些細なこともストレスと感じてしまう」という心理学の知見を導入し、これを反映できるような長期ストレスの微細な差異を表す”生体情報特徴量”を考案した。

具体的には、長期ストレスの推定に用いる特徴量を生体情報から抽出する際、心理学の知見を用いて、1ヶ月単位の長期間にわたり生体情報の特徴に変化がない場合と、その期間中に大きなストレスを感じて変化がある場合を区別する。

最近開発されたリストバンド型ウェアラブルセンサを用いる手法によって測定された生体情報の特徴に両者に違いがみられなくても、時間経過による変化をとらえることによって、長期ストレスの細かな差異を測定できる。その結果、高ストレスの兆候を含め高精度に把握できるようになるという。

今回、リストバンド型ウェアラブルセンサを使いて、同技術を社内で検証したところ、従来技術と比較し、より正確に長期ストレスを推定できたことが確認された。

またアンケートによるストレス値と比較したところ、平均誤差±3.3で高精度に長期ストレスを推定できることを確認。これは高低2段階しか区別できなかった従来技術に対し、同技術では高ストレスの兆候を含めて6段階まで区別できることに相当する。

NEC、ウェアラブルで従業員の長期ストレスを早期発見する技術を開発

(※1) 生体情報:加速度、皮膚温度、皮膚電気活動

(※2) 長期ストレス:
長期的なストレス刺激(継続的な仕事量・質の過多、険悪な人間関係など)。
血圧の変化、呼吸数の増加など体が変化した状態が長期間継続する。通常レベルに戻ることが困難となる。負荷がかかった状態が続くことにより、心身に不調をきたす可能性がある。
一方で、短期ストレスは、短期的なストレス刺激(例えば、プレゼンテーションの前、締め切りの前など)。血圧の変化、呼吸数の増加など体が急速に変化する。刺激後、素早く通常レベルに戻る。

(※3) アンケート:
Perceived Stress Scale(PSS)のアンケートを使用。世界で最も広く利用され、長期ストレスも反映されるなど信頼性が高いとされている。直近1ヶ月間の心理状態を回答し、ストレスの度合、長期ストレスかどうかを識別できる。

(※4) 心理学の知見:二次的なストレス評価。

【関連リンク】
日本電気(NEC)

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