どうなる?日本の電子決済
とても便利なQR決済だが、日本人が深センに行ったときは使えない。
理由は簡単で、中国国民ではないからだ。そもそも、中国国民であることを前提にしていて、中国の銀行システムとも連携しているため、方式としてはいわゆる「デビット方式」となる。
決済したとき、口座にお金がなければ決済もできないという極めてシンプルなこの仕組みは、後払いとなるクレジットカードでは与信判断が難しい貧困層にも利用が広がった。
その一方で、店舗での決済にかかる手数料率は、「国際クレジットカード > 国内クレジットカード > WeChat pay」という状況なので、多くのヒトがWeChat Payを使うと当然、それしか使えないお店というのが登場するのだ。
この理屈でいくと、ローカルな店舗であるほど我々外国人はクレジットカードで決済することができなくなるのだが、その通りだ。しかも、この方式であれば偽札の被害も考えなくてよいし、店舗に現金を置く必要もないので、店舗運営者からするとバラ色の仕組みなのだ。
よく、「現金で決済しているのが外国人くらいだ」といった記事を見かけるが、それが当たり前なのもよくわかるだろう。
別に、現金がダメで、電子決済が便利だから利用者視点で広がったというのは片方の見方であって、いろんな背景から店舗側も電子決済が良かった。ということが良くわかる。
つまり、きちんとしたマネージャや、店主がいないお店では、「WeChat payのみの決済」となる理屈もよくわかるだろう。
翻って、日本の電子決済事情を考えてみる。
すでに、SUICAなどのようなICカード方式がそれなりに広がっているが、決済手数料率は決して低くない。
この状態で、利用者の利便性だけを問うても、店舗側がやりたくはならない。しかも、このICカード方式は、QRコード方式より圧倒的に利便性は高いが、WeChat PayのCRM連携を見ていると、必ずしも決済だけが便利であればよいということにはならない。
一方で利用者側は、現在可処分所得がある世代に関しては、いきなりデビットカード方式は厳しいといえる。それができるなら、すでにデビットカードが普及しているはずだからだ。
現状では、クレジットカードを使ったプリペイド(チャージ)方式をとりつつ、自動チャージの方式で電子決済のサービスを組み立てるのがよさそうだ。
しかし、子供など、そもそもクレジットカードを持てないヒトについては、やはりデビットカード方式が必要になるのかもしれない。
つまり、電子決済の普及のカギとなるのは、
- 手数料率がとても低い決済サービスの登場(QRかICかという議論ではない)
- 店舗にとって使いたくなるCRM機能を簡単に入れられるサービスの登場(QRにすることでサービス連携がしやすい)
- クレジットカードを前提としたプリペイド(チャージ)方式での運用
- デビットカード方式での運用
ということだといえるのだ。
現在LINEがこのポジションとしては最も近いところにいる状態だといえる。日本でも、お財布を持たない時代がすぐそこに来ているのかもしれない。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。