マイクロソフト、アジアにおいてAIが大きな成果を挙げている5つの分野を公表

マイクロソフトは、6月29日、アジア各地域において、AIがアクセシビリティ、農業、気候変動、教育、ヘルスケアの5分野ですでに大きな成果を挙げていると公表した。以下、マイクロソフトが発表した、Microsoft Asia プレジデントのラルフ ハウプター(Ralph Haupter)氏による投稿記事を掲載する。

アジアの各地域において、ビジネスリーダー、政策決定者、学識者や業界専門家の間で活発に議論される話題として、人工知能 (AI) が社会にもたらす潜在的影響がある。

一部の方が AI の将来について注意を喚起していることは理解できる。多くの人々が失業し、AI へのアクセスが不公平になり、AI に求められるデータ量が拡大し続ける中でプライバシーや市民の自由が損なわれるというディストピア的な暗い未来像を描く人もいる。

AI が新たな社会的課題をもたらすことは否定できない。このような課題には十分な注意を払って対応していくことが必要だ。とりわけ、企業が顧客や利害関係者において AI への信頼を構築していくことが重要だ。

しかし、このような懸念材料によって、AI が社会にもたらす多大な貢献を見失うことがあってはいけない。

ここで、アジア地域で AI が既に大きな成果を挙げている5つの主要分野を紹介する。

1. アクセシビリティ

現在、アジア太平洋地域には、6億9,000万人の障碍を持つ人々がいる。AI は視覚、聴覚、認知、運動の障碍を持つ人々を支援し、日々の作業を独立して行い、より生産的で充実した生活を送り、社会により深く参画できるようにしてくれる。

一例として、AI を活用して顔、感情、手書き文字など、多様な視覚情報を識別してくれる無料アプリ Seeing AI がある。これらの情報は、視覚障碍を持つ人々のために音声情報に変換される。

これにより、世界に2億8,500万人いるロービジョン者の日々の生活を容易にし、視覚的世界へのアクセシビリティを高めてくれる。

2. 農業

今日、アジアの人口は世界人口のおよそ60パーセントに相当する45億人を超え、世界で最も人口の多い地域となっている。この数値はさらに増加し、2030 年までには50億人以上になると予測されている。

アジア地域の食糧供給は既に課題を抱えているが、農家が AI やアナリティクスを活用して収穫高を大幅に向上する新たな方法を発見できなければ、さらに問題は悪化する。

マイクロソフトはインドで非営利団体International Crop Research Institute for the Semi-Arid Tropics (ICRISAT) と協業し、天候や土壌などの指標に基づいて作物の植え付けに最適な日を農家に助言する AI Sowing App を開発した。

このソリューションは、AIを活用して過去30年間の気象データを分析し、リアルタイムのデータと天候予測モデルを使用して雨量と土壌水分を計算することで、最適な播種期を予測する。

このプログラムは、農地にセンサーを設置するなどの農家による投資を必要としないため、新興国での利用に特に適している。

3. 気候変動

21世紀最大の課題のひとつとして、気候変動とそれがもたらす人類の健康、インフラ、自然システムへの影響がある。気候変動の主要な原因は炭素の排出だ。

マイクロソフトでは、持続可能な事業運営を行い、ビジネスによる環境への影響を削減するという責任を重要視している。この責任を達成するためのひとつの方法として、マイクロソフトは AI の支援によりデータセンターの運用とインフラの管理を行っている。

その結果として、データセンターの計算と冷却に必要とされる電力が減少する。実際、従来型のエンタープライズデータセンターと比較して、マイクロソフトのクラウドサービスはエネルギー効率が93パーセント高く、炭素効率性が最大98パーセント優れている。

また、AI テクノロジの活用により、データセンターだけではなく建物全体におけるエネルギーの効率性の向上が可能だ。シンガポールでは、国家の電力のおよそ3分の1が建物で使用されている。

国家の産業基盤開発を担う政府機関 JTC は、建物の監視、分析、最適化の運用を Microsoft Cloud に集約することで、この膨大な電力消費に積極的に対応している。

センサーデータと AI による分析を活用し、JTC は、故障が起こる前に予測モデルによって問題を識別し、修正できるようになった。これにより、エネルギーコストが15パーセント削減された。

4. 教育

教育はより良い未来を造るために不可欠な要素であり、マイクロソフトは学生にとっての教育体験を強化し、成績を向上するために AI を活用している。

南インドのアーンドラ・プラデーシュ州において、マイクロソフトは政府と協力し、学校からドロップアウトする可能性が高い学生を予測する新しいアプリを開発した。

このソリューションは機械学習、AI 機能、クラウドを活用し、入学時の情報、成績、性別、社会経済的特性、学校のインフラ、教師のスキルなどの複雑なデータを分析してパターンを探し出す。

これにより、行政と学校の担当者はリスクが高い学生を早期に特定し、ドロップアウトを防ぐためのプログラムやカウンセリングを提供できるようになる。既に、このアプリはアーンドラ・プラデーシュ州の1万校以上の学校で使用されており、2017年時点で500万人以上の学生が対象になっている。

5. ヘルスケア

最後に述べたい点として、AI テクノロジは今日の最も重大な疾病の克服において医療機関を支援すると共に、アジアの増加を続ける人々の生活の質を向上してくれる。

マイクロソフトはインドにおいて、国内最大の医療組織のひとつである Apollo Hospitals と協力し、世界の人々の死因のおよそ3分の1を占める心臓病の克服を目指して AI にフォーカスしたネットワークを開発した。

インドに絞っても年間およそ 300 万件の心臓発作が発生しており、3,000 万人のインド人が心臓病を患っていると推定されている。

このパートナーシップは、マイクロソフトの AI 専門知識と Apollo Hospitals の心臓病における経験と知識を組み合わせることで、新たな機械学習モデルを開発し、患者の心臓病リスクを予測し、医師の治療計画を支援することを目標にしている。

これらは、AI が開発の初期段階にある一方で、既に私たちの生活に驚くべき恩恵をもたらしてくれている事例の一部でしかない。AI の可能性は拡大過程にあり、これからも様々なすばらしい事例が出てくることを確信している。

結局のところ、AI は人間の創造性を強化してくれるだけではなく、私たちを人間らしくしてくれる要素、すなわち、思いやり、好奇心、そしてより良い未来を造りたいという熱意といった要素も強化してくれるのだ。

【関連リンク】
マイクロソフト(Microsoft)

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