産業用IoTのグローバル最新動向

産業向けIoTの利用が進んでいることは既知の事実だ。

産業の部分的な利用だけでなく、ある産業全体のプラットフォームともなり得るような大規模なものも登場しつつある。

さらに、プラットフォーマー間の大型提携や買収も進み、荒削りなソリューションから脱却し、より細かな利用者のニーズに応える動きもでてきている。

今回のトレンドレポートでは、そんな産業向けIoTの動きを調査した。

ロンドン・ガトウィック空港のIoT化

Hewlett Packard Enterprise (HPE) は、ロンドン・ガトウィック空港でのITシステムで、18か月間と1500万ドルかかったプロジェクトを完成した。同プロジェクトでは、IoTネットワーク導入をはじめ、高速WiFiネットワークの構築や、乗客流の分析、機械学習、顔認識や新CCTV・IPTVなどセキュリティに関するサービスが取り入れている。

また、このプロジェクトは、空港が通常運用している中実施された。

新しいメッシュネットワークの導入によって、従来のネットワークの10倍のデータリンクを提供しているという。WiFiの高速ダウンロードスピードのおかげでスマートフォン位置のヒートマップを使い、乗客流量の管理が可能になっている。

セキュリティサービスはCCTV・IPTVシステムを実用しており、搭乗ゲートのスタッフは機械学習や顔認識技術を利用することができる。

他にゴミ箱、チェックインデスクやテーブルの空などを管理するセンサも設置された。

ロックウェルの工場自動化・分析技術とPTCIoT/AR技術の統合

アメリカのRockwell Automation社はPTC社に10億ドル投資を予定している。2社はRockwell Automationの工場自動化・分析技術とPTC社のIoT・AR技術の統合に取り組んでいるというのだ。

具体的に、PTCのThingWorx IoT、Kepware 産業用通信プラットホームやVuforia ARプラットホームをRockwell AutomationのFactoryTalk MES、FactoryTalk Analyticsや Industrial Automation プラットホームを一つのスマートファクトリーパッケージとして統合することを図っている。

シーメンスのMindSphere、アリババのクラウドサービス上で提供開始

中国での産業用IoTインフラの改造を目指し、アリババ社のクラウドコンピューティング部署はシーメンズ社との覚書を締結した。
2019年から、シーメンズのオープンIoTシステムMindSphereはアリババのクラウドサービス上で中国で提供開始される。

MindSphereは機械、工場、製品やシステム向けの通信技術、先端分析やデジタルツインソリューションを提供している。

グーグルグラスの製造業向けアプリケーション

イスラエルのPlataine社はグーグルグラス用の製造業分野に特化した新しいアプリケーションを開発した。

同アプリケーションはグーグルのクラウドAIサービスを使い、自然言語を理解し、音声で返信するため、製造現場で便利で使いやすいツールだ。

GE社、ボーイング社やエアバス社などの顧客のため、Plataine はアプリに画像認識機能の追加に取り組んでいる。

石油・ガス業界におけるIoT

石油・ガス業界は産業用IoT発展の原動力になるかもしれない。

これらの業界の施設は、膨大なデータを日々生成しているが、現在このようなデータの一部しか使われていないという。

シェルはLNG運搬船を始めとして、掘削設備までの約700万ものデータを管理し、デジタル技術や予知保全を使い、生産性向上、より高い安全性レベルやコスト削減を達成している。

また、アメリカのガス処理最大企業の一つであるDCP Midstream社は経済リスクを考慮した上、400台以上のブースターステーションの中、130台のステーションに、IoTセンサーを設置した。

この仕組みは、DCP Midstreamのデジタル変革イニシアティブの一つのステップであるが、同社はすでにIoT適用の重要性を実感できたとしている。

IoT技術を導入した一年目に200万―250万ドルほどコスト削減ができたのだという。

ArmのTreasure Data買収

アーム社はエンタープライズデータ管理会社Treasure Dataを買収し、IoTエコシステムを拡大している。

6月に買収されたStream Technologies社の通信管理技術、Treasure Dataの技術やArm Mbedクラウドをアーム社のハードウェアと統合し、 Arm Pelion IoT プラットホームとして提供を始める。

Arm Pelion IoT プラットホームではIoTアーキテクチャーに優れた柔軟性を目指し、オンプレミスやクラウド環境、パブリッククラウドあるいはプライベートクラウドで利用可能であり、様々な規模に調整可能なシステムであるという。

同プラットホームのエコシステムは140パートナーを含み、デバイス管理やデータ管理できる。

シーメンスのアプリケーション開発プラットフォーム企業買収

シーメンズ社は独自プラットホームMindsphereのユーザーを増やすためローコード(low code)アプリケーション開発プラットホームMendixを買収した。

ローコード・アプリケーション開発プラットホームはビジュアル開発ツールを使い、手作業のコーディングを最小限にし、直感的にアプリケーションを作成可能にするため、IT専門家に頼らなくてもスピーディーにアプリケーションを作成できるという。

今後、Mendixの技術はシーメンズのデジタル・ファクトリー部門に統合される予定だという。同部門はスマートファクトリー技術を製造業にセールスする部門であり、同社の最も成長が速い部門の一つだ。

Mendixによるアプリケーション開発を加速させることはMindSphere の導入も促進させるとシーメンズ社の幹部は期待している。

指紋認証を活用したセキュリティ

様々な企業がインフラストラクチャーをネットワーク化する中、サイバー攻撃の可能性が高まっている。

そこで、IoTを採用している企業のサイバーセキュリティ問題に対して、多くのスタートアップが取り組んでいる。

アメリカのXage社はブロックチェーンと独自「フィンガープリンティング」(指紋押捺)のコンセプトを紹介している。

各フィンガープリントに各機械やコントローラーに関するできるだけ多くの情報を保存し、ネットワークに繋がっているすべてのデバイスの構成データを保存している。

ハードウェア種類や各機械にインストールされたソフトウェア、CPUのID、ストレージのIDなどが構成データとして保存されているのだ。

コントローラーにマルウェアが投入された場合、フィンガープリントを特定するメカニズムはその変更を検知し、コントローラーをシャットダウンする。技術スタッフは変更の正当性を確認し、コントローラーを再起動する。

また、フィンガープリントデータをセキュアに保存できるためブロックチェーン技術が採用された。ブロックチェーンは識別方法を提供し、不正フィンガープリントの投入を防ぐ。また分散型保存のおかげで、一件のハッキングですべてのコントローラーへのアクセス入手が不可能になっている。

また、同社は全システムのデジタルツインをクラウド上で保存しており、ソフトウェアを更新する場合、Xage社は新しいフィンガープリントをあらかじめに計算し、コントローラーをアップデートする時に公認アップデートかどうかクラウドツイント比較し確認できるという仕組みだ。

Ansysのデジタルツインソリューション

エンジニアリングシミュレーションソフトウェアを開発しているアメリカのAnsys社は最新シミュレーションプラットホームのリリースを発表し、各社がデジタルツインを作成できるようにTwin Builder機能を追加した。

Twin Builderソリューションは物理的な機械や措置のデジタルツインの作成、認証や実装を楽にする。同ソリューションは様々なIoTプラットホームに統合可能であり、ランタイム実装機能が付いているため資産一つ一つの継続的な管理を可能にする。

デジタルツインソリューションを使って、設備の検査やトラブルシューティング、最適なメンテナンスプログラムを決定し、各資産のパフォーマンスを最適化し、集めた洞察を次世代商品の開発に適用できるのだ。

Ansys社によると、このソリューションのおかげでメンテナンスコストを1-2割ほど削減できるという。

産業用IoTに求められるUI

産業IoTによって収集可能なデータ量が増える他、データ活用を促し、データを利用するユーザーも増えるため、活用を考えるとアプリケーションのUIも大事になってくる。

データにアクセスする従業員は異なるデータやそのレイアウトを求めているため、IoT分野用のUIの柔軟性は必須となる。

例えば、製造上の問題を解決する工場マネージャーは、即時対応を求めているため、長期戦略を立てえるアナリストと求めるデータが異なる。

その結果、ユーザーが自ら調整できる、使いやすいコンテクスト付きデータをモバイル端末に提供することも必要となる。

また、データの正しい活用には、なくてはならない分析をエッジもしくはクラウドで実施するオプションから選択できる必要がある。

コストや効率性の考慮上で、エッジあるいはクラウド分析を選択し、スタッフ作業あるいは機械学習アルゴリズムによって処理されたデータをシステムにフィードバックし、運用に活用するのだ。

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