ロボットの導入もデジタルツインで
次に、株式会社オフィス エフエイ・コム 代表取締役社長の飯野英城氏が登壇。同社は自動化・ロボット設備や製造管理ソフトを提供するエンジニア集団(本社:栃木県小山市、従業員:170名)で、2,000工場以上の導入実績がある。
講演の主なテーマは、ロボット設備の導入におけるデジタルツインの活用だ。従来だと、顧客とベンダー間で何度も設計の打ち合わせを行い、工場に設置後も不具合なく稼働するかどうかをテストする必要がある。
しかしデジタルツインを使えば、設計の段階からデジタル空間でロボットを動かすことができるため、そうしたプロセスを短縮できる。飯野氏によると、同社のソリューションを活用することで納期を3か月短縮できるという。
実際には、企業が自社工場に新しいロボットを導入する場合、次のプロセスを辿ることになる。
「要望まとめ・構想設計」→「仕様定義」→「基本設計」→「詳細設計」→「製造・出荷前テスト」→「現地調整・総合テスト」→「引越し・ユーザーテスト」→「本稼働・運用」
飯野氏は、この各プロセスにてデジタルツインを活用することで作業がどれほど効率化されるかを、一つ一つ説明した。
「顧客からは(実機の動作確認の)エビデンスが欲しいとよく言われる。しかし、デジタルマニュファクチャリングではエビデンスは”目の前”にある。デジタルの中でものづくりができてしまうのだ」(飯野氏)

続いて、FAプロダクツの貴田氏が登壇。「Smart Factory化が進まない理由と解決策」という題目で講演を行った。
貴田氏はスマートファクトリー化の現状について、「残念ながら進捗は悪い(国内全体で)。さまざまな取り組みが進められていると聞くが、実際には大手の自動車メーカーの事例が多い。最も大きな課題は労働力不足だ。多くの企業が、受注があっても対応できない状況にある」と述べた。
また、IoT化が進まない理由について、「省人化に対して、IoT化は効果の金額換算ができず、投資回収の計算が難しいこと」や「ITの知見がある企業が少ないこと」などをあげた。
そのような状況を脱却するには、「スモールスタート」(リスクなくスタートし、大きく育てられること)が重要となるという。そこで、貴田氏はスモールスタートに必要となる管理項目を解説するとともに、同社のパッケージシステムを紹介した。
また、FAプロダクツのパッケージを導入するアズビル金門白沢の佐藤氏が登壇し、「膜式ガスメーター」の生産工程において、1台のサーバでデータを一元管理している事例を紹介。FAプロダクツはパッケージとサポートの提供のみで、アズビル金門白沢がすべて自社で運用を進めているという。
「これからIoT化を始める方は、費用対効果を算出するためのスターターキットを使い、スモールスタートを切ってほしい。その後の拡張については、当社は汎用品の組み合わせでソリューションを提供していきたい」(貴田氏)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。