本稿は、NVIDIAが本日発表したブログの内容です。
エリオット・フィッシュマン (Elliot Fishman) 医師がすい臓がんについて話すとき、不満があるように聞こえるのも無理はない。
フィッシュマン医師は、すい臓がん治療において世界最大級のセンターであるジョンズ・ホプキンス病院の画像診断医として、すい臓の CT スキャンを診断して病気の兆候を探るという辛い仕事をしている。その病状は、治療ができないほど進行しているのが常だ。
すい臓がんの初期段階では症状がほとんど現れないため、患者の多くは、がんが拡がって初めて、CT スキャンやその他の検査を受ける。
その頃には、生存率は低くなってしまう。診断から 5 年後には患者の 7% しか生存しておらず、がんの中でも最低の割合だ。
「私たちの目標は、すい臓がんの早期発見です。実現すれば、命を救えるでしょう」とフィッシュマン医師は言う。
フィッシュマン医師は、GPU によって加速されるディープラーニングを診断に適用することで、人間の力だけを利用する場合よりもずっと早期にすい臓がんを発見することを目指している。
同医師は、研究の最先端を行くジョンズ・ホプキンスの Felix プロジェクトを支援している。このプロジェクトは、Lustgarten Foundation がサポートする、数百万ドルをかけた取り組みであり、医師が病気を発見する能力を高めようとしている。
ディープラーニングがサイレントキラーの発見を支援
すい臓は、胃の下にある長さ 15 cm ほどの臓器であり、私たちが食べたものを体の細胞の栄養に変換するうえで重要な役割を果たしている。
腹部の奥に位置しているため、定期検診で医師が触診するのが難しく、CT スキャンなど、画像検査を使用した腫瘍の発見も困難だ。
フィッシュマン氏のように、1 年に数千もの症例を診断する放射線科医がいる一方、がんを見分ける経験、特に、病気の初期段階で病巣 (内臓や組織の異常) が非常に小さい場合の経験が浅い医師もいる。
「人々がスキャン検査を受けていても診断ができないなら、何か別の方法はないでしょうか。」と、フィッシュマン医師は先日サンノゼで開催された GPU テクノロジ カンファレンスの講演でこう問いかけた。
「私たちは、ディープラーニングがすい臓に役立つと確信しています。」
ジョンズ・ホプキンス病院は、ディープラーニング ソリューションの開発に最適だ。CT スキャン画像の病気を発見するようコンピューターに教えるのに必要なすい臓がんのデータを、大量に保有しているからだ。
また、病院の研究者は、ディープラーニング研究に重要なツールである NVIDIA の DGX-1 AI スーパーコンピューターも利用できる。
より正確にすい臓がんを発見
コンピューター サイエンティスト、がん専門医、病理医およびその他の医師から成るチームと連携し、フィッシュマン医師は、ディープラーニングのアルゴリズムをトレーニングして、すい臓や周囲の臓器の組織に起こる表面の微細な変化を見分ける支援をしている。このような変化は、がんの最初の兆候であることが多々ある。
このチームは、約 2,000 例の CT スキャン画像に関するアルゴリズムをトレーニングした。
画像のうち 800 例は、すい臓がんの確定診断を受けた患者のものだ。
作業は簡単ではなかった。ジョンズ・ホプキンスには十分なデータがあるが、画像をラベル付けして、すい臓の状態を判断するのに重要となるキー特性を示す必要がある。症例 1 つにつき 4 時間では、膨大な作業だ。
プロジェクトの初年度にチームは、すい臓と周囲の臓器を認識するようアルゴリズムをトレーニングし、70% の精度に達した。今年のテストでは、このディープラーニング モデルは 10 回のうち約 9 回、正確にすい臓がんを発見した。
より早期の診断が可能に
チームは現在、がんが見逃された例を調査し、アルゴリズムの改善を進めている。また、腫瘍細胞の識別から一歩進んで、生存率や患者に手術ができるかどうかの予測にも取り組んでいる。
答えを見い出すのは、喫緊の課題だ。すい臓がんが希少であるとはいえ、上昇傾向にあるからだ。
すい臓がんは、少し前は米国のがんによる死因の第 4 位だった。現在は第 3 位。また、この病気の主要な治療は手術だが、初診の時点で手術に適した患者は 5 人に 1 人だ。
フィッシュマン医師にとって、ディープラーニングの発見手法は、早期診断を意味する。彼は、自分が診断する症例のうち 3 件に 1 件は、4 カ月から 12 カ月早く発見できたと見ている。
フィッシュマン医師は言う。「私たちは、コンピューターをトレーニングして、世界で最も優れた放射線科医にしたいと考えています。きっと現状を変えられると期待しています。」
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・エヌビディア(NVIDIA)
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