芝浦工業大、確率共鳴を利用した遠距離物体認識技術を開発

芝浦工業大学の伊東敏夫教授(システム理工学部機械制御システム学科)は、確率共鳴という現象を用い、より遠距離、広範囲にある物体を認識する技術を開発したと発表した。

現在、自動車の自動運転技術における物体認識技術が進んでおり、歩行者などを認識するため、主に用いられるレーザーレーダー(LiDAR:light detection and ranging)が用いられている。

しかし、現状では遠距離にある物に対する認識精度は低いという課題がある。これに、ノイズを印加し遠距離での認識精度を向上させる確率共鳴という現象を利用することで、物体を識別できる距離を延ばすことが可能。

これは、ザリガニが外敵や水流の動きを感知する際に用いられる現象だという。

自動運転技術を発展させるにあたり、自己位置推定(次の交差点までの距離を正確に計算、自車がどの位置にいるのか把握)、外界認識(センサ類を複合的に活用し周りの環境を認識)、行動計画(自車の位置と向き速度などその他の要素を総合的に判断)、車両制御(ステアリングやブレーキの操作)などが大きな要素となっている。

なかでも自動運転では外界認識が特に重要であり、周辺物体を認識することにより、安全な走行が可能となる。しかし、現在の自動運転技術で主に用いられているLiDARを使用した手法では、遠距離であるほど計測した点の分布率が低くなりクラスタリングが作成できなかった。

芝浦工業大、確率共鳴を利用した遠距離物体認識技術を開発

そこで伊東教授はこの課題に対し、信号にノイズを加えることで、ある確率の下で信号が強まり、検知能力が向上する現象である確率共鳴を用いることで、最適なノイズを発生させることにより物体を識別できる距離を延ばす技術を開発。

これにより、LiDARの遠距離認識性能の改良や遠距離での反射点群密度の向上が可能となり、計測地点から20メートル以上80メートル以内の歩行者、二輪車、車両に対して実験を行い、認識性能の改善がみられたという。

この技術は、自動車だけでなく、自動運転ドローンや自律移動ロボットの外界センサへの使用も期待される。確率共鳴の応用に着目すると、LiDAR以外の画像処理やレーダーへの応用展開することも可能だという。

同技術の実用化の一歩として、シニアカーに装置を後付けして自律移動モビリティを開発し、複数の研究室との共同プロジェクトとして2020年の完成を目標に研究を進めている。

※特願2018039126「物体認識装置および物体認識方法」、出願人:学校法人 芝浦工業大学

【関連リンク】
芝浦工業大学 伊東敏夫教授

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